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逃げる算段が付きません…
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その週の金曜日の夜、美緒は居酒屋にいた。一緒にいたのは小林ではなく、大学時代に同じバイト仲間だった二人だ。一人は大学も同じで一番仲がよかった島崎柚希で、もう一人は別大学だが趣味が合って仲良くしていた大森さゆ美だった。二人とも同じ年で大学進学のための上京組で、慣れない一人暮らしに右往左往していたという共通点があって、あっという間に仲良しになった。今日は定期的な飲み会で、気心の知れた仲間との飲みは美緒の楽しみの一つでもあった。
今日美緒が楽しみにしていたのには、飲む以外に別の目的があった。それは目下悩みの種になっている小林の事で、恋愛経験が美緒よりも格段に多い二人は、相談にうってつけだと思っていたのだ。社内で一番仲がいいのは朱里だが、朱里は小林側の人間なので現時点では相談相手にはなり得ない。同じ大学だった柚希は小林とは面識がある一方、さゆ美は別大学で接触はなかったため面識はない。それぞれ違う視点からの意見が聞けるだろうと美緒は期待していた。
「それは…逃げられないんじゃない?」
「ストーカーより面倒かもね」
美緒がこれまでの経緯を話した後、二人が発したのはそれだった。そんな答えは聞きたくなかった…と思った美緒だったが、二人はそこまでされたなら逃げるのは至難の業だろうと重ねて言うだけだった。
「しっかし…あの小林がねぇ…」
柚希はしみじみと、普段は眼鏡に隠れている形のいい目で美緒を見つめてそう言った。柚希は大学時代に美緒が小林を心底嫌っていたのは知っていたし、向こうもいい感情を持っていなかったのは感じていただけに、この展開は意外以外の何物でもなかった。
元より柚希は、美緒が小林の会社の入社試験を受けると聞いた時には、本気で心配したのだ。だが、小林が社長の息子なのは有名な話だったし、美緒はその会社が小林の実家だと知っている上で受けるのだと思い、そこまでその会社を希望するのなら…と見守る事にしたのだ。まさか知らずに受けるなんて思いも寄らなかった。
ちゃっかり者でありながら変なところで抜けている美緒だったが、まさか五年以上も経ってからこんな展開になっていようとは…柚希はやはりあの時、はっきり忠告すべきだったかと思ったが、直ぐにその考えは打ち消した。今の方がよほど面白い事になっているからだ。
「ふ~ん、相手の男って、もしかして営業の小林…巧さん?」
「はぁ?さゆ美、知ってるの?」
バイトは同じだが大学は別だったさゆ美から小林の名が出た事に、美緒も柚希も驚きを隠せなかった。相変わらず童顔で高校生と言われてもおかしくない可愛らしいさゆ美は、秘書課所属で受付もやっていると聞いていたが、営業と言っているところをみると会った事があるのだろうか…
「だって、うちの担当でしょ?」
「…あれ?そうだっけ?」
「やだ、美緒ったら。もしかして知らなかった?」
「え…あ、うん…異動したの春だし…」
「最近は来てないからね、小林さん。お陰で社内の女子が静かで助かってるけど」
小林はさゆ美の会社の担当だった。美緒が知らなかったのは、昨秋に大きな商談がまとまったせいで最近は大きな案件がなく、美緒が資料を作る機会がなかったためだった。
「あの小林さんかぁ…確かにイケメンだよね。爽やか正統派の王子様って感じ?うちの会社でも凄く人気よ」
「そ、そう…」
「一部の女子社員の間じゃ、ファンクラブも出来てたし」
「はぁ?」
