戦車バカ一台(戦車に憑依した俺がアメリカで無双する件)

TANK_KONG

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第一章

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 いやあ、ビビッた。
 砲塔が外れかけたとき、本当に首が取れそうに感じたのだ。
 一所懸命イメージングしたせいだろうか、思った以上に25式との同一化が進んでいたようだな。
 つまり、今はこの戦車が俺の肉体となったことは間違いない。
 憑依したのか、付喪神つくもがみになったのか良く分からないが、一瞬で肉体を失った俺の魂は、ちょうどのし掛かるようにしてペリスコープを覗きこんでいた25式に乗り移ってしまったのだ。
 しかし35年とはな。
 なかなかの年月だが、それより問題なのはこの先どうするべきかだろう。
 俺も普通に生きていたら72歳で、このオッサンのようなジジイになっていたはずだ。
 まだ、実際に戦車として活動したことはないが、ゲームではドイツのⅣ号戦車を操り、連続24キルを達成したこともある。
 各部を自分の手足としてちゃんと動かせるなら、それくらいのことは出来そうな気もするが、それが出来たからといってどうなるというのだ。
 兵器として使われないなら、戦車などデカくて重い、邪魔なだけの存在だ。
 はたしてそんな機会があるのか。
 世界は破滅したというのに。
 ただ、ここに居る人達は、なぜか戦車を大事に使おうとしているようだ。
 俺の活躍の場があるというのだろうか。
 そう疑問に思っていたところで、諒子さんが話しかけてきた。
 わぁい、お話しできるぞ~。

 「鉄男さん。ちょっと宜しいですか」
 「はい、なんなりと」
 「これはあくまで私の推論ですので、間違ってると思われるかもしれませんが、ちょっと聞いて欲しいんですけど」
 「どうぞどうぞ」
 「え~と、鉄男さんは2028年に実際には亡くなっていると思うんですよ」
 「はい、そうだと思います」
 「で、もしかしたら、残留していた鉄男さんの電磁的な情報をAIが再構築した仮想的な人格ではないかという可能性が考えられるんですが、そういう自覚はあります?」
 「う~ん、どうだろう。コンピュータが介在してはいるけど、コンピュータそのものでは無い感じはしてます。AIはインターフェースとして存在している感覚はありますけど」
 「なるほど。ではやはりAIそのものが人格として振る舞っているわけではないと思うわけですね」
 「そうですね。あくまで俺という存在を繋ぎ止める役割というか、そんな感じがしてます」
 「そうですか。ちょっとそれを実証する実験として、AIが作ったコピーの方の動作も止めてみようかと思うんですけど、その前にバックアップを取っておこうと思ってまして」
 「あーなるほど。もしかしたら俺のコピーが作れるかもしれないってことね」
 「そうです」
 「いや、それはなんか嫌だな。俺が増殖しちゃうってことでしょ?」
 「まあ、成功すればですけど、多分うまく行かないと思います」
 「え?どうなると考えてます?」
 「多分ですけど、コピーは動作せずに壊れてしまいそうな気がしてます。一方で鉄男さんの方は意識が途切れ、眠った状態になるだけなのではと思ってます」
 「なるほど~。確かにやってみる価値はあるかな。諒子さんの予想通りなら俺はAIじゃない超常的な存在ってことだし、コピー出来ちゃったら俺はその程度の物ってことですな」
 「超常的かどうかはともかく、そうであればコンピュータを外してもあなたは戦車に残ったままになるということです」
 「ふむ。良いでしょう。やってください」
 「ただ、プログラムの容量が尋常じゃなくて、手持ちのストレージじゃ足らないんですよ」
 「なるほど」
 「で、けっこう長時間に及ぶ作業になりそうなので、それなりに準備しないといけないので、明日また来ますね」
 「あ、明日ね。大丈夫ですよ。特に予定は入ってないですから」
 「フッ、予定だなんて」

