11 / 47
目が覚めるとそこは…
しおりを挟む
意識が浮上した理緒が最初に感じたのは、明るさだった。自分の部屋は日当たりが悪く、昼間でも薄暗かったはずなのに…と思いながら目を開けると、豪奢な装飾が施された天井が目に入った。ついでに天井から下がる白いレース風の薄いカーテンが見えて、自分がどこにいるのかわからなかった。
(…え…どこ…?)
まだぼんやりする頭で考えるも、視界に入る景色は記憶にないものだった。寝たまま周りを見渡すと、天井に劣らぬ豪華な壁と、大きめの窓が目に入った。窓から見える景色は青い空で、まだ日が高い時間である事が伺えた。
身体を起こそうとしたが、思った以上に身体が重く、また酷く怠く感じてしまい、理緒は再びベッドに沈み込んだ。クッション性がすごぶるよくて、本当にどうしてここにいるのかがわからない。部屋の立派な様子からして、貴族が使うような部屋にも見える。この前泊まった辺境伯の屋敷もこんな感じだったように思った。
(何してたっけ…)
身体が動かなかった理緒は、これまでの記憶を引っ張り出した。確か、依頼のために魔の森に入って…その時、魔蟲に刺された事を思い出すと、一気にその後の事も脳裏に蘇った。確か、部屋に帰ってから辛くてベッドに横になって…それからの記憶がなかった。
あの後、確かフィオナさんが食べる物を届けてくれると言っていたから、それでここに運んでくれたのだろうか…と思うも、こんな貴族が住むような場所に連れてくる理由が思い浮かばなかった。こんな立派過ぎる部屋、底辺の冒険者が利用するような施設ではないだろう。
ぼうっとしていると、ドアをノックする音がして、程なくして扉が開き、水差しなどを乗せたトレイを持った女性が入ってきた。見覚えがあるその女性は、確か…
「リオ様!目が…」
理緒がぼうっとその女性を見ているのに気が付いたメイドは、トレイを放り投げんばかりにテーブルに置くと、理緒に駆け寄ってきた。
「ご気分は…いかがですか?今、マシュー様をお呼びしますね!」
そういうとメイドは、理緒の返事も聞かずにあっという間に部屋から出て行った。その様を理緒はただ呆然と眺めていた。マシュー様という事は、ここはルイのいた屋敷だったのか…だがどうしてここにいるのかがわからなかった。
「リオ様!」
程なくして、マシューが先ほどのメイドを連れて慌ただしくやってきた。
「よかった!お目覚めになられたのですね…!」
「…マ、シ…さん…」
感激しているように見えるマシューに声をかけようとした理緒だったが、出てきた声は思った以上に音にならなかった。喉に全く潤いがないのを感じると、マシューが慌ててお水を…と言って理緒の背に手を添えて抱え起こすと、水が入ったコップを手渡してきた。コップが酷く重く感じたが、理緒はそれを飲み干した。思った以上に喉が渇いていたらしいと、飲んでから実感した。
「それで…どういう事になってるんですか?」
水を飲んでようやく喉が仕事を始めた理緒は、自分がここにいる理由をマシューに尋ねた。マシューは、リオ様が戸惑うのも仕方ありませんね、と言ってこれまでの事を話してくれた。
先日、屋敷へ来るようにとの辺境伯の依頼を、理緒は一蹴した。屋敷に戻ったマシューは、理緒が断った理由と、理緒のいう事も一理あると主に告げた。また、辺境伯の理緒への態度の悪さを指摘し、初対面で不審者呼ばわりした事を辺境伯が謝らない限り理緒は来ないだろうとも。マシューから見た理緒は、平民なのに言葉使いも真っ当で礼儀正しく、ルイに対しても甘やかすことなくしっかりと向き合っていて、好印象を持っていたのだ。マシューはルイの事が心配でもあったため、辺境伯が理緒に謝り、正式に子守として雇ってはどうかと進言したのだ。
その時辺境伯は苦虫を噛み潰したような表情をしていたが、思うところがあったのだろう。数日経つとマシューに、理緒の部屋に案内するようにと言ってきたため、マシューは理緒の部屋へと辺境伯を連れて行った。
理緒の部屋に着くと、フィオナが必死に理緒に呼び掛けていて、ただ事ではないと察した。二人が来る直前、フィオナが食べ物を届けに来たのだが、理緒が高熱を出して呼びかけにも反応しなかったからだった。フィオナから事情を聴いた辺境伯は、そういう事なら屋敷で治療するようにとマシューに命じ、フィオナにその旨を伝えるとそのまま馬車で屋敷に連れ帰った。
「…それは…大変お手数をおかけして…」
まさかそういう事になっていたとは思いもしなかった理緒は、恐れ多くて嫌な汗が背を流れるを感じた。随分手厚く看病されたようだが、これは後から請求されるのだろうか…別にあの魔蟲の毒は大した事がないと聞いていたのだが…
「いえ、リオ様はルイ様の恩人ですので、これくらい当然でございます。でも、よろしゅうございました。もう十日もお目覚めにならなかったのですから…」
「と、十日…!」
今度はリオが絶句する番だった。
(…え…どこ…?)
