作者と旅する異世界道中

唯織

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2 思っていた冒険と違う…

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ヤルスに半ば強引に腕を引っ張られて始まった僕の旅。
あの状況ではもはや家に戻ってもなんで帰ってきたんだと言われるだけなので僕はもう諦めがついていた。
だけど、1つだけ納得のいかないことがある…
「な~な~?ヤルス~…なんで僕達は徒歩で移動しているんだ?」
この旅は今の所徒歩のみでの移動をしているのだ。
「何だ?徒歩での旅は嫌いか?」
「いや、別に嫌いってわけじゃないんだけどさ…正直これってどこに行けばもいいか僕からしたらわかんないし、この旅も目的はわかっていても終わりがわかんないから徒歩で移動ってどうなんだろうって思って」
「ああ、そういうことか。それならば問題はない。1つづつお前の疑問に答えていってやろう」
自称神様なのでこういった上から目線の発言は黙認してやってもいいんだけど、こいつと会ってからずっと違和感しか無いのが、口調と見た目が合わなすぎることだ。
本とペンを持っているので頭は良さそうに見えるのだが、問題はそこではない。
こいつの大きさだ。
どう見ても僕の腰の辺りまでしか無いちんちくりんである。そう、ヤルスはちびっこなのだ。
年齢不詳で自称神様のこいつになんでついていってしまったのだろうかと今考えても謎でしか無い。やっぱり帰ろうかな…
「お前がその顔をしているときは大概俺に対して良くないことを思っているときの顔だ。不敬であろう」
「はいはい。自称神様はとっても偉いですもんね」
「自称ではない…もうよい。話を戻すぞ。まずは行き先については、俺は大体検討がつく。なんというか世界の歪みのようなものを感じ取ることができるからそこを目指して移動をしていくつもりだ。次にこの度の終わりであるが、世界の不具合をすべて直しきれたらということになるな」
うへぇ~そんな不毛な旅がこれから始まるの?めんどくさ…
「というか、なんだっけ世界の不具合だっけ?それが感じ取れるんだったら別に僕必要なくない?」
自分自身で作った世界なんだったら直すのも書き換えるのも1人で終わらせてしまえばいい。加えて場所まで探知ができるのであれば、その不具合を確認して書き直せばいいのではないだろうか?僕本当に必要ないだろ…
「なぜだ?」
ヤルスは僕が言った言葉が理解ができないと言いたげな表情でこちらを見てくる。
「だってさ、別に僕はただの農家の息子で、一緒に旅に出る意味がわからないのと、世界の不具合を直すんだったら別に母さんに使ったみたいに本になにか書けば直せるんじゃないのか?」
「ああ、そのそういうことか。すまんな俺の説明不足で」
なんか急に謝られたんだけど?
「そうだな…順を追って説明していこう。まず、俺自信がこうやって現界をしている時点で完全に想定外なのだよ。俺はこの世界を物語として書き記すための存在だ。だからこの世界に対しては直接的な干渉はできないはずだった・・・・・・・・・のだ」
「はずってどういうこと?」
「元々この世界に私の肉体は存在しているはずも無ければ、精神もこの世のものではない。それなのにも関わらず、俺はここに居る。そして、なぜこのようになったのかはまったくもってわからない」
なんだか話が難しい方向に進んできているのは気のせいだろうか?
「お前…わかっていないな?つまりは、俺がここに居てお前と話ができているのが異常事態なのだ。ついでに、俺の力は制限されている」
ふーんそうか…あんまり理解出来なかったけど、まあいいか。…ん?
「はぁ?さっきなんか変なことしてたじゃん?あれは違うの?」
「あれが今俺ができる唯一のことと言ってもいいだろう。あー…難しくなってしまいそうだが聞くか?」
なんだか説明を諦められた気がする…
「簡単にお願いしまーす」
「わかった。あれはこれまで無かったことをあたかもあったかのようにすることができるということだ。先程の例ならば、お前の母親は会ったことも無い俺のことを知っていただろ?あれは、お前の母親に偽りの記憶を入れたのだ」
なんだか怖いこと言ってるんですけどこの人…
「えっと、じゃあ、あれは母さんの勘違いじゃなくてそういうふうにヤルスが物語を書いたってこと?」
「そうだな。登場人物に新しい設定を加えたということになるな」
なにそれ…誰でも犯罪者にできちゃうじゃん。
「それ以外にはなにかできたりしないの?」
「何かとはなんだ?」
「だから、それで世界の不具合をすべてなくしちゃうとか!」
「それができたら最初からやっている。試してみたができなかったというのが正確だがな。それにお前の記憶は俺のことを知らないままだろ?」
確かに言われてみればそうだ。
僕がこんな疑問を持つのはヤルスのことを知らないからだともいえるだろう。
それならば、母さんと同じように僕にも追加の設定をすればいいだけなのに…
「試してみたが、それもできなかったのだ。そもそも、お前という存在もまた俺に取っては不具合の1つなのだがな」
「人のことを不具合とか言わないでもらってもいいですか?」
「いや、正真正銘不具合の一部なんだよ…あーっと読めるかどうかは知らんが、これを見てくれ」
そう言ってヤルスは手に持っていた本を開いて見せようとする。
「これって僕が見てもいいやつなの?」
「どうせお前は文字が読めないと思っているからな。見せたところで問題はないだろう」
いや…僕読めるんですけど…
「なんだ?お前文字が読めるのか?やはり不具合か…」
ヤルスは腕を組んでうーんと考え込み始める。
そんなに僕が文字を読めるのが意外だったのか?ひどい話である。
「だいたい文字なんて誰でも読めるでしょ?」
「そんなことはない。実際お前の母親は読み書きが不自由だ。というか、この世界の半数程度の人間しか文字は読めないことになっているからな」
「…はぁ?」
「識字率というのだが、この世界の識字率は半数程度に設定してあるから、2人に1人は文字が読めないのが当たり前なのだ」
僕には当たり前と思っていたことが実は違っていたことに衝撃を受ける中、ヤルスは更に僕に質問をしてくる。
「そもそも、お前はどこで文字の読み書きを習ったのだ?」
「そんなの…えっと…あれ?思い出せないや」
おかしい…文字の読み書きができるのは当たり前だと思っていたが、文字の読み書きを練習した記憶が一切ない。
「これが世界の不具合というやつだ。身を持って体感しただろ?」
僕はヤルスの言葉に少し身震いした。
僕自信のことなのに僕自信がわかっていない…そんなことがあり得るのであろうか?
「今、確認が取れたことも新たな収穫であるが…ここを見てくれ」
そう言ってヤルスは本を開いて見せてきた。
「個々の部分が破れているのはわかるか?」
指を刺された部分には紙がちぎられ残ったギザギザの部分が残っていた。
「これは?」
「おそらくお前のことが書かれていた部分だ。ここに記録が無い事象が起きているもしくはあるということが異常事態ということなのだよ。さらには、さっきの記憶が抜けている部分。これはお前の記録がここに載っていないことが原因だ。そして、お前の記憶をいじ…いや、変更することができなかった理由でもある。そして、これは…」
ヤルスがペラペラと本をめくるとところどころで先程のように紙がちぎられたようになっている部分があった。
「おそらくはこれをもとに戻すことが世界の不具合を修正することにつながると俺は考えている。そして、実際の不具合がどのように起きているのかを観察するためにもお前に協力をしてもらおうというわけだ」
あんまり良くわかん飼ったけど、とりあえず、ちぎれた本の紙を探せばいいんだね!わかった!
「まぁ、今の話だけですべてを理解するのは難しいとは思っていたから期待はしていなかったがな」
「あ、そうだ。今の話は半分くらいわかったんだけど、それがなんで1人で不具合を直せない理由になるの?」
「ああ、それはだな…俺はここに新しい設定を書き込むことはできるが、そもそも書く場所が無いものをどうやって対処すればいいと思う?俺はこんなに小さいのだぞ?」
気がついてたんだね自分が小さいってこと…
「だから、今のこの世界の不具合の一部であるお前についてきてもらっているといわけだ。何かがあったら対処をしてもらうためにな」
これは激しく面倒事を押し付けられた気がする…なんか思っていたのと違うんだけど…
「そうだ!さっきの話に戻るけど、本当にずっと歩いて旅をするつもりなの?」
「ああ、そういえばそういう話だった気もしてきたな。だが、少し待ってくれ」
さっき力を使ったからすぐには使えない的なやつかな?
「そろそろ文字数が…」
なんのこと!?
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