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4話 由紀 14歳②
しおりを挟む次の日はドキドキして食卓に向かったけど、兄は普通に接してくれました。
「由紀、早く食べないと遅刻するよ。」
「うん。」
良かった。怒ってないわ。
それから一週間は平穏な日々が過ぎていった。
兄は土日も姉と遊びに行っている。やはり今まで兄と一緒だったので寂しくなったけど、私は恭子や他の友達と遊んだ。
しかも日曜日はたまに男子も交えて遊んだりして、ちょっとワクワクして楽しかった。
兄とは普通に過ごすようになっていた。
相変わらず優しくて、私を甘やかしてくれる。
「由紀が食べたいって言ってたケーキ買ってきたよ。一緒に食べよう。」
「え?あのお店って凄く遠いのに!わざわざ行ってくれたの?」
「ああ。でも恥ずかしいから友達と行ったけどね。」
彼女じゃなくて友達?
本当に彼女はいないのかな···。
まあ、友達でも女の子だろうけど。
「お兄ちゃん!ありがとう!」
私はケーキを受け取り、お皿に一つずつ盛った。
お父さんとお母さんのは冷蔵庫に入れて、姉を呼んだ。
「お姉ちゃんー!お兄ちゃんがケーキ買ってきてくれたから食べようよ!」
兄は飲み物の用意をしてくれた。
姉はほどなくして食卓について、三人でケーキを食べた。
めっちゃ美味しかった!
姉も絶賛!しかも今度連れてってとねだっていた。
姉はまだまだ兄離れは出来そうにないね。
私は少しずつだけど出来ている気がする。でもすぐ私を甘やかすから困る。
ケーキが食べ終わり私は自分の部屋へ戻って宿題をした。
その後の夕飯も食べ終わり、兄と姉はテレビを見ていた。
「由紀もおいで、テレビを一緒に見よう。」
兄は手招きをして私を呼んだ。
でも明日から期末テストです!
高校は少し早いらしくもう終わってる。
「ううん。明日から期末テストだから勉強をする。」
私はそう言って自分の部屋へ行った。
さて、早速勉強でもするか。
明日のテストは理科、数学、国語。
一番苦手なのは数学。これから手を付けるかな!
そう思い、勉強道具を用意していたらドアをノックする音がした。
「由紀?僕だけど。」
お兄ちゃん?
私は部屋のドアを開けた。
「どうしたの?テレビは?」
兄は椅子を持ってきており
「由紀がテスト勉強をするって言うから見てあげようと思って。」
うっそー!ラッキー!一人じゃ解んないとこは後でお兄ちゃんに聞こうと思ってたんだ!
「本当に?ありがとう!助かるぅ!お兄ちゃん大好き!」
私はお兄ちゃんに抱きついた。
兄もぎゅっとしてくれて···離してくれない。
「お兄ちゃん、離して。早く入って勉強を教えてよ!」
私が言ったらやっと離してくれて
「ごめんごめん。じゃあすぐにしようか。」
そう言って椅子を私の机の横に置いた。
そして勉強を開始した。
「だから····これがこうなって···」
お兄ちゃんの顔が私のすぐそばにある。横に向いたらキスしそうな位に。
兄は椅子があるのに座らず、後ろから私に覆い被さるようにしていた。
今は数学の方程式のやり方の説明をしてくれている。右手ではシャーペンを持ちすらすらとノートに書いて教えてくれているけど、左手は何故が私の手を握っているというか、手の上に自分の手を重ねている。
しかもさっきよりも顔が近くなってる!
頭を動かせないわ!
「て、覚えるんだ。分かった?」
「う、うん。」
「分かった?」の言葉の時にこちらに向いた時に兄の唇が頬っぺたに当たったような···。
実の兄なのに何かドキドキするよ。
「お、お兄ちゃん、椅子に座ったら?立ってたら大変でしょう?」
「···そんなことないよ。」
お兄ちゃん!耳元で言うの止めて!
な、何か今日のお兄ちゃんはやらしい感じがする!
「でも···」
「由紀、こっちを向いて。」
「?」
私が振り向きかけた時に
コンコンとドアをノックする音が聞こえ、
「お兄ちゃんー!お風呂できたよ!」
姉が兄を呼ぶ声が聞こえた。
「ちっ!」
え?お兄ちゃん今舌打ちした?
兄はすぐに私から離れて、
「分かった!ありがとう!でも今はまだ由紀に勉強を教えてるから、先にお風呂に入って欲しい!」
と返答をした。
「りょかーい!」
姉はパタパタとスリッパを鳴らしながらお風呂へ向かったようだ。
私は正直ほっとした。
私は自分の椅子を少しずらし、兄が持ってきた椅子を横へ置いた。
「お兄ちゃん、座って!」
兄は少し間を空け
「ありがとう」
椅子に座った。
そこからは普通に···やっぱりちょっとくっついている気がするけど、ダメダメ!勉強に集中しなきゃ!
