遊佐賀奈子と八人の鬼婦人

９話

「っっっ！！かはっ！」


その細身の体からは想像もつかない力で遊佐の首は押さえつけられてる。遊佐は首を掴んでいる腕をなんとか振り払おうと両手でラッキーの腕を掴み抵抗しようとするがビクともしない。


「あら、そこにいたのね。」


次女イェティが初めから遊佐の存在に気づいていたような言い振りをする。


「あんた、昨日も私たちを見てたでしょう？何が目的なの？」


三女ピーカが高圧的な声色で話す。


「でもお馬鹿さんだよねー。私たちが気付いてないわけないじゃない？お猿さんかなー？」


四女ピニーペリーは嘲笑う。


「うっきー！うききーー！」


八女アナスタシアは全然似てない猿の声まねをしながら楽しそうに跳ねる。


「早く話した方がいいわよ～。でないと、」


五女エリザベスは気怠げ。


「ひ、酷いことしますよ！」


六女ワイズはオロオロ。


長女リンボは無言のまま。


（最初から気づかれてた！？っ！に、逃げなきゃ！）


遊佐は腰のホルダーから拳銃を取り出して、七女ラッキーの顎下に突きつけ発砲する。ラッキーはそれを避けたが遊佐を掴んでいる腕の力が緩んだ。

遊佐はその腕を払いのけてそのまま逃げようとしたが。

突如、視界が青白く輝いたと同時にバチッ！パァン！と大きな音が響いた。


「！！！がっ！！」


その瞬間遊佐の全身にとてつもない激痛が走り遊佐はその場に倒れる。遊佐の足元の絨毯は黒く焦げている。


（な、何が起き？！）


遊佐はとんでもない苦痛と体の痙攣に意識が飛びそうになるのを堪え立ち上がろうとするが、体が自由に動かない。霞む視界の中で遊佐の目の前に誰かが立ったのが見えた。三女ピーカだ。

三女ピーカは遊佐の前髪を掴み自身の胸のあたりの高さまで引っ張り上げる。


朦朧とする意識の中で三女ピーカが

「話す気は無いのね。なら、、死になさい。」


と言ったように聞こえた。


その瞬間視界がグニャリと曲がり、真っ赤になった。遊佐の眼、口、鼻、耳の穴から血が流れ始める。想像を絶する痛みに、もはやまともな声が出せない。


弱々しく「ぁ、、ぁぁ、、」と生気ない音が漏れ、口から出る血が泡を作りコポコポ音を出すだけである。


遊佐の視界はだんだんと薄暗くなり、ついには真っ暗になった。