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第一章
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「朱里さん。淑祥さんってどこにいるんですか?」
「ああ、伊豆だよ」
「半島の方?」
「そ、下田の岩窟寺院」
「先っぽじゃないですか、すごく遠くないですか?」
「そうね、タケウマじゃ無理だね」
「え?じゃ、どうやって?」
「輸送車借りる」
「輸送車?兵員輸送車?」
「うん、客の一人が89式持っててね」
「それはすごいですね」
「アンタだって25式持ってるじゃないか」
「でも、あんなだし」
「そうだね、そのおかげで下田くんだりまで行こうって話になっちまったわけだしね」
「すみません」
「なに、その客は89式の他に10式も持っててね、アタシにゃ好きに使って良いって言ってくれるのさ」
「え?それって、もしかして男?」
「もちろん。元自衛官だったらしいけど、もう80過ぎてるから何も出来やしないよ」
「へぇ。さすがやり手ママさんだわ」
「それでも性欲はあるらしくて、いろいろ触らせてやるけど、上手く行ったためしは無いよ」
「いろいろって……」
「お、顔赤くして、ミニ子は初心だね」
「やめてくださいよ、もう」
「いずれにしても、行くなら一泊するつもりでね」
「はあ、なるほど。しかしその淑祥さんしか居ないんですか、お払いしてくれるの」
「アタシが知ってるのは彼女だけだね。インチキ霊媒師は何人か知ってるけど、インチキだからね。それじゃダメだろ?」
「そうですね。すみませんお手間とらせます」
「なに、いつも世話になってるんだ、お互い様ってこと」
「ありがとうございます」
「じゃ、車手配出来たら連絡するわ」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
小鳥遊朱里44歳。
元プロシンガーでキャバレー「灯」のオーナーにして、商店会のご意見番的な存在である。
貧民窟のような地下街で、唯一セレブとも接点がある貴重な存在であるが、水商売であるがゆえに周囲からは不当に低い評価をされている。
天涯孤独となった美奈子にとっては、母親のような存在であり、唯一の理解者と言って良いだろう。
美奈子のことをミニ子と呼ぶのは彼女だけだが、それだけ彼女を身近な存在と見ている証拠でもある。
しかし、やや大雑把な性格ゆえ、よく考えずに行動に移したり、短絡的な思考になりがちである。
今回も霊の仕業と決めつけているが、霊媒師を呼ぶ前に戦車の専門家が居るなら、まずはそちらに当たるべきと美奈子も気付いた。
今別れたばかりだが美奈子は朱里の店に電話をしてみた。
「あ、もしもし、朱里さん?田宮です」
「あぁ、ミニ子ちゃん、何?」
「先ほどは、わざわざどうも」
「うん、それで?」
「さっき話に出てた元自衛官の方、80歳の」
「ああそっか!そっちに先に話聞きたいよね」
「そうですね、その方が話が早そうな」
「確かに」
「10式と25式はほとんど同じだと思うので、動かし方知ってると思うんですよ」
「そうなんだけどね~。う~ん、どうしようかな」
「何か、問題でも?」
「えーと、西さんって言うんだけど、ちょうどアンタみたいなのがタイプなのよ。っていうかドストライク?」
「は?」
「紹介してあげても良いんだけど、ややこしいことになりそうなんでねぇ」
「はあ、手込めにされると?」
「まあ、それはそれで良いことなのかもしれないけど、一応奥さん居るしね」
「もしかして、お店に行ってることは内緒とか?」
「まあ、気付いてるとは思うけど、本人は内緒にしてるつもり」
「なるほど~」
「そうだ、あんたウチでバイトしなよ。お店の子であればそうひどいことにはならないと思うわ」
「え?でも……」
「大丈夫、変な客は滅多に来ないから」
「う~ん」
「アタシが責任持つから、大丈夫だって。ちゃんとバイト代も出すから」
「そうですか?」
「そうそう。それで、それとなくこんな戦車があって困ってるんですって話すれば、相談に乗ってくれるでしょ」
「はあ、分かりました」
「西さんは、明日来るから。明日の5時にはお店に来てね」
「はい、よろしくお願いします」
「うん、待ってるからね~。ちゃんとお風呂入ってね~」
「じゃぁ、明日」
「は~い。よろしく~」
あっさりと口車に乗せられてしまったことを悔やみながらも、美奈子は一つの突破口が開いた気がした。
とにかく一刻も早く、この不気味な状況を何とかしたかったのだ。
