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【15】拙いディープキス
しおりを挟む家に帰ってからも放心状態は続いた。直くんとしてきた遊びは本当に遊びの延長だったのかもしれないと思う。
今なら直くんがほかの女の子とどうにかなってようとも気にならないだろう。
自分のことを寂しいなんて思ってなかったのに、私はやっぱりずっと人肌寂しかったのだろうか。
それにしてもこのマンションに先生が住んでるとは。
2階は少々複雑な造りになっていて、出入口も複数あるせいで会わなかったのかもしれない。
しかし明日からどういう顔して先生に会えばいいのか。
さっきはよくもあんなに大胆になれたものだと顔を覆った。
「ただいまぁ」
寝る支度が済んだ頃に母が帰ってきた。疲れている母にお風呂を勧めて、カレーを温めて出し、作っていたサラダを添えた。
「あー、ありがとうー。本当助かる。ありがとねぇ、芽衣」
母は手を合わせた後、おいしそうにそのカレーを食べ始めた。大したものは作れないけど、母が喜んでくれるのは何より嬉しい。
「じゃ、私寝るね」
「はーい。おやすみぃ」
「おやすみなさい」
自分の部屋に戻ってベッドに入る。さすがに今日は直くんは来ないよね、とLINEを確認したら「今日も行く」と入っていた。
こんなに頻繁に来ることなんてなかったのに。まずお母さんがいても来ようとするのが珍しいことで。
ワタナベさんに会わなかったら、藤原先生と会わなかったら。
私はこの直くんの変化を喜んでいたのかもしれないのに、今は――。
断りのLINEを送ろうとしている最中、ベランダの窓がコツンと鳴った。直くんが来た。
間に合わなかった。
音が立たないように窓を開けたら、直くんが入ってくる。
「俺のLINE見てなかったの」
「うん、ちょっと忙しかったから」
「ふうん……」
「それより、お母さん帰ってきてるから、今日はちょっと……」
「お前、誰か好きなやつできた?」
予想もしていない質問に驚いて目が合わせられない。先生の顔が浮かんでも、この感情が純粋な恋心とはとても思えない。
無言でいると直くんの手のひらが私の頬に触れて、顔が近づいてきた。唇と唇が生暖かく当たる。
「あ、な、なおく……ん」
キスの最中に話そうとしたのがまずかったのかその隙に直くんの舌が深く滑り込んできた。
乾いた唇が触れ合うことはあったけど、こんなにねっとりとしたキスははじめてで、息をつく暇もない。
私の口の中全部を奪っていくようなキスに、立っていられなくなった。
「……あっ」
「……大丈夫か」
膝がかくんと崩れ、直くんに支えられてベッドに座らされる。
「今日は帰る。次はお前が一人の時に来る」
朦朧とした頭でこくんと頷くと直くんはもう一度私の唇にキスをして帰っていった。
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