姉が、お風呂から上がってくるまで、分からないところを聞きながら勉強をした。
姉が出たと呼びに来たので、先に兄に入ってもらうことにした。
「お兄ちゃんありがとう!」
兄はニコッと笑い、手を上げて自分の部屋に戻った。
あっ!そうだ!明日もお願いしとこう!
私は急いで部屋を出ると、ちょうど兄も自分の部屋から出て行くところだった。
私は兄を呼び止めてお礼を言った。
「お兄ちゃん!明日もお願いできる?」
「勿論だよ!」
「ありがとう!宜しくね!」
兄は踵を返し階段へ向かおうとしたときに、兄のズボンのポッケトからひらりと布みたいな物が落ちた。
あっ!
私はそれを拾い
「お兄ちゃん!落とし···」
私が拾ったのは、パンツだった。しかもそれは一年前くらいに盗られた猫のイラストのパンツに似ている。
私の?
兄は振り向き、驚いたような顔し、すぐに普通の顔に戻った。
「お兄ちゃん···これ···」
私はパンツを兄に見せた。
「ごめん。実は今日、静森公園で拾ったんだ。なんか落ちてるなって思って見てみたらパンツで。確かこの猫のイラストは見たことあったから、もしかしたら由紀のかと思って持って帰ったけど、今更だしね。しかも汚れてるし、本当に由紀のか判らないから捨てようと思ってたんだ。」
「····そうなんだ···」
兄は私の元へ来て、そのパンツを私の手から取り
「気持ち悪いだろ?捨てといてあげるから安心して。」
そう言ってお風呂場へ向かった。
確かに今更出てきて気持ち悪い。
兄は汚れてたと言ってけど、綺麗だったような気がする···でもやっぱり気持ち悪い。
静森公園は帰り道だけど、いつからあったのだろう。
もしかしたら近所に下着泥棒がいるかもしれない···
私はその恐怖に震えた。早く下着泥棒が捕まって欲しい。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
夏休み前。
まだ下着泥棒は捕まっていない。
だけど近所に被害があるとも聞かない。
私はあれからは部屋で干すようにしてるので、泥棒対策はしてるから盗られることはなくなったけど、いい気分ではない。
そんなときに
「ねえねえ、由紀のこと可愛いっていってる奴がいるんだけどさあ。今度Wデートしようよ!」
恭子は先月から同じクラスの男子に告白されて彼氏が出来ていた。凄く楽しそうでうらやましい。
うーん。どうしようかな···。
私が悩んでいると、恭子は
「こんなチャンスないんだから!会ってみるだけ会ったら?」
そう言われて、OKの返事をしてしまった。
相手はなんと、前言ってた山本晃太君だった。
確かに山本君はモテてた。うちのクラスの女子も山本君のこと格好いいって言ってたし。
ともあれ兄以外の人と初のデートです!ドキドキする!
デート当日。
今日も兄は姉と出掛けて行った。私はWデートのことは誰にも言ってない。
···だって、何か恥ずかしくて。
私は思いっきりおしゃれをしてデートに挑んだ。
待ち合わせ場所に行くと、既に三人は来ていた。
「ごめーん!待った?」
「大丈夫!皆今、来たとこだから!」
軽くお互いに紹介し合い、
「香川とはこうして会うの初めてだよな。」
山本君は頭を掻きながら言ってきた。
「うん。今日は宜しくね。」
私達四人はまずは映画を見ることにした。
もちろん両隣は恭子と山本君。
ドキドキしながら映画を見た。
それから昼御飯を食べてウインドーショッピングをした。
色んな話をして、とても楽しかった。
そしていつの間にか山本君に手を繋がれていた。
外でお兄ちゃん以外の男性と手を繋いだことあるのはお父さんのみ!(学校の遠足とかはあるけど)家族以外では初めてで···。
何かずっとドキドキしてる!
···これなら私、お兄ちゃん離れできると思う···。
私は浮かれて気付かなかった。そんな私達を見ている人がいるなんて···。
帰りは二手に別れて帰った。勿論私の相手は山本君。
「家まで送るよ。」
「うん。ありがとう。」
そして歩いて帰ってる途中に
「香川、ちょっと公園寄って行かない?」
そう言われて、帰り道にある静森公園に行った。
日曜日の公園は小さな子供達がチラホラとおり、遊んでいた。
私達はベンチに座った。
「今日は楽しかった。」
「うん。楽しかったね。」
「····」
山本君は急に黙り込み、思い立ったようにこちらへ向き
「ずっと前から香川って可愛いなって思ってた。」
「え?」
か、可愛いだなんて!