社会人にもなって取引先の営業のファンクラブって何だよ…これが世間の認識なのか…と美緒は頭が痛くなりそうだった。いや、うちの会社にも親衛隊があると最近知ったところだが…そんな事していないで仕事しろよ…と思う美緒だった。
「だって、見た目はその辺のアイドルにも負けないじゃない。しかも御曹司ときたら、先の見えないアイドルなんかよりずっと好条件だし」
「それは、まぁ…」
「私も一度受付で対応したけど、偉ぶったところがなくて丁寧で凄く紳士だったわよ。新卒の男子相手にも丁寧な態度だし、営業部長なんか小林さんをお手本にしろ!なんて言っているらしいわ。上層部も仕事が的確で優秀だってすごぶる評判いいし、専務がうちの娘を…って言ってたって聞くし…」
「うわ…大学時代と別人じゃない?」
それ誰の話?と言いたくなる内容に、柚希も驚きを隠せなかった。学生時代の姿からは想像も出来ないし、被る猫の数が半端なくないか…ある意味早川といい勝負かもしれない…そんな事を思った美緒だったが、さゆ美の話によると小林は他の会社でも評判がよく、兄とセットで美形兄弟として有名なのだという。兄は結婚してしまったため、最近は弟の巧への縁談攻撃が過熱しているが、どんなにいい条件の相手でも断られているとも。
「専務が娘との縁談を断られたって嘆いていたけど…美緒が原因だったなんてねぇ…面白い偶然だわ」
「いや、全然面白くないから…」
面白いおもちゃを見つけた様な楽し気な表情を浮かべたさゆ美に、美緒は顔を引きつらせた。当事者にしてみれば全く笑えないし、縁談も別会社の話でよかった…と美緒は胸を撫でおろした。同じ会社だったら、別の意味で頭が痛くなる案件だろう。
「でも…好かれる理由が理解不能だし…嫌われてたからって、ドМなの?マゾなの?私、特殊な趣味の人とは相容れないんだけど…」
「あの小林がドМはないと思うし、どっちかって言うと逆に見えるけど…でもまぁ、小林の気持ちも分からなくなはいよ?」
「はぁ?」
「だって美緒ってば、相手の見た目とか家の事とか気にしないでしょ」
現に私がそうだしね、と言って柚希は微笑んだ。そう、柚希は実は父親が議員で、柚希自身も才女と評判なため、いずれは後を継ぐのではないかと言われているのだ。本人にはその気は全くないが、そんな柚希に群がる人は多く、いつもうんざりしていたのだ。美緒にしてみれば親が議員で偉くても、その子供が偉いわけじゃないだろうと思うのだが、世間ではそう考えるのは少数派だ。そんな美緒を柚希はとても気に入っているし、その両親からも好意的なのだが、美緒にその自覚はなかった。
「そうね、美緒は媚びたりなんてしないものね」
「やっぱりハイエナに囲まれてる側からすると、すっごく嬉しいんだよね」
「ハイエナって…」
「その通りでしょ?家の力目当てに集まってくるんだから。私はむしろ、小林って見る目あるって褒めてやりたいけどね」
「ええ?」
そんな事で褒めてやる必要なんかないだろうと思う美緒だったが、柚希は小林の理由が逆に好意的に映ったらしい。
「小林、今は女遊びしてないんでしょ。だったら超優良物件じゃない。むしろどこが不満?」
「いや、不満って言うか…」
「顔は美緒の好みど真ん中でしょ?」
「う、うん…そこは、確かに…」
「その上御曹司で社会的な地位も金もある」
「…まぁ…」
「今は女遊びしていなくて、美緒にベタ惚れなんでしょ?」
「…」
柚希の指摘に、美緒は何も反論出来なかった。ベタ惚れなんて可愛らしいものじゃないが、非常にマメで甲斐甲斐しいのは確かだし、それ以外もその通りだという事は美緒にも自覚があった。一つだけでも女性なら喜ぶだろう長所を、これでもかというほどに持っているのだ。
「それに家族も賛成しているんでしょ?だったら流されちゃえば?そうなれば一生安泰だし、お母さんにも楽させてあげられるでしょ?
