14 / 65
14話 リンカーヌ王国
しおりを挟むサブライマの街を出発して、ラハサカの街、モラシュルの街、あとは小さな農村を経由して無事にリンカーヌ王国の王都に着いた。
予定より一週間ほど遅れての到着だった。
サブライマの街を出発してすぐにネネにキース隊長のことを確認した。
「はい·····告白しました。キース様も盗賊の件から私のことを気になり始めたと言われて。」
ネネは両手で頬を押さえて照れながら報告してくれた。
「アリア様のおかげです!二人きりで話す機会を持たせてくれたので色んなお話しも出来たし、キース様のひととなりが分かりました。やはり立派な方でした!」
ネネは頭を下げてきてお礼を言ってきた。
「それで恋人同士になったの?」
「はい♥」
ネネは幸せそうな顔をしている。
良かったわね!ネネ!
「ところで、夜中に、ギシッギシッとベッドの軋む音が聞こえてきてね!うめき声みたいなのも聞こえたの!ネネは聞こえなかった?」
私は夜中のことをネネに聞いた。
ネネは視線を泳がせ
「え?····そ、そうですか。私には聞こえなかったです。」
何か汗も掻いているような?
「そう····最後に幽霊でも出たのかしら。怖くてなかなか寝れなかったわ。」
「すみません!!」
「?」
なぜかネネが謝ってきた。
それからは宿に泊まる時はネネの隣にキース隊長が部屋を借りた。何故か私の隣にはランクス副隊長も。四人セットで宿を取るようになったのだ。
キース隊長は公私をきちんと分けており、任務中は「ネネ殿」と呼び、夜は「ネネ」と呼び捨てで名前を呼ぶようになった。
部下の手前、ネネと恋人同士なったことは秘密にしているとのこと。
夜は部屋の中だけど恋人として逢瀬をしていた。
羨ましいわ!
でもやっと王都に到着した。これでルイス王子に会える!
私自身はやる気持ちを抑えるのが大変だった。
今回も最初にすることは宿を取ること。
それぞれに宿を取り、滞在期間は三日間と決めた。
本当はもっと滞在期間は一週間ほど見ていたが、想像以上に到着が遅れた為に仕方なかった。場合によってはあと一日くらいは増やしてもいいかなと思っている。ルイス王子との絡み合いがあるからだ。
私は気分が高ぶっているのか、本来ならちょっと宿で休むが街を歩きたくて仕方がなかった。
ネネとキース隊長に無理を言って街に繰り出すことにしたのだった。
勿論ランクス副隊長も一緒ですわ!
私は来てから思ってたことですが、どこを見ても人、人、人!
人が溢れかえっていた。活気もあり呼び込みの声も飛び交っている。
「お兄ちゃん達!この焼き串一本どうだい?美味しいよ!」
「そこの綺麗なお姉さん!こっちのオーク肉は柔らかくて美味しいよ!」
······凄いわ。とりあえず街の大きさ、人口からしてサマヌーン国とは規模が違う。
まっ、当たり前だけどね。国の大きさからして違いますもの。
私は屋台で焼き串を一本買って食べた。
その時にキース隊長が不意に思い出したように話を始めた。
「そうか、何でこんなに人が多いのかと思ったら明日はフレラルン祭なんだ。」
「フレラルン祭?」
私達三人は何のことだか分からないので聞いた。
「ええ。リンカーヌ王国の女神様の1人で、国の繁栄をもたらす女神様として崇められています。それがフレラルン女神様です。年に一度、フレラルン女神様が誕生されたと言われる日にフレラルン女神様をお祝いをする、所謂祭ですね。かなり大規模でやっていて、各国から民も集まってきます。」
へえ。そうなんだ。そういえば習った気がするわ。えへっ☆
「明日はもっと人も増えて盛り上がりますよ。明日はこの道を通ってあちらにあるフレラルン女神様が祀られている教会に王族がお祝いの祈りをするために通るはずです。」
「えっ?そうなの?」
「はい。もし会われるなら教会か·····でも王族を一目見ようと凄い人でごった返しているだろうし、あちらはこちらには気づかないかもしれませんね。その前に近づくのは困難かもしれません。」
·······時間がないから明日は逢いたいと思ってたけど無理そうね····。
「とりあえず明日の様子を見て、会えそうなら行けばいいじゃないですか!」
ネネが言った言葉で明日決めることにした。
「それにわざわざ教会に行かなくても王城に行けばいいですしね。」
ランクス副隊長も助言してきた。
「そうね。」
当初は王城に赴き逢うつもりだったし。
今考えても仕方ないことね。
私はそう頭の切り替えをして、リンカーヌの王都の街並みを堪能したのだった。
次の日
