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26話 側妃との対面

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チュンチュン

私は小鳥の鳴き声で目が覚めた。
昨日は·····お風呂に入らないまま寝てしまっていたらしい。だけど、ネグリジェを着ていたのでネネが着替えさせてくれたようだ。

コンコンとドアのノックする音が聞こえ、ネネがガチャリとドアを開けて入ってきた。

「アリア様、お目覚めになられましたか?」

「ええ。昨日はそのまま寝ちゃったみたいね。」

「はい。いつまで経っても私を呼ばないので、心配になり勝手ながら部屋に入りましたら死んだように寝られてたので、寝にくいだろうとお着替えをさせてもらいました。」

「ありがとう。」
私は素直にお礼を言った。
ネネはお茶の用意をしながら聞いてくる。

「先にお風呂に入られますか?朝食の準備も出来ておりますが。」

「お風呂に入るわ。疲れを取りたい····。」

「かしこましりました。」

ネネは部屋から出て行き、私はネネが用意してくれた紅茶を飲んだ。



それからはゆっくりとお風呂に入り朝食を取った。
まずはシャルの様子を見たが、やはり慣れない空気なのか添え木に止まって動かない。

「シャル、おはよう」

私が話しかけると、のそのそのこちらにやってきた。私は籠を開けてシャルを手のひらに乗せた。シャルの頭を撫でて

「昨日はごめんね。これからはここに住むのよ。大丈夫かな?」

シャルはつぶらな小さな瞳で私をじっと見ている。
やはり動きが鈍いわね。旅の疲れもあるだろうけど。この空気に····環境に慣れて欲しい。シャルは今辛いだろうけれど頑張って欲しいわ。

「シャル、死んじゃいやよ。生きてね。」

私はもう一度シャルの頭を撫でると、添え木に戻した。

「シャルは大丈夫ですよ!」

ネネが励ますように言う。

ええ····勿論よ。

「側妃達との対面は午後2時からだそうです。」

嫌なこと思い出した!

「そう·····。」

シャルの様子を見た後はピューマの所へと向かった。
ピューマは寂しかったらしく、私を見つけるとすぐやってきた。

頭をグリグリと押し付けてきた。

「ピューマごめんね!」

私はピューマの鼻にキスをして太い首に抱きついた。ピューマは嬉しそうにゴロゴロと喉を鳴らして甘えてきた。

午前中はピューマと一緒にいたり、シャルに声をかけながら、サマヌーン国から持ってきた「悪役令嬢のハチャメチャな恋」を読んだりしてまったりして時間を過ごした。

そして側妃達との対面の時間へとなっていた。

私はサマヌーン国から持ってきた黄色のドレスを着た。勿論ルイス王子から頂いたピンクのダイヤモンドの指輪も嵌めている。

今日もランディと一緒に側妃達が待つ後宮へと向かう。後宮を持てるのは現国王と、皇太子のみとなっている。

後宮へ行くにはルイス王子の宮を通らないといけない。
私の宮からルイス王子の宮までは歩いて15分くらいかかった。

意外に遠かったわ。まあ、ピューマの為に端の方にある離宮になったので、それは仕方のないことだわね。

ルイス王子の宮もかなり立派な建物だった。
本来なら私もここへ住む予定だったのよね······。など思いを馳せながら渡り廊下を歩く。
ルイス王子の宮から一直線に行くと後宮へと繋がっている。

後宮も立派なものだった。はっきり言ってこっちの宮の方が豪華だわ。

あるドアの前でランディが止まった。

「こちらで皆様がお待ちでございます。」

「そう······」

いよいよね!

ランディがドアをノックして、私が来たことを告げた。中からはルイス王子の声がし「通せ」と返事がきた。

ランディがドアを開けてくれたので私は

「ありがとう」
と言って部屋の中へと入っていった。


部屋の中ではルイス王子と、着飾った側妃達五人が座って待っていた。
ルイス王子は笑顔で、側妃達からは値踏みするような目線で見られた。

「アリア、昨日はよく眠れたかい?」

「はい、ルイ殿下。ぐっすりと朝まで寝てましたわ。おかげさまで疲れが少し取れました。」

「そうか。それはよかった。では早速だが、我が側妃達を紹介する。」

ルイス王子が、目配せで側妃達が立つ。

「まずは手前からだ。第一側妃のローゼンリタだ。」

ローゼンリタは笑顔で軽くお辞儀をして

「アリア様、初めまして私はローゼンリタと申します。公爵家出身でございます。宜しくお願いします。」

「ローゼンリタ、宜しくね。」

「次は第二側妃のナタリアだ」
ナタリアも軽くお辞儀をして自己紹介をする。
「アリア様、 ナタリアと申します。マターナルヤ国から嫁いできました。マターナルヤ国では第二皇女でした。」

「ナタリア、宜しくね。」

二人とも 二年前のお祭りの時にルイス王子の両隣にいた方ね。

そして、第三側妃マリーベルはドゴランド王国の第二皇女、第四側妃はアナラーナ、ザンビア国の····こちらも第三皇女。私と一緒の第三皇女だが、母親は王家筋の出身らしいので同じ第三皇女でも、私よりは身分は上になる。第五側妃はララベル。ママイヤ国の第一皇女になる。
見事にルーベルト様が言っていた通り、ローゼンリタ以外の方は実家の序列では私よりは上だった。

側妃達の紹介が終わったところで、今度は私の番となった。
ルイス王子は私を腰に手を当てて紹介する
「皆の者、この方が私の正妃となるアリアだ。よろしく頼む。」

ルイス王子から紹介されたので、私は一歩前に出てお辞儀をした。

「皆さま、初めまして。サマヌーン国からきましたアリアです。これから宜しくお願いいたします。」

皆の自己紹介が終わったところで、ルイス王子が皆に座るように言った。

座るとすぐにドアをノックする音がして、「失礼します」と、ルイス王子の側近であるイーサが入ってきて、ルイス王子に耳打ちをした。

ルイス王子は少し顔を歪めて立ち上がった。

「すまない。少し用事が出来たので席をはずす。私が帰ってくるまでに仲良くなってくれたら嬉しい。」

そう言って部屋を早々に立ち去った。

ちょっとー!このまま置いて行くってどういうことよ!

私は内心焦ってしまった。

そして側妃達の方を見ると、さっきとは打って変わって敵意を感じる顔でローゼンリタが私を睨んでいた。

これはやる気ですね·····。

やってやろうじゃないの!
あっ!どんどんネネに似てきてしまったわ!

私は負けないぞの意思を込めて、ローゼンリタを睨み返した。

こうして、私とローゼンリタの女の戦いが始まった。
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