「で、今日はちょうど部活が休みで、橋田に頼んでセッティングしてもらったんだ。」
こ、これはもしや!?心臓の鼓動が速くなっていく。
「良かったら付き合わないか?」
きたー!
告白されちゃった!初告白!
「考えておいてくれ!」
そう言うと山本君は立ち上がり
「ごめん!送るのはここまでで帰るよ!」
顔を真っ赤にして走り去った。
うわぁぁ!どうしよう!!
私も顔が真っ赤になってる!身体中が熱い!
私はしばらく公園にいて、身体中の熱が冷めるまで待ち家に帰った。
「ただいまー!」
あれ?お兄ちゃんとお姉ちゃんの靴がある。今日は帰りが早いな。
「由紀、お帰り。」
兄が玄関まで出迎えてくれた。
だけど不機嫌そうな顔をしている。
お兄ちゃんの少し眉間に皺寄せてる顔なんて初めて見たかも。
そんな事を思っていたら、姉も来て
「由紀ー、見たよー!男の子と一緒だったね!デート?」
姉はクスクス笑って言ってきた。
み、見られたー!
「由紀、そんなこと僕は聞いてないよ。」
もの凄く低い声で言ってきた。
「だって言ったらからかうじゃん!」
「あははー!勿論じゃん!中2の癖に色気づいちゃって!」
姉に鼻ピンされた。
「痛いよ!お姉ちゃん!」
姉は笑いながら自分の部屋へ帰って行った。
「由紀、お兄ちゃんも早いと思うぞ。」
「····。」
「もうこんなことはダメだ。」
「···私、告白されたの。」
「!!!」
兄は驚愕の目で私を見る。
「私、その人と付き合おうと思ってる。」
私がそう言うと
「ダメだ!」
「何で?」
「まだ早い。」
「そんなことないよ!恭子も彼氏居るし!」
「恭子ちゃんは恭子ちゃんだ。お前はダメだ!断るんだ!」
「やっとお兄ちゃん離れが出来そうなんだよ?喜んでよ!」
すると、兄はバンッと壁を殴った。
私はその音にビクッとし、身体が強張る。
「ダメと言ったらダメだ!僕はお兄ちゃん離れをして欲しいなんて思ってない!断るんだぞ!お前が断れないんなら僕が断る!いいな!」
大きな声で言ってくる。兄の怒ってる姿は初めて見た。
兄は大きい足音をさせながら二階へ上がった。
···男の人って怒ったらこんなに怖いんだ···。
私はその恐怖と、どうしてそんなに怒るのか分からないのとで涙が出てきた。
「うえっ···うえっ···うぅぅ··」
私は泣きながら自分の部屋へ行き、ベッドの上に転がり枕に顔を埋め泣きじゃくった。
少ししたらドアのノックする音が聞こえた。
「由紀?僕だ。入るよ。」
私はビクッとした。鍵を閉めるのを忘れていた。
兄は部屋へ入り、ベッドの上にいる私の元へやってきた。
そして私の頭を優しく撫でながら
「由紀、ごめんな。ついカッとなって怒鳴ってしまって。」
「····。」
「僕はまだ、可愛い妹のままでいて欲しいんだ。」
私はガバッと起き上がり
「でも私、お兄ちゃんの恋愛とか邪魔してる!」
兄は私の涙を拭い
「してないよ。別に今は恋愛したいと思わない。それよりも由紀と居たいんだ。」
お兄ちゃん···
「僕は由紀とデートしなくなって凄く寂しかったのに、今日は男の子と居たから頭に血が登ったよ。」
兄は両手で私の頬に手を添えて
「また、お兄ちゃんっ子に戻って欲しいな。中学生の間だけでも。それからお兄ちゃんから卒業しても遅くないと思うよ。」
「···お兄ちゃん···」
「だから前みたいに、土日のどちらかはお兄ちゃんと一緒にいて欲しい。寂しくて死にそうだよ。」
私はその言葉にプッと笑い
「死にそうって。」
「いや、マジに。」
兄はいつもの優しい目で私を見つめる。
「私、まだお兄ちゃんっ子のままでいい?」
「もちろん、喜んで。」
兄は笑顔で言ってくれた。そして私を抱き締め
「泣かせてごめんね。」
と謝ってくれた。
私達は仲直りし、前の兄妹に戻った。
兄が姉に、また土曜日は私の相手をすることになっことを報告し、姉はブーブー怒ってたけど何とか納得してもらった。
中学生の間だけお兄ちゃんっ子でいよう。
中学生の卒業と同時に、お兄ちゃんっ子から卒業しようと心に決めた。
明日は山本君に断りを入れなくちゃ。
ちょっと憂鬱だけど仕方ないわ。
そうして私の運命の歯車が動き始めた···。
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