「それは…」
母親の事を持ち出されて、美緒は一層何も言えなかった。美緒にとって家族は母親一人で、何よりも大切な存在だからだ。大学進学後は離れて暮らしているが、確かに美緒がちゃんとした相手と結婚すれば母親は安心するだろうし、老後の不安も減るだろう。父親のせいもあって結婚なんて絶対しない!と言っている美緒を母親はずっと心配していたし、親として罪悪感を持っている事は薄々気付いていた。
「否定ばっかりしないで、前向きに考えてみたら?付き合ってみなきゃわからない事もあるわよ。それに…憎からず思ってるんでしょ?小林の事」
「な!何言って…!」
「もし本当に嫌だったら、美緒の性格なら悩まないでしょうが。嫌の一言で終わり。問答無用、容赦なし」
「そうね、美緒はそういうとこ、ハッキリしているもんね」
「う…」
「迷ってるって事は、いいなって思うところもあるってことでしょ?お父さんの事があったし、あいつも女遊びが酷かったから、その記憶が未だに強く残ってるんだろうけど…」
「でも、昔の事に縛られてるばかりじゃ、もったいないわよ?」
二人の指摘は非常に的を得ていて、美緒は否定する余地がなかった。確かに美緒が本当に嫌だったら、寿司屋にも行かなかったし、その後だって完全拒否しただろう。それでもしつこく付きまとってきたら、上司や人事に掛け合うなり警察に相談するなりしたはずだ。自分がやられっ放しの性格でない事は、美緒が一番わかっていた。
「展開が早いのも不安なんだろうけど…上手くいく時ってそんなもんよ。とんとん拍子で話が進むの。そんな時は逆らっても無駄。流れに乗るのが一番よ」
柚希の言葉は妙に美緒の胸にしっくりと収まった。ただ、美緒は逃げる算段の助言が欲しくて相談しただけに、そちらの方に何の進展もなかった事が残念で、気が晴れる事にはならなかった。それに、流されたら二度と戻ってこれない気がするのだ。朱里の言葉を半ば疑いながらも、小林の言動からは気が変わる事は永遠に来ないようにも見えたからだ。
確かに流されてみるのもありなのかもしれない…と思う一方で美緒は、本気であろう小林に対して自分がそれに見合うだけの感情を殆ど持っていない事も自覚していた。中途半端な気持ちでは相手に悪いとの罪悪感もあって、このまま流される事にも抵抗があったのだ。
今日美緒が楽しみにしていたのには、飲む以外に別の目的があった。それは目下悩みの種になっている小林の事で、恋愛経験が美緒よりも格段に多い二人は、相談にうってつけだと思っていたのだ。社内で一番仲がいいのは朱里だが、朱里は小林側の人間なので現時点では相談相手にはなり得ない。同じ大学だった柚希は小林とは面識がある一方、さゆ美は別大学で接触はなかったため面識はない。それぞれ違う視点からの意見が聞けるだろうと美緒は期待していた。
「それは…逃げられないんじゃない?」
「ストーカーより面倒かもね」
美緒がこれまでの経緯を話した後、二人が発したのはそれだった。そんな答えは聞きたくなかった…と思った美緒だったが、二人はそこまでされたなら逃げるのは至難の業だろうと重ねて言うだけだった。
「しっかし…あの小林がねぇ…」
柚希はしみじみと、普段は眼鏡に隠れている形のいい目で美緒を見つめてそう言った。柚希は大学時代に美緒が小林を心底嫌っていたのは知っていたし、向こうもいい感情を持っていなかったのは感じていただけに、この展開は意外以外の何物でもなかった。
元より柚希は、美緒が小林の会社の入社試験を受けると聞いた時には、本気で心配したのだ。だが、小林が社長の息子なのは有名な話だったし、美緒はその会社が小林の実家だと知っている上で受けるのだと思い、そこまでその会社を希望するのなら…と見守る事にしたのだ。まさか知らずに受けるなんて思いも寄らなかった。