それが老人でも尼僧でもどちらでも良いが、確実なのは実際に使っていた人間に聞くのが最善であるということだ。
神頼みはその後で良かろう。
「ああ、伊豆だよ」
「半島の方?」
「そ、下田の岩窟寺院」
「先っぽじゃないですか、すごく遠くないですか?」
「そうね、タケウマじゃ無理だね」
「え?じゃ、どうやって?」
「輸送車借りる」
「輸送車?兵員輸送車?」
「うん、客の一人が89式持っててね」
「それはすごいですね」
「アンタだって25式持ってるじゃないか」
「でも、あんなだし」
「そうだね、そのおかげで下田くんだりまで行こうって話になっちまったわけだしね」
「すみません」
「なに、その客は89式の他に10式も持っててね、アタシにゃ好きに使って良いって言ってくれるのさ」
「え?それって、もしかして男?」
「もちろん。元自衛官だったらしいけど、もう80過ぎてるから何も出来やしないよ」
「へぇ。さすがやり手ママさんだわ」
「それでも性欲はあるらしくて、いろいろ触らせてやるけど、上手く行ったためしは無いよ」
「いろいろって……」
「お、顔赤くして、ミニ子は初心だね」
「やめてくださいよ、もう」
「いずれにしても、行くなら一泊するつもりでね」
「はあ、なるほど。しかしその淑祥さんしか居ないんですか、お払いしてくれるの」
「アタシが知ってるのは彼女だけだね。インチキ霊媒師は何人か知ってるけど、インチキだからね。それじゃダメだろ?」
「そうですね。すみませんお手間とらせます」
「なに、いつも世話になってるんだ、お互い様ってこと」
「ありがとうございます」
「じゃ、車手配出来たら連絡するわ」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
小鳥遊朱里44歳。
元プロシンガーでキャバレー「灯」のオーナーにして、商店会のご意見番的な存在である。
貧民窟のような地下街で、唯一セレブとも接点がある貴重な存在であるが、水商売であるがゆえに周囲からは不当に低い評価をされている。
天涯孤独となった美奈子にとっては、母親のような存在であり、唯一の理解者と言って良いだろう。
美奈子のことをミニ子と呼ぶのは彼女だけだが、それだけ彼女を身近な存在と見ている証拠でもある。
しかし、やや大雑把な性格ゆえ、よく考えずに行動に移したり、短絡的な思考になりがちである。
今回も霊の仕業と決めつけているが、霊媒師を呼ぶ前に戦車の専門家が居るなら、まずはそちらに当たるべきと美奈子も気付いた。
今別れたばかりだが美奈子は朱里の店に電話をしてみた。
「あ、もしもし、朱里さん?田宮です」
「あぁ、ミニ子ちゃん、何?」
「先ほどは、わざわざどうも」
「うん、それで?」
「さっき話に出てた元自衛官の方、80歳の」
「ああそっか!そっちに先に話聞きたいよね」
「そうですね、その方が話が早そうな」
「確かに」
「10式と25式はほとんど同じだと思うので、動かし方知ってると思うんですよ」
「そうなんだけどね~。う~ん、どうしようかな」
「何か、問題でも?」
「えーと、西さんって言うんだけど、ちょうどアンタみたいなのがタイプなのよ。っていうかドストライク?」
「は?」
「紹介してあげても良いんだけど、ややこしいことになりそうなんでねぇ」
「はあ、手込めにされると?」
「まあ、それはそれで良いことなのかもしれないけど、一応奥さん居るしね」
「もしかして、お店に行ってることは内緒とか?」
「まあ、気付いてるとは思うけど、本人は内緒にしてるつもり」
「なるほど~」
「そうだ、あんたウチでバイトしなよ。お店の子であればそうひどいことにはならないと思うわ」
「え?でも……」
「大丈夫、変な客は滅多に来ないから」
「う~ん」
「アタシが責任持つから、大丈夫だって。ちゃんとバイト代も出すから」
「そうですか?」
「そうそう。それで、それとなくこんな戦車があって困ってるんですって話すれば、相談に乗ってくれるでしょ」
「はあ、分かりました」
「西さんは、明日来るから。明日の5時にはお店に来てね」
「はい、よろしくお願いします」
「うん、待ってるからね~。ちゃんとお風呂入ってね~」
「じゃぁ、明日」
「は~い。よろしく~」
あっさりと口車に乗せられてしまったことを悔やみながらも、美奈子は一つの突破口が開いた気がした。
とにかく一刻も早く、この不気味な状況を何とかしたかったのだ。
それが老人でも尼僧でもどちらでも良いが、確実なのは実際に使っていた人間に聞くのが最善であるということだ。
神頼みはその後で良かろう。
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