49 / 49
塩対応にめげなかった男の独白~4
しおりを挟む
結婚式は、以前家族で行ったリゾート地でやる事にした。何度も行ってるから勝手もわかってるし、景色も気候もホテルもいい。親父や兄貴に言ったら、あそこならいいだろうと言われた。実は兄貴も新婚旅行の候補に考えていた場所だからな。
最初は秋にしようかとも言っていたが、朱里がやっぱり花嫁はジューンブライドでしょ、と言うから六月にした。そうだな、日本じゃ梅雨だけど、海外に行けば問題ない。それに…秋まで待てないし。
肝心の美緒に聞いたら、いつでもいい、出来れば料金の安い閑散期で…なんて超現実的な答えが返ってきて、ああ、こいつらしいなと思った。お義母さんの費用もうちが出すと言っているから、それに遠慮しているんだ。そんな慎ましい金銭感覚も可愛い。もう、何でも買ってやりたくなる…まぁ、それすると怒るのは目に見えているからやらないけど…
「まぁ…美緒、綺麗だわ…」
「本当、よく似合ってるわ、可愛い!」
「…そ、そうかな…」
「ああ、綺麗だ、美緒…」
真っ白なウエディングドレスを纏った美緒は…とても綺麗だった。いやもう、綺麗なんて一言では言い表せない…天使?それとも妖精?ああ、それもなんか違う気がする…もうずっとこの姿でいて欲しい…マジで。
華奢で可愛い美緒には、やっぱりプリンセス風のドレスが最高に似合っていた。もうアラサーだから…なんて言っていたけど、レースやフリルをあしらい、長いトレーンのドレスに身を包む美緒は、俺にとっては唯一無二の永遠のお姫様だ。ああ、本当に可愛い…マジであのまま押し倒して貪…いや、何でもない。
あまり豪華だとドレスに着られている感じになるから…と無難でシンプルなデザインに向かう美緒だったが、知り合いのデザイナーのお陰でレースやフリルをしっかり使った可愛いデザインに仕上がった。うん、すげー綺麗だし可愛いし可憐だ。デザイナー神。仕事の関係もあって国内で形だけの披露宴はする予定だけど、その時のドレスも楽しみだ。
式は俺の両親と兄夫婦、朱里夫婦、美緒のお義母さんの少人数で、始終アットホームな感じだった。知らない人間に不安を感じる美緒には、この方法が一番だったと思う。お陰で式の間も表情をこわばらせる事はなく、はにかみながらも始終笑顔だった。ああ、後半は泣き笑いだったけどな。
最初はお化粧が剥げるから泣くわけない、なんて言っていた美緒だったが、ドレスに着替えてお義母さんが一言二言声をかけたら、それだけで目がうるうるになっていた。…うん、弱いんだよな、あいつ、こういうの…
式の最中も懸命にこらえていたけど、式が終わってみんなにお祝いの言葉をかけられたら、涙腺崩壊してそこからは暫く泣きっぱなしだった。事前に朱里がメイクさんに、泣いても大丈夫なメイクでとお願いしてくれたんだが、そうしておいてよかった。泣きながら笑う美緒は本当に可愛かったし、気楽な式にしてよかったと心から思った。
ただ…どうしても早川にやられた傷はまだ消えていなくて、そこだけは痛々しかった。傷が目立たないよう、デザイナーがグローブ付きのデザインにしてくれたからよかったけど、あれは俺にとっては一生の教訓だ。永遠の愛だけじゃなく、何があっても美緒を守り切ると俺は誓った。もう二度とあんな思いも怪我もさせたくない。
結婚したからと言ってハイエナが完全にいなくなるわけじゃないのは、兄貴たちを見ていても明らかだ。未だに兄貴に言い寄る女は絶えないし、春花さんへの風当たりも強い。入籍と式を済ませても、俺の戦いはまだまだ始まったばかりなのだ。
両親とお義母さん、兄貴夫婦はそれぞれ観光して帰っていった。母さんとお義母さんは知らない間に仲良くなってて、親父がしょんぼりしているのが笑えた。
朱里と大石さんは、せっかくだからとここで新婚旅行になった。あっちは色々観光して帰るらしい。
俺たちはそのままそこに留まって、二人きりのハネムーンを楽しんだ。今回は観光よりもゆっくり過ごす事を優先したけど…当然だろう?ハネムーンなんだから。観光なんていつでも出来るが、ハネムーンは今しかない。二人きりでのんびり過ごす、うん、最高だ。
ただ、海外イコール観光のイメージだった美緒は、どこにも行かないと聞いて意外そうな表情をしていた。観光したかったのか…とちょっと期待を外して悪かったと思ったが、それならまた今度連れてこよう。
でも今は…甘い二人きりの時間を楽しむものだろう?俺としてはやっと直に美緒を抱けるんだ。この日をどれほど待ち望んでいたか…
真面目な美緒は、この式が終わるまでは妊娠なんて絶対に嫌!出来婚なんてお母さんに縁切られちゃうと譲ってくれなかった。いや、もう籍は入っているし問題ないと思うんだが、会社では六月に結婚するって言っているんだからと言って譲らなかったんだ。終いには避妊しないならエッチ自体もそれまで禁止!なんて言うんだぞ?そんなの拷問じゃないか…
だから仕方がないが今日まで我慢した。結婚休暇は一週間しかないんだから、こんな貴重な時間に余計な事をしている余裕なんかない。
という訳で、ハネムーンは甘い時間をたっぷり堪能した。時々文句を言っていたが…何だかんだ言って絆されてくれるし、恥ずかしがりながらも甘えてくる姿は最高に可愛かった。
やっと甘えてくれるようになったのは大きな収穫だ。あいつは生真面目で恥ずかしがり屋で睦言に免疫がないだけで、実は寂しがりの甘えたがりなんだ。俺のマンションに戻ってからはより一層ぐずぐずに甘やかしてきたのと、ハネムーンはあいつ好みの女の子が憧れるホテルとサービスを選んだのが功を奏したみたいだ。
「…ねぇ…」
「ん?どうした?」
「その…式、の事なんだけど…」
「何だ?気に入らない事でもあったか?」
「そんなのない!その…そうじゃなくて…」
「…じゃ、どうした?」
何かを言いたいのはわかったが、いつもはズバッと言う美緒が珍しく言い淀んでいて、俺は何かあったのかと心配になった。美緒は言いたいことをはっきり言うタイプだけど、意外にも文句や苦情はあまり言わないんだ。本人に言わせると、相手だって色々考えているかもしれないから苦情を言うのは失礼だと思うから…らしい。ああ見えて人の事をよく考えているんだよな。そう言うところも可愛いんだけど、そんなに言い難い事があったのだろうか…不安が積もる。
「何でもいいから言ってくれ」
「…う、うん…その…」
「うん?」
「…ありがとう…」
「へ?」
「あの…あんな、素敵な結婚式、してくれて…」
「…」
「その…お姫様みたいなドレスも…凄く嬉しかった…あんなドレス、着れるなんて思ってなかったから…その…」
「…ああ、…気に入ってくれたなら、よかった」
おい、こいつは俺を殺す気か?顔を赤らめて、恥ずかしそうにお礼を言うなんて反則だろう?何だよ、その殺人的に可愛いリアクションは…!
こいつが意地っ張りで天邪鬼なのはよ~く分かっていた。それでも稀に素直なところを見せるんだけど、それの威力がどれくらい強力か、こいつは絶対に分かっていないだろう。
これはさすがの俺も予想外だった。まずい…俺、もしかしたら耳まで赤くなっているかもしれない…
気が強くてサバサバしてるように見えるけど、実際はそうじゃないし、サバサバしているように見えるのは、最初から人に期待しないからだ。そう、こいつは実はとても繊細で傷つきやすくて、甘え下手だ。だから傷つかないように予防線を張って自分を守っている。
「美緒が喜んでくれたならやった甲斐があるよ」
嬉しくて自然に笑みがこみ上げてくる。恥ずかしそうに顔を赤らめているのが可愛くて、思わず抱き寄せたら抵抗せずに身を任せた。ああ、柔らかいしいい匂いがする。
こいつは甘え出したらきっと子猫みたいにべったりなんだろうなぁ…と思うんだけど、まだ恥ずかしさが勝っているのか、遠慮するんだよな。まぁ、俺の昔やったバカな行いもあるだろうし、同じ年ってのもあるだろう。こいつはどっちかというと年上の方が安心するみたいだし。
お義母さんの話じゃ、こいつは昔は父親にべったりで、いわゆるファザコンだったらしい。一人っ子なのもあって、小さい頃から父親が凄く甘かったんだと言っていた。だから父親の裏切りはショックが大きくて、一層許せなかったんだろう、と。
