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第一章
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諒子がAIの動作を止めるコマンドを打ち込むと、コンソールから鉄男の声は消え、周囲は静寂に支配された。
誰もが固唾を吞む状況だが、諒子だけは冷静にコンソールからの反応を待っていた。
「鉄男さん、聞こえていたら、何でも良いです、反応を示してください」
たっぷり一分ほど経ってから、ようやくウ~ウ~とサイレンを鳴らす音が響いた。
「分かりました。ありがとうございました。すぐに元に戻しますね」
諒子はすぐにAIを再起動し、鉄男とマッチングを開始させる。
およそ2分後に鉄男とのコンタクトは再開出来たが、鉄男はAIが切られていた間は、完全に外界と切断されて、最初に目が覚めたときと同じような感覚に陥っていたという。
やっとのことでサイレンのスイッチを入れることが出来たが、自分が探って道筋を付けたイメージング作業が全て無くなっていたことがかなりショックだった。
つまり、彼が自分でやっていたと思っていたことの大半は、AIがやっていたことだったのだ。
神経回路のように機器を繋いだのも、視覚や聴覚を構成したのも全てAIが肩代わりしていたことだったのだ。
そして、AIが切られた1分の間に、再びAIの再構築が行われ、辛うじて初歩的なインタフェースを確保することが出来たものと考えられる。
諒子の推論としては、おそらく霊的な電磁情報だった鉄男を、デジタル化して数値に置き換えたのがAIなのだ。
そして、その霊的電磁情報はまだ、そのままの状態で存在し続けているが、デジタル化された鉄男の情報はAIに組み込まれ、鉄男の意思を伝達する手段として25式と一体化しながらドンドン進化を続けているに違いない。
戦車が好きという鉄男の生来の親和性も相まって、今の状態が維持出来ているのではないか、そう考えるのだった。
その一方で、このAIだけを取り出して、新たなインタフェースとして製品化出来るかも知れないという期待感は、かなり強まっていった。
インターネットが無いため、世界的に広めるにはパッケージソフトとして売り出すしか無いのだが、そのためにももっとハイレベルの研究施設が要る。
何より、実際に使う時にAIをどうやって操作するのか。
VRのような機器を使って自分の意思を伝えるにしても、これまで通りの方法では限界がある。
おそらく鉄男のように、人間の意識そのものにアクセス出来れば一番効率が良いことは間違いないが、それには脳への直接のアプローチが必要となる。
人類は一時期、そのテクノロジーの入口に立つ寸前までたどり着いたが、核戦争で全てを失ってしまった。
アメリカを除いて。
*
2028年当時のアメリカの全人口3億4000万人のうち、1億7000万人の命が、核戦争と、それに起因する災害によって失われた。
生き残った1億7000万人のうち、半数は地下シェルターで生活を続け、そのうちの150万人が中央政府および州政府とその関連施設を運営し、500万人が常備軍として治安維持に従事していた。
それから15年後の2043年。
アメリカの本土における残留放射能は、爆心地を除きほぼ消失したと宣言され、地方の都市ではかつての生活を取り戻しつつあったが、都市部では依然としてシェルターで暮らす者が大半だった。
地下で迷路のように繫がったシェルターで暮らす多くのアメリカ人は、日本と同じように地下に小さなコミュニティを作って暮らしていたが、一部は軍の施設を奪い、戦車などで武装してギャング団のような組織を形成し、地上を我が物顔で跋扈していた。
そんな中でMITなどの研究施設は、研究室自体がシェルターのような地下施設になっていたため戦禍を免れ、戦後はMITは完全に政府の保護下に入り、政府直轄の研究機関となって、名前も変更されたが、学生や研究者らはそのまま職員として政府の命ずるテーマを研究することになった。
MITの研究者の中でも政府の仕事を拒んだ者たちは、使われなくなった地下のコンピュータ施設を占拠し、それらを使って新たなソフトウェアを開発したり、インターネットに代わる新たな通信システムを模索したりしており、アメリカ政府とは連携せずに独自にコンピュータの可能性を広げようとしていた。