ちゃっかり者でありながら変なところで抜けている美緒だったが、まさか五年以上も経ってからこんな展開になっていようとは…柚希はやはりあの時、はっきり忠告すべきだったかと思ったが、直ぐにその考えは打ち消した。今の方がよほど面白い事になっているからだ。
「ふ~ん、相手の男って、もしかして営業の小林…巧さん?」
「はぁ?さゆ美、知ってるの?」
バイトは同じだが大学は別だったさゆ美から小林の名が出た事に、美緒も柚希も驚きを隠せなかった。相変わらず童顔で高校生と言われてもおかしくない可愛らしいさゆ美は、秘書課所属で受付もやっていると聞いていたが、営業と言っているところをみると会った事があるのだろうか…
「だって、うちの担当でしょ?」
「…あれ?そうだっけ?」
「やだ、美緒ったら。もしかして知らなかった?」
「え…あ、うん…異動したの春だし…」
「最近は来てないからね、小林さん。お陰で社内の女子が静かで助かってるけど」
小林はさゆ美の会社の担当だった。美緒が知らなかったのは、昨秋に大きな商談がまとまったせいで最近は大きな案件がなく、美緒が資料を作る機会がなかったためだった。
「あの小林さんかぁ…確かにイケメンだよね。爽やか正統派の王子様って感じ?うちの会社でも凄く人気よ」
「そ、そう…」
「一部の女子社員の間じゃ、ファンクラブも出来てたし」
「はぁ?」
社会人にもなって取引先の営業のファンクラブって何だよ…これが世間の認識なのか…と美緒は頭が痛くなりそうだった。いや、うちの会社にも親衛隊があると最近知ったところだが…そんな事していないで仕事しろよ…と思う美緒だった。
「だって、見た目はその辺のアイドルにも負けないじゃない。しかも御曹司ときたら、先の見えないアイドルなんかよりずっと好条件だし」
「それは、まぁ…」
「私も一度受付で対応したけど、偉ぶったところがなくて丁寧で凄く紳士だったわよ。新卒の男子相手にも丁寧な態度だし、営業部長なんか小林さんをお手本にしろ!なんて言っているらしいわ。上層部も仕事が的確で優秀だってすごぶる評判いいし、専務がうちの娘を…って言ってたって聞くし…」
「うわ…大学時代と別人じゃない?」
それ誰の話?と言いたくなる内容に、柚希も驚きを隠せなかった。学生時代の姿からは想像も出来ないし、被る猫の数が半端なくないか…ある意味早川といい勝負かもしれない…そんな事を思った美緒だったが、さゆ美の話によると小林は他の会社でも評判がよく、兄とセットで美形兄弟として有名なのだという。兄は結婚してしまったため、最近は弟の巧への縁談攻撃が過熱しているが、どんなにいい条件の相手でも断られているとも。
「専務が娘との縁談を断られたって嘆いていたけど…美緒が原因だったなんてねぇ…面白い偶然だわ」
「いや、全然面白くないから…」
面白いおもちゃを見つけた様な楽し気な表情を浮かべたさゆ美に、美緒は顔を引きつらせた。当事者にしてみれば全く笑えないし、縁談も別会社の話でよかった…と美緒は胸を撫でおろした。同じ会社だったら、別の意味で頭が痛くなる案件だろう。
「でも…好かれる理由が理解不能だし…嫌われてたからって、ドМなの?マゾなの?私、特殊な趣味の人とは相容れないんだけど…」
「あの小林がドМはないと思うし、どっちかって言うと逆に見えるけど…でもまぁ、小林の気持ちも分からなくなはいよ?」
「はぁ?」
「だって美緒ってば、相手の見た目とか家の事とか気にしないでしょ」
現に私がそうだしね、と言って柚希は微笑んだ。そう、柚希は実は父親が議員で、柚希自身も才女と評判なため、いずれは後を継ぐのではないかと言われているのだ。本人にはその気は全くないが、そんな柚希に群がる人は多く、いつもうんざりしていたのだ。美緒にしてみれば親が議員で偉くても、その子供が偉いわけじゃないだろうと思うのだが、世間ではそう考えるのは少数派だ。そんな美緒を柚希はとても気に入っているし、その両親からも好意的なのだが、美緒にその自覚はなかった。
「そうね、美緒は媚びたりなんてしないものね」
「やっぱりハイエナに囲まれてる側からすると、すっごく嬉しいんだよね」
「ハイエナって…」
「その通りでしょ?家の力目当てに集まってくるんだから。私はむしろ、小林って見る目あるって褒めてやりたいけどね」
「ええ?」
そんな事で褒めてやる必要なんかないだろうと思う美緒だったが、柚希は小林の理由が逆に好意的に映ったらしい。
「小林、今は女遊びしてないんでしょ。だったら超優良物件じゃない。むしろどこが不満?」
「いや、不満って言うか…」
「顔は美緒の好みど真ん中でしょ?」
「う、うん…そこは、確かに…」
「その上御曹司で社会的な地位も金もある」
「…まぁ…」
「今は女遊びしていなくて、美緒にベタ惚れなんでしょ?」
「…」
柚希の指摘に、美緒は何も反論出来なかった。ベタ惚れなんて可愛らしいものじゃないが、非常にマメで甲斐甲斐しいのは確かだし、それ以外もその通りだという事は美緒にも自覚があった。一つだけでも女性なら喜ぶだろう長所を、これでもかというほどに持っているのだ。
「それに家族も賛成しているんでしょ?だったら流されちゃえば?そうなれば一生安泰だし、お母さんにも楽させてあげられるでしょ?
「それは…」
母親の事を持ち出されて、美緒は一層何も言えなかった。美緒にとって家族は母親一人で、何よりも大切な存在だからだ。大学進学後は離れて暮らしているが、確かに美緒がちゃんとした相手と結婚すれば母親は安心するだろうし、老後の不安も減るだろう。父親のせいもあって結婚なんて絶対しない!と言っている美緒を母親はずっと心配していたし、親として罪悪感を持っている事は薄々気付いていた。
「否定ばっかりしないで、前向きに考えてみたら?付き合ってみなきゃわからない事もあるわよ。それに…憎からず思ってるんでしょ?小林の事」
「な!何言って…!」
「もし本当に嫌だったら、美緒の性格なら悩まないでしょうが。嫌の一言で終わり。問答無用、容赦なし」
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「う…」
「迷ってるって事は、いいなって思うところもあるってことでしょ?お父さんの事があったし、あいつも女遊びが酷かったから、その記憶が未だに強く残ってるんだろうけど…」
「でも、昔の事に縛られてるばかりじゃ、もったいないわよ?」
二人の指摘は非常に的を得ていて、美緒は否定する余地がなかった。確かに美緒が本当に嫌だったら、寿司屋にも行かなかったし、その後だって完全拒否しただろう。それでもしつこく付きまとってきたら、上司や人事に掛け合うなり警察に相談するなりしたはずだ。自分がやられっ放しの性格でない事は、美緒が一番わかっていた。
「展開が早いのも不安なんだろうけど…上手くいく時ってそんなもんよ。とんとん拍子で話が進むの。そんな時は逆らっても無駄。流れに乗るのが一番よ」
柚希の言葉は妙に美緒の胸にしっくりと収まった。ただ、美緒は逃げる算段の助言が欲しくて相談しただけに、そちらの方に何の進展もなかった事が残念で、気が晴れる事にはならなかった。それに、流されたら二度と戻ってこれない気がするのだ。朱里の言葉を半ば疑いながらも、小林の言動からは気が変わる事は永遠に来ないようにも見えたからだ。
確かに流されてみるのもありなのかもしれない…と思う一方で美緒は、本気であろう小林に対して自分がそれに見合うだけの感情を殆ど持っていない事も自覚していた。中途半端な気持ちでは相手に悪いとの罪悪感もあって、このまま流される事にも抵抗があったのだ。
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