子守を引き受けただけなのに、その保護者から不審者扱いされています

四葉るり猫

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目が覚めるとそこは…

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 意識が浮上した理緒が最初に感じたのは、明るさだった。自分の部屋は日当たりが悪く、昼間でも薄暗かったはずなのに…と思いながら目を開けると、豪奢な装飾が施された天井が目に入った。ついでに天井から下がる白いレース風の薄いカーテンが見えて、自分がどこにいるのかわからなかった。

(…え…どこ…?)

 まだぼんやりする頭で考えるも、視界に入る景色は記憶にないものだった。寝たまま周りを見渡すと、天井に劣らぬ豪華な壁と、大きめの窓が目に入った。窓から見える景色は青い空で、まだ日が高い時間である事が伺えた。
 身体を起こそうとしたが、思った以上に身体が重く、また酷く怠く感じてしまい、理緒は再びベッドに沈み込んだ。クッション性がすごぶるよくて、本当にどうしてここにいるのかがわからない。部屋の立派な様子からして、貴族が使うような部屋にも見える。この前泊まった辺境伯の屋敷もこんな感じだったように思った。

(何してたっけ…)

 身体が動かなかった理緒は、これまでの記憶を引っ張り出した。確か、依頼のために魔の森に入って…その時、魔蟲に刺された事を思い出すと、一気にその後の事も脳裏に蘇った。確か、部屋に帰ってから辛くてベッドに横になって…それからの記憶がなかった。
 あの後、確かフィオナさんが食べる物を届けてくれると言っていたから、それでここに運んでくれたのだろうか…と思うも、こんな貴族が住むような場所に連れてくる理由が思い浮かばなかった。こんな立派過ぎる部屋、底辺の冒険者が利用するような施設ではないだろう。

 ぼうっとしていると、ドアをノックする音がして、程なくして扉が開き、水差しなどを乗せたトレイを持った女性が入ってきた。見覚えがあるその女性は、確か…

「リオ様!目が…」

 理緒がぼうっとその女性を見ているのに気が付いたメイドは、トレイを放り投げんばかりにテーブルに置くと、理緒に駆け寄ってきた。

「ご気分は…いかがですか?今、マシュー様をお呼びしますね!」

 そういうとメイドは、理緒の返事も聞かずにあっという間に部屋から出て行った。その様を理緒はただ呆然と眺めていた。マシュー様という事は、ここはルイのいた屋敷だったのか…だがどうしてここにいるのかがわからなかった。

「リオ様!」

 程なくして、マシューが先ほどのメイドを連れて慌ただしくやってきた。

「よかった!お目覚めになられたのですね…!」
「…マ、シ…さん…」

 感激しているように見えるマシューに声をかけようとした理緒だったが、出てきた声は思った以上に音にならなかった。喉に全く潤いがないのを感じると、マシューが慌ててお水を…と言って理緒の背に手を添えて抱え起こすと、水が入ったコップを手渡してきた。コップが酷く重く感じたが、理緒はそれを飲み干した。思った以上に喉が渇いていたらしいと、飲んでから実感した。



「それで…どういう事になってるんですか?」

 水を飲んでようやく喉が仕事を始めた理緒は、自分がここにいる理由をマシューに尋ねた。マシューは、リオ様が戸惑うのも仕方ありませんね、と言ってこれまでの事を話してくれた。

 先日、屋敷へ来るようにとの辺境伯の依頼を、理緒は一蹴した。屋敷に戻ったマシューは、理緒が断った理由と、理緒のいう事も一理あると主に告げた。また、辺境伯の理緒への態度の悪さを指摘し、初対面で不審者呼ばわりした事を辺境伯が謝らない限り理緒は来ないだろうとも。マシューから見た理緒は、平民なのに言葉使いも真っ当で礼儀正しく、ルイに対しても甘やかすことなくしっかりと向き合っていて、好印象を持っていたのだ。マシューはルイの事が心配でもあったため、辺境伯が理緒に謝り、正式に子守として雇ってはどうかと進言したのだ。

 その時辺境伯は苦虫を噛み潰したような表情をしていたが、思うところがあったのだろう。数日経つとマシューに、理緒の部屋に案内するようにと言ってきたため、マシューは理緒の部屋へと辺境伯を連れて行った。
 理緒の部屋に着くと、フィオナが必死に理緒に呼び掛けていて、ただ事ではないと察した。二人が来る直前、フィオナが食べ物を届けに来たのだが、理緒が高熱を出して呼びかけにも反応しなかったからだった。フィオナから事情を聴いた辺境伯は、そういう事なら屋敷で治療するようにとマシューに命じ、フィオナにその旨を伝えるとそのまま馬車で屋敷に連れ帰った。

「…それは…大変お手数をおかけして…」

 まさかそういう事になっていたとは思いもしなかった理緒は、恐れ多くて嫌な汗が背を流れるを感じた。随分手厚く看病されたようだが、これは後から請求されるのだろうか…別にあの魔蟲の毒は大した事がないと聞いていたのだが…

「いえ、リオ様はルイ様の恩人ですので、これくらい当然でございます。でも、よろしゅうございました。もう十日もお目覚めにならなかったのですから…」
「と、十日…!」

 今度はリオが絶句する番だった。
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