まだぼんやりする頭で考えるも、視界に入る景色は記憶にないものだった。寝たまま周りを見渡すと、天井に劣らぬ豪華な壁と、大きめの窓が目に入った。窓から見える景色は青い空で、まだ日が高い時間である事が伺えた。
身体を起こそうとしたが、思った以上に身体が重く、また酷く怠く感じてしまい、理緒は再びベッドに沈み込んだ。クッション性がすごぶるよくて、本当にどうしてここにいるのかがわからない。部屋の立派な様子からして、貴族が使うような部屋にも見える。この前泊まった辺境伯の屋敷もこんな感じだったように思った。
(何してたっけ…)
身体が動かなかった理緒は、これまでの記憶を引っ張り出した。確か、依頼のために魔の森に入って…その時、魔蟲に刺された事を思い出すと、一気にその後の事も脳裏に蘇った。確か、部屋に帰ってから辛くてベッドに横になって…それからの記憶がなかった。
あの後、確かフィオナさんが食べる物を届けてくれると言っていたから、それでここに運んでくれたのだろうか…と思うも、こんな貴族が住むような場所に連れてくる理由が思い浮かばなかった。こんな立派過ぎる部屋、底辺の冒険者が利用するような施設ではないだろう。
ぼうっとしていると、ドアをノックする音がして、程なくして扉が開き、水差しなどを乗せたトレイを持った女性が入ってきた。見覚えがあるその女性は、確か…
「リオ様!目が…」
理緒がぼうっとその女性を見ているのに気が付いたメイドは、トレイを放り投げんばかりにテーブルに置くと、理緒に駆け寄ってきた。
「ご気分は…いかがですか?今、マシュー様をお呼びしますね!」
そういうとメイドは、理緒の返事も聞かずにあっという間に部屋から出て行った。その様を理緒はただ呆然と眺めていた。マシュー様という事は、ここはルイのいた屋敷だったのか…だがどうしてここにいるのかがわからなかった。
「リオ様!」
程なくして、マシューが先ほどのメイドを連れて慌ただしくやってきた。
「よかった!お目覚めになられたのですね…!」
「…マ、シ…さん…」
感激しているように見えるマシューに声をかけようとした理緒だったが、出てきた声は思った以上に音にならなかった。喉に全く潤いがないのを感じると、マシューが慌ててお水を…と言って理緒の背に手を添えて抱え起こすと、水が入ったコップを手渡してきた。コップが酷く重く感じたが、理緒はそれを飲み干した。思った以上に喉が渇いていたらしいと、飲んでから実感した。
「それで…どういう事になってるんですか?」
水を飲んでようやく喉が仕事を始めた理緒は、自分がここにいる理由をマシューに尋ねた。マシューは、リオ様が戸惑うのも仕方ありませんね、と言ってこれまでの事を話してくれた。
先日、屋敷へ来るようにとの辺境伯の依頼を、理緒は一蹴した。屋敷に戻ったマシューは、理緒が断った理由と、理緒のいう事も一理あると主に告げた。また、辺境伯の理緒への態度の悪さを指摘し、初対面で不審者呼ばわりした事を辺境伯が謝らない限り理緒は来ないだろうとも。マシューから見た理緒は、平民なのに言葉使いも真っ当で礼儀正しく、ルイに対しても甘やかすことなくしっかりと向き合っていて、好印象を持っていたのだ。マシューはルイの事が心配でもあったため、辺境伯が理緒に謝り、正式に子守として雇ってはどうかと進言したのだ。
その時辺境伯は苦虫を噛み潰したような表情をしていたが、思うところがあったのだろう。数日経つとマシューに、理緒の部屋に案内するようにと言ってきたため、マシューは理緒の部屋へと辺境伯を連れて行った。
理緒の部屋に着くと、フィオナが必死に理緒に呼び掛けていて、ただ事ではないと察した。二人が来る直前、フィオナが食べ物を届けに来たのだが、理緒が高熱を出して呼びかけにも反応しなかったからだった。フィオナから事情を聴いた辺境伯は、そういう事なら屋敷で治療するようにとマシューに命じ、フィオナにその旨を伝えるとそのまま馬車で屋敷に連れ帰った。
「…それは…大変お手数をおかけして…」
まさかそういう事になっていたとは思いもしなかった理緒は、恐れ多くて嫌な汗が背を流れるを感じた。随分手厚く看病されたようだが、これは後から請求されるのだろうか…別にあの魔蟲の毒は大した事がないと聞いていたのだが…
「いえ、リオ様はルイ様の恩人ですので、これくらい当然でございます。でも、よろしゅうございました。もう十日もお目覚めにならなかったのですから…」
「と、十日…!」
今度はリオが絶句する番だった。
3
あなたにおすすめの小説
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
見捨てられた(無自覚な)王女は、溺愛には気付かない
みん
恋愛
精霊に護られた国ルテリアル。精霊の加護のお陰で豊かで平和な国ではあったが、近年ではその精霊の加護も薄れていき、他国から侵略されそうになる。戦いを知らない国王は、スネフリング帝国に助けを求めるが、その見返りに要求されたのは──。
精霊に護られた国の王女として生まれたにも関わらず、魔力を持って生まれなかった事で、母である王妃以外から冷遇されているカミリア第二王女。このカミリアが、人質同然にスネフリング帝国に行く事になり─。
❋独自設定有り。
❋誤字脱字には気を付けていますが、あると思います。すみません。気付き次第修正していきます。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
妻が通う邸の中に
月山 歩
恋愛
最近妻の様子がおかしい。昼間一人で出掛けているようだ。二人に子供はできなかったけれども、妻と愛し合っていると思っている。僕は妻を誰にも奪われたくない。だから僕は、妻の向かう先を調べることににした。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる