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二章、未熟な聖杯と終末の予言
17、いつまでも子供っぽいことしてるなよ(軽☆)
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「ノウファム――《そのまま膝をついて大人しくするように》」
命令が下されると、ノウファムは従順に膝をついた。
僕を腕に抱きかかえたまま。
疲れたりしないんだろうか。
僕はちょっとだけ申し訳なくなって、もぞもぞした。
視界に暴君が映っている。
真っ白なカジャの赤い唇が、妖しく声を紡ぐ。
「本日の魔獣は予想以上に倒すのが速かった。私が思っていたよりも、兄は腕をあげているらしい。素晴らしい。良いことだ――」
「――姫君は、自分を救ってくれた英雄にご褒美をあげなければならないね」
暴君カジャの声が円形闘技場に響き渡る。
――ああ、陛下。ご機嫌が良さそうですね。
僕は他人事のようにぼんやりとカジャの声を聞いた。
「今だ未熟ではあるが、聖杯の恩恵を授けようではないか。エーテル、《お兄様に口付けをしてあげなさい》」
これは、命令だ。
――思った瞬間に、身体が動く。
「で――殿下……」
僕はするりと腕を伸ばしてノウファムの首にすがりついた。
「……お兄様」
懸命に顔を近づけると、理解の色を浮かべたノウファムの瞳が近くなる。わかってくれている。
……僕たちは、逆らえない。
だから。
どちらからともなく顔を寄せて、吐息を奪い合うように唇をつける。そして、スッと離れて、また見つめ合う。
……ちょっとだけ、物足りない感じがする。
もう一度したい。
そんな欲が胸に湧く。
直前まで煽られていたからだろうか。
くっつく肌が熱い。
首筋に手を滑らせたら、とくんとくんと脈打つ鼓動を感じて、何かが駆り立てられる感じがするのだ。
「おい。いつまでも子供っぽいことしてるなよ。《舌を絡ませろ》」
野次を飛ばすようなカジャの命令がつづくと、口付けが深くなる。
「ん、……ふ、」
呼吸が苦しい。
ぬるりと挿いりこむ熱い舌が自分の舌先と触れ合うと、背筋にぞくぞくとした感覚が走った。
膝を割って正面から抱え込むように座り直されて、震えるように反応する背中が大きくて厳つい剣士の手に撫でられる。
優しい手付きに反して、舌の動きは大胆になって僕の口腔を愛撫した。
唾液をかき混ぜるように音をたてて柔らかな部分をくすぐり、舌の裏を愛でて、敏感な粘膜を撫でて、舌を吸う。
「んっ、ん、んぅ……っ、ん、んンっ……!」
い、息ができない。苦しくて、くらくらしてくる。
昂りかけて解放されてを繰り返した身体が、じんじんと火照って高まっていく。
肌の内側が落ち着かない熱をどんどん淀ませていく……!
も、もういいんじゃないだろうか。
命令は遂行したんじゃないだろうか……っ。
僕は溺れかけているみたいに必死で息継ぎをしながら、ノウファムの肩をつかんだ。
ノウファムの精悍な顔は、何を考えているかがよくわからない。
けれど、僕と違って溺れるような感じではなく、どちらかといえば余裕であるように視えた。
――みっともなく乱れているのは、僕だけだ。
「……っ」
ほろりと目の端から涙が溢れると、後頭部が幼子を落ち着かせるようにゆっくりと撫でられる。
そして、唇が解放されて頬を伝う涙がぺろりと舐めとられる――この一連の行為が大衆の目の前で行われているのだと思い出して、僕がぎゅっと目を瞑った時、暴君が笑った。
「いいぞ、いいぞ! よくできました! では、ご褒美も与えられてめでたし、めでたし。本日のショーはここまでだ」
上機嫌のカジャは、手を叩いて命令を追加した。
「ノウファム――《聖杯を私のもとに連れてきなさい》」
命令が下されると、ノウファムは従順に膝をついた。
僕を腕に抱きかかえたまま。
疲れたりしないんだろうか。
僕はちょっとだけ申し訳なくなって、もぞもぞした。
視界に暴君が映っている。
真っ白なカジャの赤い唇が、妖しく声を紡ぐ。
「本日の魔獣は予想以上に倒すのが速かった。私が思っていたよりも、兄は腕をあげているらしい。素晴らしい。良いことだ――」
「――姫君は、自分を救ってくれた英雄にご褒美をあげなければならないね」
暴君カジャの声が円形闘技場に響き渡る。
――ああ、陛下。ご機嫌が良さそうですね。
僕は他人事のようにぼんやりとカジャの声を聞いた。
「今だ未熟ではあるが、聖杯の恩恵を授けようではないか。エーテル、《お兄様に口付けをしてあげなさい》」
これは、命令だ。
――思った瞬間に、身体が動く。
「で――殿下……」
僕はするりと腕を伸ばしてノウファムの首にすがりついた。
「……お兄様」
懸命に顔を近づけると、理解の色を浮かべたノウファムの瞳が近くなる。わかってくれている。
……僕たちは、逆らえない。
だから。
どちらからともなく顔を寄せて、吐息を奪い合うように唇をつける。そして、スッと離れて、また見つめ合う。
……ちょっとだけ、物足りない感じがする。
もう一度したい。
そんな欲が胸に湧く。
直前まで煽られていたからだろうか。
くっつく肌が熱い。
首筋に手を滑らせたら、とくんとくんと脈打つ鼓動を感じて、何かが駆り立てられる感じがするのだ。
「おい。いつまでも子供っぽいことしてるなよ。《舌を絡ませろ》」
野次を飛ばすようなカジャの命令がつづくと、口付けが深くなる。
「ん、……ふ、」
呼吸が苦しい。
ぬるりと挿いりこむ熱い舌が自分の舌先と触れ合うと、背筋にぞくぞくとした感覚が走った。
膝を割って正面から抱え込むように座り直されて、震えるように反応する背中が大きくて厳つい剣士の手に撫でられる。
優しい手付きに反して、舌の動きは大胆になって僕の口腔を愛撫した。
唾液をかき混ぜるように音をたてて柔らかな部分をくすぐり、舌の裏を愛でて、敏感な粘膜を撫でて、舌を吸う。
「んっ、ん、んぅ……っ、ん、んンっ……!」
い、息ができない。苦しくて、くらくらしてくる。
昂りかけて解放されてを繰り返した身体が、じんじんと火照って高まっていく。
肌の内側が落ち着かない熱をどんどん淀ませていく……!
も、もういいんじゃないだろうか。
命令は遂行したんじゃないだろうか……っ。
僕は溺れかけているみたいに必死で息継ぎをしながら、ノウファムの肩をつかんだ。
ノウファムの精悍な顔は、何を考えているかがよくわからない。
けれど、僕と違って溺れるような感じではなく、どちらかといえば余裕であるように視えた。
――みっともなく乱れているのは、僕だけだ。
「……っ」
ほろりと目の端から涙が溢れると、後頭部が幼子を落ち着かせるようにゆっくりと撫でられる。
そして、唇が解放されて頬を伝う涙がぺろりと舐めとられる――この一連の行為が大衆の目の前で行われているのだと思い出して、僕がぎゅっと目を瞑った時、暴君が笑った。
「いいぞ、いいぞ! よくできました! では、ご褒美も与えられてめでたし、めでたし。本日のショーはここまでだ」
上機嫌のカジャは、手を叩いて命令を追加した。
「ノウファム――《聖杯を私のもとに連れてきなさい》」
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