 お、笑ってくれたぞ~!
 やっべぇ、可愛い!
 もう、完全に惚れた!
 諒子さんに一生付いていきます!
 美奈子ちゃんもエロくて良いのだが、諒子さんは知的な上に美人だ。
 ちょっと日本人離れした顔立ちなのも、俺好みだし、その上にメガネでパンストなのだ。
 これで、惚れなきゃ男では無い。
 まあ今は男かどうかすら怪しい状態だが、少なくとも魂は男だという自覚はある。
 ポリコレどもは、やれルッキズムだ、容姿差別だとか騒ぎ立てるが、そもそも男とはルッキズムで出来ているのだ。
 女の本性など知りたくも無いのだ。
 それを否定されたら男は生き甲斐を失ってしまうことが分からないのかね、アイツらは。
 まあ、今となってはそんなことはどうでも良い。
 戦車として俺の生きる道があるのか、そこが問題なのだ。
 その後、何度か細かい話をした後、諒子さんたちは帰って行った。
 美奈子ちゃんが今後作業しやすいようコンソールを車外に引っ張り出してくれたので、俺も外の様子が分かるようになった。
 ガレージかと思っていたが、どうやら狭い地下倉庫のようなところで、整備場と生活の場が一つになってる不思議な空間だ。
 寝床なども、カーテン一枚で仕切ってあるだけなので、油臭くないのかな?
 部屋の一角には仏壇もあって、そこに両親の遺影らしき物が飾ってある。
 父親は最近亡くなったと聞いたが、おそらく汚染されたスクラップ場から部品を持ち帰ってここで整備していたのだろう。
 部品とかの放射能は大丈夫なのかね。
 まだ、世界の状況をザックリとしか聞いてないが、外に出られないからみんな地下で暮らしているんだろうしな。
 しかし、この朱里というオバハンは何者なんだ?
 いきなりオッパイを見てしまった関係上、妙な親近感をおぼえているのだが、向こうはそんなこと知らないだろうしな。
 身寄りの無い美奈子ちゃんの母親代わりみたいなものだろうか?
 何やらもう一度、バイトをする、しないで揉めているようだが、もしかして水商売の話か?
 まあ、今後関わることも無いと思うが、もし美奈子ちゃんの保護者だというなら水商売なんかやらせないだろうし、どういうつもりなんだろうな。
 何度か押し問答をした結果、ようやく諦めたようで「また何か困ったことあったらいつでも声掛けてね、じゃあね」と言って帰っていった。
 俺とは一言も話さなかったが、それで良かったのだろうか?
 諒子さんと話しているところは見ていたのでそれで十分だったのかな。
 オバハンを送り出した後、美奈子ちゃんは、冷蔵庫からパック入りの飲み物とプロテインバーのようなものを取り出し、食べ始めた。
 そして俺の方に近づいて来て、話しかけてきた。

 「えーと、鉄男さん?」
 「はい、なんでしょう」
 「コンソールに電源が入っている間は、ずっと見えていたんですよね」
 「ええ、そうですね」
 「あたしが消火液に濡れたときとか、着替えてるときとか……」
 「あ~、あれは俺もビックリしました。てっきり粉の消火剤が出てくると思ってましたから」
 「やっぱり狙ってやってたのね」
 「あ、ごめんなさい。コンピュータ外されたくなかったんで」
 「まあ良いですけど、着替えとか覗いて見てないですよね」
 「それは見てないです。カメラはコンソールの正面にしか無いし、そこまで性能は良く無いですから」
 「そーですか。電源を切っておけば見れない?」
 「はい、大丈夫です。音も聞こえませんから」
 「じゃあ、夜は電源を落とした方が良いですね」
 「そうですね。気になるようでしたら」
 「じゃあ、そうします」

 なるほど、そりゃ気になるよね。
 急に私生活が男の視線に晒される訳だしね。
 普通に年頃の女の人なんだし、色々あるでしょう、色々。
 しかしそのプロテインバーみたいなものは何なんだ?
 白いクッキーのような、カ○リーメイトみたいなものなんだろうけど、食事ってそれだけなのか?
 それだけで済むほど栄養価が高いのだろうか。
 全部英語で書いてあるけど、アメリカ製なのか?
 それも含めて世界の情勢を詳しく聞いてみたが、かなりひどい状況のようだな。
 ザックリ戦後の状況を説明してくれたが、結果アメリカだけが上手く生き残ったという事になるようだな。
 食料も週1回配布されるその総合栄養食のようなスティックが無ければ、大半の人は飢え死にしていただろうという。
 やはり土壌の汚染が深刻で、あれから34年経つ今でも、地面を30cmも掘ればガイガーカウンターが振り切れるというので、とてもじゃないが農業なんて出来るはずが無い。
 ごく僅かに食物工場などで作られる野菜類を除き、露地栽培の野菜や穀物は存在しないらしい。
 土壌を入れ替えようにも、そもそも汚染されてない土壌が存在しないのではどうしようもない。
 同様に地下水も汚染されているため、多少放射能が検出されたとしても雨水の方がまだましらしい。
 なので、水道は雨水を集める取水システムに頼っているため、非常に貴重であるという。
 彼女が風呂に入らない理由は、無精だからではないことをやたらと強調していたが、まあそういうことにしておこう。
 ただ、雨自体はわりと多く降るようで、それが無ければ砂漠のような状態になって、とても人が住めるような環境ではない。
 ここに何人住んでるか知らないが、全員が普通に暮らせるくらいには水は確保出来ているのだろう。
 何にしろ、晴れた時は外に出られないというのは、相当ひどい状況だよな。
 そのため、長距離の移動にはどうしても路外性能と耐放射線性能が高い軍用車でないとダメらしい。
 ということで、俺の出番はそこにあるらしいのだが、なにも戦車じゃなくても良いような気はするが、時々盗賊のような連中が戦車や装甲車で襲ってくるので、自衛のためにも戦車が重要らしい。
 ヤレヤレ、すごい世界になったもんだな。
 結構長話をして、美奈子ちゃんも疲れたというので、俺も電源を落としてもらうことにした。
 これから風呂に入って寝るんだろうな。
 少し残念だが、はい、お休みなさ~い。


 翌朝、だと思うが、電源を入れてもらうと、美奈子ちゃんは昨日とは違う服装で、それでも同じようにツルツルした身体に密着した素材のTシャツ1枚だけで、短パンは昨日と同じ物っぽい。
 時計を見ると朝の9時である。
 気のせいか昨日よりも片付いてるように見えるので、実はもっと早く起きて掃除などしていたのかも知れない。
 電源を切られた後は、俺も疲れていたんだと思う、完全に意識を失っていたからな。
 幽霊も眠くなるんだなと初めて知った。
 それから30分ほどしてシャッターを叩く音がして諒子さんたちが来たようだ。
 随分と大荷物だなと思ったら、PCだけじゃなく、様々な機器をたくさん揃えている。
 じいさんのやってる会社は、まさに戦車をはじめとする軍用車の整備を請け負う工場で、そこからいろいろ機材を調達してきたようだ。
 今はコンソールのカメラが唯一の情報収集の手段だが、これを車外に設置した360°見回せるレンジファインダーに接続出来るようにして、実用的にしてくれるらしい。
 その前に、昨日言っていたバックアップを取る作業を先に済ませるつもりのようだ。
 ていうか、バックアップは時間が掛かるので、その間に機器の設置を進めておこうということらしい。
 諒子さんはさすがにプロの仕事ぶりで、テキパキと機器を設置して早速バックアップの作業を開始していた。
 俺もそれなりにコンピュータには詳しいつもりだったが、この時代の機器は全く見たことがない物ばかりだ。
 唯一昔から使われているUSBコネクターは、この時代も使われている。
 新たなハードウェアがドンドン出てくる時代ではないので、結局使われるのは昔からある機械をいかに性能を維持しながら使い続けるかだからな。
 それでもメモリやらストレージの類いは、新しい方式が開発されているようで、機械式のハードディスクはもう完全に使われなくなったようだ。
 今の主流は光の信号をそのまま書き込める、大容量のフラッシュメモリのようなストレージで、20TBの容量が1個のメモリチップに入るらしい。
 諒子さんはモバイルバッテリーぐらいの大きさのストレージケースに、このチップを10枚積んで持って来たようだ。
 つまり200TBだ。
 すごい容量だな。
 これでも書き込みに1時間ほど掛かると言うから、データ転送速度がボトルネックになっているのかもな。
 まあ、それでも俺の感覚だと随分速く感じるけどな。
 西さんはもう1人、助手のような女性を連れて来ていた。
 体格的には朱里さんに近い感じだが、だいぶ若い。
 30に届くかどうかというくらいかな?残念ながら顔の方は見なかったことにしようと思うが、よく見ると身体はすごい筋肉質だ。
 背丈は170cmあるかないかだが、二の腕がプロレスラーのようだ。
 確かに機器の取り付けは、諒子さん一人じゃ難しそうだったからな。
 こういう重機みたいな人がいると助かるよな。
 そのアマゾネスみたいなお姉さんに、西さんは的確に指示を出し、砲塔上部に新たなタレットを設置している。
 そこにレンジファインダーと赤外線暗視装置を一体化させたステレオカメラを載せて、新たな俺の目にしようとしているようだ。
 赤外線かぁ。
 それはなかなか危険な香りがするが、美奈子ちゃんは気付いているのだろうか。
 赤外線で服が透けて見えてしまうことに。
 まあ、赤外使わなきゃ良いだけだけど、使えるなら使ってしまうかも知れんぞ。
 俺の良識に掛かっているということだが、いずれにしても、言わぬが花だな。
 キッチリ1時間かけて、バックアップを取り終えると、諒子さんは俺の前に向き直り、「さて、鉄男さん、いよいよ真実を知るときが来ましたが、覚悟は良いですか」と思いっきり大上段に構えて言った。
 ああ、俺がAIじゃないか確かめる話ね。
 「はい、良いですよ」と答えると、諒子さんが全員を招集して、いよいよAIをシステムから切り離す作業をすると説明する。
 これでもし、AIを止めても俺の意識があるようなら、俺は幽霊確定で、AIではないことになる。
 仮に俺がここで気を失ったら、AIになったということで、もしかしたらコピーしたプログラムも意識を持つ可能性が出て来る。
 ある意味SFの夢が叶うことになり、AIが更に飛躍的に進化を遂げる切っ掛けとなるだろう。
 だが、俺が幽霊だったとしても、このAIを使って、死者や霊的な物とコミュニケーションを取ることが可能になるかも知れない。
 それだけ、いろいろと意味のある実験と言えるだろう。

 「さぁ、ひと思いにやってくれぃ」
 「では行きます」
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