私たちは朝早くに街に繰り出した。時折、騎士団の者や近衛隊の者とすれ違った。
「朝から凄い人ね。」
早朝にも関わらず既に人だかりは出来ていた。警備隊も既に配置されておりロープを引いていた。
「そうですね。私もびっくりしました。」
ネネも人だかりに驚いたようだ。
「リンカーヌ王国の大きな行事ですからね。民は皆王族の顔をひと目見ようと田舎から出てきたり、他国は旅行とようして見にきてますから。」
キース隊長はネネの肩に手を置き話しをする。
幸せそう·····。
私は羨ましくその手を見ていたら、それに気付いたキース隊長がさっとネネの肩から手を引いた。
あっ、ごめんねネネ。
王族のご一行を待っている間はキース隊長が飲み物と食べ物を買って来てくれてそれを食べたり、お話ししたりしていた。
時間が経つにつれて人もますます増えてきた。
「まだなのかしら」
「そうですねえ。」
暇すぎて思わず言ってしまう。
あっ!そうだ!
私は隣の知らない人に話しかける。
「ここのルイス皇太子様ってどうなんですか?」
ネネもキース隊長もランクス副隊長もぎょっとした目で私を見る。
「ああ、あんたは旅行者かい?」
「はい。」
人が良さそうなおじさんが教えてくれた。
「ルイス皇太子様は立派な方だよ。国王に代わって外交もされてて、ルイス皇太子様が色んな国と交渉してくださって輸出も増えて国民は喜んでいるよ!貧困の村とかにも支援してくださったりして。誰もルイス皇太子様の悪口を言う奴はいないよ!ルイス皇太子様はリンカーヌ王国の誇りさ!」
まあ!国民の信頼も厚いのですね!
私は思わずニコニコしてしまった。
周りの人が私の笑顔を見惚れいるのに気づきもしなかった。
「国王様達が来るぞー!」
誰かが叫んでいる。
そろそろね!
警備隊の人達もピリピリとした雰囲気になり始めていた。
遠くから屋根のない立派な馬車がやってきていた。その馬車を引く馬にも立派な装飾が施された布を被せてある。先導している騎馬隊の人も正装してゆっくりと馬を歩かせている。
国王様が国民の声援に笑顔で手を振っている。隣にいる綺麗な方が国王妃様ね。国王妃も笑顔で国民の声援に手を振って応えていた。
あの方達が未来のお義父様とお義母様·····私はじっと見つめてしまった。
そのあとの馬車にはルイス王子様ではなく、女性が数名乗って手を振っていた。あの方達は側妃様たちかしら?
「お!次はルイス皇太子様だ!」
国民の声援は国王様の時よりも大きくなった。
すっ、凄い人気!
「ルイス様!」
「ルイス皇太子様ばんざーい!」
耳を塞ぎたくなるくらいの国民の大きな声援。
それに応えているルイス王子を見つけた。
あっ!ルイス殿下だわ!
私も叫ぼうとしたら·····身体が固まった。
その馬車にはルイス王子だけではなく、ルイス王子の両隣に女性がいた。しかもその二人の女性はルイス王子の腕を組み、国民に手を振っている。
·····どういうこと?
私はそれを見て頭が真っ白になった。
私の目の前をその馬車が通り過ぎていく。勿論ルイス王子は私に気付くわけもなく·····。
何故、ルイス王子の両隣に女性が乗っているの?しかも腕を組んで!
キース隊長とランクス副隊長が何かを叫んでいる。
その声は民衆の声と一体化しており、私には何を言っているのか聞こえなかった。
民衆は馬車を追いかけてその場から移動していく。
私は動けずにただその場に立ちすくんでいた。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
冷徹公爵の誤解された花嫁
柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。
冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。
一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。
もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない
もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。
……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~
絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる