ミルクティー依存症

高槻

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「ミルクティーが冷めた」

 呆れてしまうほど何度も抱き合ってからようやく許してもらって、裕也に身体を支えられるようにしてシャワーを浴びた。体力の限界をとうに過ぎている櫂はソファに運ばれ、そこで何時間も放置されていたミルクティーを見つけた。

「それは、まあ、さすがに、ね。また淹れようか?」

 返事をするのと欠伸が同時だった。昨日から眠っていない。ソファで体を丸めると、疲労感と一緒に強烈な睡魔にも襲われる。

「櫂、眠いの?」
「寝る、けど、ミルクティーも淹れて」

 我侭だと自分でも思う。裕也がもう自分から離れられないと確信したらすぐにこれだ。我侭を言う理由は、そうやって言うことを聞いてもらうのが一番手っ取り早い独占の仕方だと思っているから。不器用だから、とも言える。
 櫂の場合は幼い頃その欲求が強すぎて押さえ込まなくてはならなくなって、充分に満たされることがないまま、大きくなっても残ってしまうことになった。欠陥だと言うのならその通りかもしれない。だからこそ今まで誰もそんな櫂を受け入れてくれなくて、櫂はいつも孤独だった。
 けれど。

「本当に櫂は、甘やかしがいがあるよね」

 ――これだからたまらない。止められない。
 まるで精神安定剤みたいな。ひどい依存の仕方だとは思う。それでも、そのおかげでこんな幸福感を味わえるのであればそれも悪くないと今は思える。

「ミルクティーは起きたら淹れてあげる。だから少し寝たら?」
「目が覚めるまで、一緒にいて」
「うん、解ってるよ」

 暖かくて、甘くて、優しいミルクティー。
 依存性の強いミルクティーはもう、櫂だけのものだった。

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