アメリカとは事情が異なる日本では、コンピュータそのものが貴重品であり、一般人が目にすることは極めて稀だが、実は日本にもそういった民間の研究組織が存在していることは、諒子も耳にしていたが、具体的にどういった活動をしているかは知らなかった。
実際にはごく小規模ではあるが、そんなグループの1つが岐阜県にある地下データセンターで活動をしていた。
岐阜も大半が砂漠と化していたが、飛驒の一部の山間の街には辛うじて生活可能な地域が存在した。
この地域では鍾乳洞と鉱山の坑道が生活の場となっており、約500人が暮らしていたが、そのうちの23人が地下サーバ施設で生活しており、研究やゲーム開発などに有り余るコンピュータリソースを使っていた。
だがパッケージソフトを売ろうにも、製造施設も無い、販路も無い、そもそもコンピュータを誰も持っていない状態だったので、結局自分たちとその周辺でしか活用されなかった。
そのせいか全体にダラッとした、かなりモチベーションの低い集団ではあったが、平均年齢が31歳と若く、優秀なプログラマーも何人かいるので、条件さえ整えば大きなポテンシャルを秘めているグループでもあった。
そんなグループの一員である関本麗子は、諒子の高専時代のクラスメイトであった。
麗子は今は主にゲーム開発に携わっているが、専攻科目は実はAIであった。
だが、結果的に彼女の能力を活かすには、日本ではその場があまりに少なすぎた。
政府関連の就職も可能だったが、そんな面白みのない仕事に興味はなく、フリーランスという立場だが、自由に開発が出来る環境を選んだのだ。
だが、結局は自治体からの依頼を安く引き受ける以外の仕事が無く、彼女の唯一の実用的成果は砂嵐の発生予想AIだけであった。
2028年当時であれば最先端であったスーパーコンピュータも、その有り余るリソースを、実験的に作ったAI人格と他愛のない会話をしながら、ダラダラとゲームに費やす毎日であった。
「学生時代はなんかキラキラしてたよねもっと」と人知れず愚痴をこぼすも、AIにはスルーされ、同僚にも適当にいじられるだけで、そこから会話が発展することも無く無為な時間を送っていた。
そんな時、突如電話が鳴った。
橘諒子からだった。
「うわ、ひっさしぶり~!」
「ヤッホ。元気だった?」
「うわ~姫だ~。ウンこっちは元気だけど、どしたの?急に」
姫とは橘諒子の学生時代のあだ名で、姫カットだったことと、物腰の大人っぽさから姫と呼ばれていたのだ。
「麗ちゃん、AI詳しかったじゃない。で、今もそっち方面に携わってたりする?」
「あ~AIはねぇ、仕事ではやってない。つーか仕事すらしていないww」
「え~?何それ。どうやって暮らしてるの?」
「ん?え~と、岐阜で物乞いしてます」
「はあ?」
「まあ、ボランティアで自治体のシステムとか作ってあげてるんで、生活は地元の人達が面倒見てくれてます」
「良く分からないけど、なんとかコンピュータ開発って会社入ったって聞いたけど」
「ああ、今もそこにいるよ。会社じゃないけど」
「え?会社じゃないってどういうこと?」
「まーなんだろうね。NPOってヤツ?」
「なにそれ?そんなの今あるの?」
「京都と地下ケーブルが繋がってるんで、わりと自治体関連の請負が多いのよ。でも会社にしちゃうと給料払えなくなるので、何となくコンピュータ扱える人間が集まって個人経営でやってる感じ」
「そうなんだ~、なんかもったいないね」
「姫はもう、我々の間では伝説だからそう思うのさ」
「はあ?」
「だって副社長だよ。あの教室でそこまで出世したの姫だけだもん。あとはアメリカ行ったり、役人になったりで、コンピュータで食ってる奴なんて一握りだよ」
「そうだっけ」
「そうだよ。姫は恵まれてると思わなきゃ」
「ウ~ン、まあでも、そうかもね」
「それで?AIがどうしたって?」
「あぁ、実はね……」
諒子は鉄男の存在は伏せて、これまでの経緯をかいつまんで話すと、戦車からコピーした軍用AIを上手く活用出来ないか打診をしてきたのだ。
「何それ!スッゴイ面白そう!やるやる!タダでもやる!」
「ホント? でね、本当なら掛川か静岡に来てくれれば良いんだけど、こっちにはちゃんと使えるコンピュータがあまり無くて、そっちにもしリソース余らせてるスパコンとかあったら良いなとか思ってるんだけど」
「あるよ。鼻毛が伸びる予想とか、もうくっだらない目的にしか使ってないのがドーンと」