俺がもっとしっかりしていたら、もしかしたら素直に甘えてくれたのかもしれない。有二郎といる時の方がリラックスして見えるのも、あいつの穏やかな雰囲気だけでなく、年よりも上にみられるところなんだろう。会社でも年配の人との方が力を抜いて話しているように見えるしな。
でもまぁ、俺にぷりぷり怒っている美緒も可愛いから、これでいいかな、と思う。こいつの柔らかくて傷つきやすいところは俺だけが知っていればいいし、それを守るのが俺の役目だ。
「美緒が喜ぶなら、何だってしてやるよ」
そう言ってぎゅっと抱きしめた。ああ、今言った事は嘘じゃない。本当に美緒が望む事ならなんだって叶えてやりたいんだ。
「…そんなに甘やかすのは…ダメ」
「…何で?」
「……だって…バカになっちゃうから…」
「バカになっても…ずっと好きだ」
「…っ」
耳元で囁いたら、固まってしまった。ああ、今の言い方も好きだよな、いつも心臓に悪いから止めろって怒ってるけど、それは照れ隠しで本心じゃないのはバレバレだ。ああ、もう、限界だ…もういいだろう?
「…な?ちょ…どこ触って…」
「ん~胸」
「バカっ!まだお昼…っ!」
「可愛い事言う美緒が悪い」
「はぁ?何バカ言ってんのよ!放せぇー!」
ああ、もう、そんなリアクションは逆効果なんだって。抵抗する美緒も可愛いんだから。俺は本能に逆らう事なく、美緒を美味しく頂くためにゆっくりと押し倒した。
* * * * *
ここまで読んでくださってありがとうございました。
これで完結です。
最初は秋にしようかとも言っていたが、朱里がやっぱり花嫁はジューンブライドでしょ、と言うから六月にした。そうだな、日本じゃ梅雨だけど、海外に行けば問題ない。それに…秋まで待てないし。
肝心の美緒に聞いたら、いつでもいい、出来れば料金の安い閑散期で…なんて超現実的な答えが返ってきて、ああ、こいつらしいなと思った。お義母さんの費用もうちが出すと言っているから、それに遠慮しているんだ。そんな慎ましい金銭感覚も可愛い。もう、何でも買ってやりたくなる…まぁ、それすると怒るのは目に見えているからやらないけど…
「まぁ…美緒、綺麗だわ…」
「本当、よく似合ってるわ、可愛い!」
「…そ、そうかな…」
「ああ、綺麗だ、美緒…」
真っ白なウエディングドレスを纏った美緒は…とても綺麗だった。いやもう、綺麗なんて一言では言い表せない…天使?それとも妖精?ああ、それもなんか違う気がする…もうずっとこの姿でいて欲しい…マジで。
華奢で可愛い美緒には、やっぱりプリンセス風のドレスが最高に似合っていた。もうアラサーだから…なんて言っていたけど、レースやフリルをあしらい、長いトレーンのドレスに身を包む美緒は、俺にとっては唯一無二の永遠のお姫様だ。ああ、本当に可愛い…マジであのまま押し倒して貪…いや、何でもない。
あまり豪華だとドレスに着られている感じになるから…と無難でシンプルなデザインに向かう美緒だったが、知り合いのデザイナーのお陰でレースやフリルをしっかり使った可愛いデザインに仕上がった。うん、すげー綺麗だし可愛いし可憐だ。デザイナー神。仕事の関係もあって国内で形だけの披露宴はする予定だけど、その時のドレスも楽しみだ。
式は俺の両親と兄夫婦、朱里夫婦、美緒のお義母さんの少人数で、始終アットホームな感じだった。知らない人間に不安を感じる美緒には、この方法が一番だったと思う。お陰で式の間も表情をこわばらせる事はなく、はにかみながらも始終笑顔だった。ああ、後半は泣き笑いだったけどな。
最初はお化粧が剥げるから泣くわけない、なんて言っていた美緒だったが、ドレスに着替えてお義母さんが一言二言声をかけたら、それだけで目がうるうるになっていた。…うん、弱いんだよな、あいつ、こういうの…
式の最中も懸命にこらえていたけど、式が終わってみんなにお祝いの言葉をかけられたら、涙腺崩壊してそこからは暫く泣きっぱなしだった。事前に朱里がメイクさんに、泣いても大丈夫なメイクでとお願いしてくれたんだが、そうしておいてよかった。泣きながら笑う美緒は本当に可愛かったし、気楽な式にしてよかったと心から思った。
ただ…どうしても早川にやられた傷はまだ消えていなくて、そこだけは痛々しかった。傷が目立たないよう、デザイナーがグローブ付きのデザインにしてくれたからよかったけど、あれは俺にとっては一生の教訓だ。永遠の愛だけじゃなく、何があっても美緒を守り切ると俺は誓った。もう二度とあんな思いも怪我もさせたくない。
結婚したからと言ってハイエナが完全にいなくなるわけじゃないのは、兄貴たちを見ていても明らかだ。未だに兄貴に言い寄る女は絶えないし、春花さんへの風当たりも強い。入籍と式を済ませても、俺の戦いはまだまだ始まったばかりなのだ。
両親とお義母さん、兄貴夫婦はそれぞれ観光して帰っていった。母さんとお義母さんは知らない間に仲良くなってて、親父がしょんぼりしているのが笑えた。
朱里と大石さんは、せっかくだからとここで新婚旅行になった。あっちは色々観光して帰るらしい。
俺たちはそのままそこに留まって、二人きりのハネムーンを楽しんだ。今回は観光よりもゆっくり過ごす事を優先したけど…当然だろう?ハネムーンなんだから。観光なんていつでも出来るが、ハネムーンは今しかない。二人きりでのんびり過ごす、うん、最高だ。
ただ、海外イコール観光のイメージだった美緒は、どこにも行かないと聞いて意外そうな表情をしていた。観光したかったのか…とちょっと期待を外して悪かったと思ったが、それならまた今度連れてこよう。
でも今は…甘い二人きりの時間を楽しむものだろう?俺としてはやっと直に美緒を抱けるんだ。この日をどれほど待ち望んでいたか…
真面目な美緒は、この式が終わるまでは妊娠なんて絶対に嫌!出来婚なんてお母さんに縁切られちゃうと譲ってくれなかった。いや、もう籍は入っているし問題ないと思うんだが、会社では六月に結婚するって言っているんだからと言って譲らなかったんだ。終いには避妊しないならエッチ自体もそれまで禁止!なんて言うんだぞ?そんなの拷問じゃないか…
だから仕方がないが今日まで我慢した。結婚休暇は一週間しかないんだから、こんな貴重な時間に余計な事をしている余裕なんかない。
という訳で、ハネムーンは甘い時間をたっぷり堪能した。時々文句を言っていたが…何だかんだ言って絆されてくれるし、恥ずかしがりながらも甘えてくる姿は最高に可愛かった。
やっと甘えてくれるようになったのは大きな収穫だ。あいつは生真面目で恥ずかしがり屋で睦言に免疫がないだけで、実は寂しがりの甘えたがりなんだ。俺のマンションに戻ってからはより一層ぐずぐずに甘やかしてきたのと、ハネムーンはあいつ好みの女の子が憧れるホテルとサービスを選んだのが功を奏したみたいだ。
「…ねぇ…」
「ん?どうした?」
「その…式、の事なんだけど…」
「何だ?気に入らない事でもあったか?」
「そんなのない!その…そうじゃなくて…」
「…じゃ、どうした?」
何かを言いたいのはわかったが、いつもはズバッと言う美緒が珍しく言い淀んでいて、俺は何かあったのかと心配になった。美緒は言いたいことをはっきり言うタイプだけど、意外にも文句や苦情はあまり言わないんだ。本人に言わせると、相手だって色々考えているかもしれないから苦情を言うのは失礼だと思うから…らしい。ああ見えて人の事をよく考えているんだよな。そう言うところも可愛いんだけど、そんなに言い難い事があったのだろうか…不安が積もる。
「何でもいいから言ってくれ」
「…う、うん…その…」
「うん?」
「…ありがとう…」
「へ?」
「あの…あんな、素敵な結婚式、してくれて…」
「…」
「その…お姫様みたいなドレスも…凄く嬉しかった…あんなドレス、着れるなんて思ってなかったから…その…」
「…ああ、…気に入ってくれたなら、よかった」
おい、こいつは俺を殺す気か?顔を赤らめて、恥ずかしそうにお礼を言うなんて反則だろう?何だよ、その殺人的に可愛いリアクションは…!