「鼻毛?なにそれ」
「え~と、砂嵐が吹くと鼻毛が伸びるでしょ。砂嵐が何処で起きるかが分かれば、鼻毛の伸び率も分かるという訳で、今日の鼻毛伸び予想は○○地区は1.1mmです。みたいな」
「なにそれ、可笑しい」
「まーそんな訳だから暇なんで、こっちに来てもらうのも大変だから行くよ。アタシが」
「え~?悪いよ、遠いし」
「いや、良いの。もう根が生えそうだったから、ちょっとは動かないと」
「ホントに?それだったら助かるけど」
「どっちに行けば良いの、静岡?掛川?」
「じゃあ、掛川で」
「分かった、じゃ明日行くね」
「ホントに、ありがとう!恩に着るわ」
「良いのよどうせ暇だったんだから、そっちは忙しい重役さんだし、飛騨の山奥なんかに来てたら仕事にならないでしょうしね」
「ありがとう。じゃ、明日、掛川の地下街で待ってます」
「ほ~い。じゃ明日ね~」
「はい、じゃあ」
諒子は岐阜からどうやって来るんだろうと、素朴な疑問を抱くも、「まー岐阜にも装甲車ぐらいあるでしょ」と、考えるのを止め、西と共に鉄男の今後について話し合う会議に戻っていった。
*
そのころ、小鳥遊朱里の店では、いつもの三人組が一瞬だけ店員を務めた田宮美奈子について、朱里にしつこく行方を聞いていた。
それでも朱里は「ごめんなさいね、あの子については私も見込み違いしてたみたいで、もう来ることは無いと思うわ」と追及をかわし続けていた。
この男達に良からぬ下心があることは見え透いているが、彼女の同意も無しに引き合わせることは出来ない。
美奈子の安全のためにも、彼女の情報は一切明かさなかったのだが、どうもこの三人組は彼女のことが忘れられないらしく、店が終わった後でもかなりしつこく聞いてきた。
元々そんなに良い客ではなかったし、下衆な下心を隠しもしないような男達に彼女を委ねるようなことは出来ない。
「これ以上突っかかるようなら、出入り禁止にするよ」と凄んでみせたところ、男どもは逆ギレして「こっちこそ願い下げだ!」と言って乱暴にドアを閉め、出て行ってしまった。
朱里はこれで良かったのだ、と胸をなでおろす一方で、「変なことにならなきゃ良いけど」と一抹の不安を抱いていた。
その不安は、最悪の形で的中することになる。
誰もが固唾を吞む状況だが、諒子だけは冷静にコンソールからの反応を待っていた。
「鉄男さん、聞こえていたら、何でも良いです、反応を示してください」
たっぷり一分ほど経ってから、ようやくウ~ウ~とサイレンを鳴らす音が響いた。
「分かりました。ありがとうございました。すぐに元に戻しますね」
諒子はすぐにAIを再起動し、鉄男とマッチングを開始させる。
およそ2分後に鉄男とのコンタクトは再開出来たが、鉄男はAIが切られていた間は、完全に外界と切断されて、最初に目が覚めたときと同じような感覚に陥っていたという。
やっとのことでサイレンのスイッチを入れることが出来たが、自分が探って道筋を付けたイメージング作業が全て無くなっていたことがかなりショックだった。
つまり、彼が自分でやっていたと思っていたことの大半は、AIがやっていたことだったのだ。
神経回路のように機器を繋いだのも、視覚や聴覚を構成したのも全てAIが肩代わりしていたことだったのだ。
そして、AIが切られた1分の間に、再びAIの再構築が行われ、辛うじて初歩的なインタフェースを確保することが出来たものと考えられる。
諒子の推論としては、おそらく霊的な電磁情報だった鉄男を、デジタル化して数値に置き換えたのがAIなのだ。
そして、その霊的電磁情報はまだ、そのままの状態で存在し続けているが、デジタル化された鉄男の情報はAIに組み込まれ、鉄男の意思を伝達する手段として25式と一体化しながらドンドン進化を続けているに違いない。
戦車が好きという鉄男の生来の親和性も相まって、今の状態が維持出来ているのではないか、そう考えるのだった。
その一方で、このAIだけを取り出して、新たなインタフェースとして製品化出来るかも知れないという期待感は、かなり強まっていった。
インターネットが無いため、世界的に広めるにはパッケージソフトとして売り出すしか無いのだが、そのためにももっとハイレベルの研究施設が要る。
何より、実際に使う時にAIをどうやって操作するのか。
VRのような機器を使って自分の意思を伝えるにしても、これまで通りの方法では限界がある。
おそらく鉄男のように、人間の意識そのものにアクセス出来れば一番効率が良いことは間違いないが、それには脳への直接のアプローチが必要となる。
人類は一時期、そのテクノロジーの入口に立つ寸前までたどり着いたが、核戦争で全てを失ってしまった。
アメリカを除いて。
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2028年当時のアメリカの全人口3億4000万人のうち、1億7000万人の命が、核戦争と、それに起因する災害によって失われた。
生き残った1億7000万人のうち、半数は地下シェルターで生活を続け、そのうちの150万人が中央政府および州政府とその関連施設を運営し、500万人が常備軍として治安維持に従事していた。
それから15年後の2043年。
アメリカの本土における残留放射能は、爆心地を除きほぼ消失したと宣言され、地方の都市ではかつての生活を取り戻しつつあったが、都市部では依然としてシェルターで暮らす者が大半だった。
地下で迷路のように繫がったシェルターで暮らす多くのアメリカ人は、日本と同じように地下に小さなコミュニティを作って暮らしていたが、一部は軍の施設を奪い、戦車などで武装してギャング団のような組織を形成し、地上を我が物顔で跋扈していた。
そんな中でMITなどの研究施設は、研究室自体がシェルターのような地下施設になっていたため戦禍を免れ、戦後はMITは完全に政府の保護下に入り、政府直轄の研究機関となって、名前も変更されたが、学生や研究者らはそのまま職員として政府の命ずるテーマを研究することになった。
MITの研究者の中でも政府の仕事を拒んだ者たちは、使われなくなった地下のコンピュータ施設を占拠し、それらを使って新たなソフトウェアを開発したり、インターネットに代わる新たな通信システムを模索したりしており、アメリカ政府とは連携せずに独自にコンピュータの可能性を広げようとしていた。
アメリカとは事情が異なる日本では、コンピュータそのものが貴重品であり、一般人が目にすることは極めて稀だが、実は日本にもそういった民間の研究組織が存在していることは、諒子も耳にしていたが、具体的にどういった活動をしているかは知らなかった。
実際にはごく小規模ではあるが、そんなグループの1つが岐阜県にある地下データセンターで活動をしていた。
岐阜も大半が砂漠と化していたが、飛驒の一部の山間の街には辛うじて生活可能な地域が存在した。
この地域では鍾乳洞と鉱山の坑道が生活の場となっており、約500人が暮らしていたが、そのうちの23人が地下サーバ施設で生活しており、研究やゲーム開発などに有り余るコンピュータリソースを使っていた。
だがパッケージソフトを売ろうにも、製造施設も無い、販路も無い、そもそもコンピュータを誰も持っていない状態だったので、結局自分たちとその周辺でしか活用されなかった。
そのせいか全体にダラッとした、かなりモチベーションの低い集団ではあったが、平均年齢が31歳と若く、優秀なプログラマーも何人かいるので、条件さえ整えば大きなポテンシャルを秘めているグループでもあった。
そんなグループの一員である関本麗子は、諒子の高専時代のクラスメイトであった。
麗子は今は主にゲーム開発に携わっているが、専攻科目は実はAIであった。
だが、結果的に彼女の能力を活かすには、日本ではその場があまりに少なすぎた。
政府関連の就職も可能だったが、そんな面白みのない仕事に興味はなく、フリーランスという立場だが、自由に開発が出来る環境を選んだのだ。
だが、結局は自治体からの依頼を安く引き受ける以外の仕事が無く、彼女の唯一の実用的成果は砂嵐の発生予想AIだけであった。
2028年当時であれば最先端であったスーパーコンピュータも、その有り余るリソースを、実験的に作ったAI人格と他愛のない会話をしながら、ダラダラとゲームに費やす毎日であった。
「学生時代はなんかキラキラしてたよねもっと」と人知れず愚痴をこぼすも、AIにはスルーされ、同僚にも適当にいじられるだけで、そこから会話が発展することも無く無為な時間を送っていた。
そんな時、突如電話が鳴った。
橘諒子からだった。
「うわ、ひっさしぶり~!」
「ヤッホ。元気だった?」
「うわ~姫だ~。ウンこっちは元気だけど、どしたの?急に」
姫とは橘諒子の学生時代のあだ名で、姫カットだったことと、物腰の大人っぽさから姫と呼ばれていたのだ。