こいつが意地っ張りで天邪鬼なのはよ~く分かっていた。それでも稀に素直なところを見せるんだけど、それの威力がどれくらい強力か、こいつは絶対に分かっていないだろう。
これはさすがの俺も予想外だった。まずい…俺、もしかしたら耳まで赤くなっているかもしれない…
気が強くてサバサバしてるように見えるけど、実際はそうじゃないし、サバサバしているように見えるのは、最初から人に期待しないからだ。そう、こいつは実はとても繊細で傷つきやすくて、甘え下手だ。だから傷つかないように予防線を張って自分を守っている。
「美緒が喜んでくれたならやった甲斐があるよ」
嬉しくて自然に笑みがこみ上げてくる。恥ずかしそうに顔を赤らめているのが可愛くて、思わず抱き寄せたら抵抗せずに身を任せた。ああ、柔らかいしいい匂いがする。
こいつは甘え出したらきっと子猫みたいにべったりなんだろうなぁ…と思うんだけど、まだ恥ずかしさが勝っているのか、遠慮するんだよな。まぁ、俺の昔やったバカな行いもあるだろうし、同じ年ってのもあるだろう。こいつはどっちかというと年上の方が安心するみたいだし。
お義母さんの話じゃ、こいつは昔は父親にべったりで、いわゆるファザコンだったらしい。一人っ子なのもあって、小さい頃から父親が凄く甘かったんだと言っていた。だから父親の裏切りはショックが大きくて、一層許せなかったんだろう、と。
俺がもっとしっかりしていたら、もしかしたら素直に甘えてくれたのかもしれない。有二郎といる時の方がリラックスして見えるのも、あいつの穏やかな雰囲気だけでなく、年よりも上にみられるところなんだろう。会社でも年配の人との方が力を抜いて話しているように見えるしな。
でもまぁ、俺にぷりぷり怒っている美緒も可愛いから、これでいいかな、と思う。こいつの柔らかくて傷つきやすいところは俺だけが知っていればいいし、それを守るのが俺の役目だ。
「美緒が喜ぶなら、何だってしてやるよ」
そう言ってぎゅっと抱きしめた。ああ、今言った事は嘘じゃない。本当に美緒が望む事ならなんだって叶えてやりたいんだ。
「…そんなに甘やかすのは…ダメ」
「…何で?」
「……だって…バカになっちゃうから…」
「バカになっても…ずっと好きだ」
「…っ」
耳元で囁いたら、固まってしまった。ああ、今の言い方も好きだよな、いつも心臓に悪いから止めろって怒ってるけど、それは照れ隠しで本心じゃないのはバレバレだ。ああ、もう、限界だ…もういいだろう?
「…な?ちょ…どこ触って…」
「ん~胸」
「バカっ!まだお昼…っ!」
「可愛い事言う美緒が悪い」
「はぁ?何バカ言ってんのよ!放せぇー!」
ああ、もう、そんなリアクションは逆効果なんだって。抵抗する美緒も可愛いんだから。俺は本能に逆らう事なく、美緒を美味しく頂くためにゆっくりと押し倒した。
* * * * *
ここまで読んでくださってありがとうございました。
これで完結です。
31
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(6件)
あなたにおすすめの小説
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
いつも拝見しています!
すみませんすごく気になっちゃって…!
タイトルが再開なのですが、再会かなと…
それだけなんですけどすみません!
美緒が想像以上にダメージ受けてたのは悲しかったですが、やっぱり人間だから強すぎたりしないんだなって思いました!
なかなかいいコンビだと思うので、2人が幸せになるの願ってこれからも読ませていただきます!!
感想ありがとうございます。
そして、誤字のご報告、ありがとうございました!
そうですね、再会ですよね…本文ばかり気にしていたのでタイトルはノーチェックでした💦
タグにハッピーエンドと入れてしまったので、最後は明るく終わらせたいと思います。
美緒〜素直におなりଘ(੭ˊ꒳ˋ)੭✧
感想ありがとうございます。
素直になるまで、今しばらくお付き合いください。
毎日楽しく拝見してます!
小林!!
見せ場ですねっ!!
続きが楽しみです。
感想ありがとうございます。
楽しみと言っていただけて嬉しいです。
これからもお付き合いよろしくお願いします。