「麗ちゃん、AI詳しかったじゃない。で、今もそっち方面に携わってたりする?」
「あ~AIはねぇ、仕事ではやってない。つーか仕事すらしていないww」
「え~?何それ。どうやって暮らしてるの?」
「ん?え~と、岐阜で物乞いしてます」
「はあ?」
「まあ、ボランティアで自治体のシステムとか作ってあげてるんで、生活は地元の人達が面倒見てくれてます」
「良く分からないけど、なんとかコンピュータ開発って会社入ったって聞いたけど」
「ああ、今もそこにいるよ。会社じゃないけど」
「え?会社じゃないってどういうこと?」
「まーなんだろうね。NPOってヤツ?」
「なにそれ?そんなの今あるの?」
「京都と地下ケーブルが繋がってるんで、わりと自治体関連の請負が多いのよ。でも会社にしちゃうと給料払えなくなるので、何となくコンピュータ扱える人間が集まって個人経営でやってる感じ」
「そうなんだ~、なんかもったいないね」
「姫はもう、我々の間では伝説だからそう思うのさ」
「はあ?」
「だって副社長だよ。あの教室でそこまで出世したの姫だけだもん。あとはアメリカ行ったり、役人になったりで、コンピュータで食ってる奴なんて一握りだよ」
「そうだっけ」
「そうだよ。姫は恵まれてると思わなきゃ」
「ウ~ン、まあでも、そうかもね」
「それで?AIがどうしたって?」
「あぁ、実はね……」
諒子は鉄男の存在は伏せて、これまでの経緯をかいつまんで話すと、戦車からコピーした軍用AIを上手く活用出来ないか打診をしてきたのだ。
「何それ!スッゴイ面白そう!やるやる!タダでもやる!」
「ホント? でね、本当なら掛川か静岡に来てくれれば良いんだけど、こっちにはちゃんと使えるコンピュータがあまり無くて、そっちにもしリソース余らせてるスパコンとかあったら良いなとか思ってるんだけど」
「あるよ。鼻毛が伸びる予想とか、もうくっだらない目的にしか使ってないのがドーンと」
「鼻毛?なにそれ」
「え~と、砂嵐が吹くと鼻毛が伸びるでしょ。砂嵐が何処で起きるかが分かれば、鼻毛の伸び率も分かるという訳で、今日の鼻毛伸び予想は○○地区は1.1mmです。みたいな」
「なにそれ、可笑しい」
「まーそんな訳だから暇なんで、こっちに来てもらうのも大変だから行くよ。アタシが」
「え~?悪いよ、遠いし」
「いや、良いの。もう根が生えそうだったから、ちょっとは動かないと」
「ホントに?それだったら助かるけど」
「どっちに行けば良いの、静岡?掛川?」
「じゃあ、掛川で」
「分かった、じゃ明日行くね」
「ホントに、ありがとう!恩に着るわ」
「良いのよどうせ暇だったんだから、そっちは忙しい重役さんだし、飛騨の山奥なんかに来てたら仕事にならないでしょうしね」
「ありがとう。じゃ、明日、掛川の地下街で待ってます」
「ほ~い。じゃ明日ね~」
「はい、じゃあ」
諒子は岐阜からどうやって来るんだろうと、素朴な疑問を抱くも、「まー岐阜にも装甲車ぐらいあるでしょ」と、考えるのを止め、西と共に鉄男の今後について話し合う会議に戻っていった。
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そのころ、小鳥遊朱里の店では、いつもの三人組が一瞬だけ店員を務めた田宮美奈子について、朱里にしつこく行方を聞いていた。
それでも朱里は「ごめんなさいね、あの子については私も見込み違いしてたみたいで、もう来ることは無いと思うわ」と追及をかわし続けていた。
この男達に良からぬ下心があることは見え透いているが、彼女の同意も無しに引き合わせることは出来ない。
美奈子の安全のためにも、彼女の情報は一切明かさなかったのだが、どうもこの三人組は彼女のことが忘れられないらしく、店が終わった後でもかなりしつこく聞いてきた。
元々そんなに良い客ではなかったし、下衆な下心を隠しもしないような男達に彼女を委ねるようなことは出来ない。
「これ以上突っかかるようなら、出入り禁止にするよ」と凄んでみせたところ、男どもは逆ギレして「こっちこそ願い下げだ!」と言って乱暴にドアを閉め、出て行ってしまった。
朱里はこれで良かったのだ、と胸をなでおろす一方で、「変なことにならなきゃ良いけど」と一抹の不安を抱いていた。
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