奴隷か?奴隷なのか? 

八十三広

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ミレイ・トルクスは接触した

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サラに厳命されてランはシュジの奉仕を受けた。  嫌で嫌で仕方ないが、奉仕させると存外良かったようで上機嫌を見せた。   途中で精を放ってしまって中断となったらしいが、ランは叱らなかった。   シエラが叱りつけたからである。   シュジは初めて放った感覚に戸惑って中断された。  ランとシュジ以外にも身体を清めるメイドも監視の為に場に居合わせていた中で起こった。  シュジは少しパニックを起こすも感付いたメイド達の説明で落ち着きを取り戻して再開となり、終了したのだがメイド達の報告を聞いたシエラは奴隷である身分で主人への奉仕を中断した事について叱った。   シュジはシエラに怒られメイドにからかわれランに励まされ奴隷仲間には大笑いされて大いに落ち込んだ。   奉仕してからはランもシュジには部屋に入るのも許したし可愛がり始めた。   そして出征となった。   その日からシュジの仕事振りは精彩を欠き、呆けている事が多くなる。  シエラやメイド達はシュジの生まれ育った村が含まれているのは知っているので致し方無しとして叱る事はしなかった。   村に思いを馳せるシュジは両親の墓も気に掛かっていたし、残った村人も気になっていた。    国境の橋と村手前の攻防戦を終わらせてシュジの故郷、トリンク村を占領したサラの軍は野営を張り、首都から送られてきた工兵と国中から集まった職人達の手で外壁と外堀を作り始めていた。  残っていた村人達は畑仕事をしている者ばかりで、7世帯と村長が残っているだけだった。  年老いた者が中心で、空家はダンジムルの軍隊が使用していたのか荒れていた。  サラは残っていた家族には子はソーア人として扱う事を約束し、畑の所有を認めた。  墓は荒らされてはいなかったが草は伸びていた。  村の宿をサラ、ラン、ミレイら女性陣が使用したので必然的に軍議の場となった。   外壁と外堀を張らない限りは滞在となる。   野営陣地にも盛った土で囲い、土の上に見張りを立たせた。 盛った土には木の杭を挿して馬が上がれない様にしてある。   カーメトを出て半月が経った頃、3人はぶどう酒を飲んでいた。   何度か夜襲を仕掛けてくるも何の被害も出ていないし昼には仕掛けてこないので暇であった。   サラ「橋を渡りきった先で待ち受けられたのは難儀したわね。いくら敵が弱くても散開出来ないのでは良い的だし武器も振るえない」  ラン「その点ミレイの隊は良くやりました」   サラ「そうね。ミレイの隊は連れてきて良かったわ」  力自慢達の寄せ集めた集団は、かなりの重装備と堅固な盾を使う。  隊は密集して左右や前方に盾を掲げて突進し、他も後に続いて地形の劣勢を破った。  進軍速度はかなり遅いが、サラは橋の攻防戦が侵攻の第一歩を占うと判断してミレイ隊を連れていった。   サラ「ミレイ隊を連れて来なかったら被害は甚大だったでしょうね。若しくは撤退しなきゃいけなかったわ」   この隊は首都の軍部で発案され、装備も開発したが筋力と体力、それに戦場で倒れると1人では起き上がる事は困難で移動速度が遅すぎて囲まれやすい。  攻撃には勇敢に立ち向かう必要もあるので人を選ぶ兵種となった。   試験導入したがっていた軍部は新たに騎士となったミレイにこの兵種の運用を任された。   橋の攻防戦でサラはミレイの隊を盾役として運用しようと考えて橋を進ませた。   予想よりも弓と槍の応戦は激しい事が後方からも覗えた。  サラは状況は厳しいと見た。   ミレイ隊は移動速度の問題で弓矢の攻撃を長い間受けたが、それでも前進を続けた。   やがてはダンジムルの重装備の兵種と力競べとなる。   後ろの者達は息を合わせて押してダンジムル軍を押し、とうとう渡りきる者が出ると渡った者は密集陣形から抜けて盾で殴り、押し退ける。  ダンジムル軍は次々と倒れて盾で追撃されていく。  ミレイ隊は全員渡りきって各自が攻撃を防いでる間にラン隊が雪崩打って橋を渡って攻撃を始めた。  ラン隊は短槍と剣や槍なら防げる程度の丸い盾を装備している。  ラン隊の参加でダンジムル軍は撤退を開始した。   これにラン隊は脚に自信のある者が多く、追撃は大きく戦果を上げた。   村の手前で陣を敷くダンジムル軍は戦意を削がれていたのかミレイ隊とサラ隊に当たるとすぐに撤退した。  サラ隊は腕の長さ程の鉄の棒を2本装備している。   鉄の棒は剣撃を受け止める為に鍔があり、全員が背は低く身軽な者達である。   かなりの軽装備で、全身に網状にした金属の服を着ているだけである。   完全に接近戦重視した隊は、攻撃を躱し、無理なら受け止めて2本の鉄棒で攻撃する。   鍛造された特注品であり、各自が自分に合った長さを作らせている。  ミレイ隊に前と左右を守られたサラ隊は身を屈め、前進する。  ダンジムルの槍がミレイ隊に当たる程の距離になると左右に別れて襲い掛かった。左右に気を配るとミレイ隊の盾での体当たりに襲われるダンジムル軍は直ぐ様撤退した。   サラ「ミレイ。貴女が勲功第一等ね」   ミレイ「ありがとうございます」   ミレイも痣は身体のあちこちに作っている。   ミレイ「では、勲功第一等に免じてお願いしたい事があります」    サラ「…物によるわ」     ミレイ「ラン様のお付きのシュジと我が妹の結婚を認めていただきたく思います」   ラン「…シュジと?」   ミレイ「はい。重装備部隊を率いて判りましたが、これではいつ死んでもおかしくありません。いつ戦死しても良い様に妹の将来は決めておきたく思います」   ミレイにはシュジと同い年の妹がいる。   ミレイ一人で育てていた。  賢い少女であるが、身体は弱く如何にも女に目がなさそうな外見の良い男を好み、家事や料理は全く出来ない。  心配の種が尽きない妹を遺して死ぬ訳には行かない。    その点シュジは外見も良いし年齢にしてはしっかりしている。   それに人柄も悪くなく、シエラ・トルクスの養子でもある。  次の執事、若しくはシュジとの間の子が執事になれる目もメイドとして働ける目もある。    サラ「……ラン、どう思う?」    ランも考えている様子だ。   これは次代の事であるのでサラはぶどう酒を飲んでランの言葉を待つ。    ラン「シュジと妹がお互い好き合うなら良いでしょう。ただしシエラが強敵よ。クライス家の跡取り問題もあってシュジを養子にしたからね。それに最近は親としての情が湧いたみたいよ」    ミレイ「では、好き合ってシエラ殿が認めれば許してもらえるんですね?」   ラン「かまわないわよ」    ミレイ「ありがとうございます!」   サラ「良かったじゃないの。でも騎士の家の子が奴隷と結婚するかしら?」    ミレイ「大丈夫です!最近は奴隷は言う事を聞くから人気ですよ!」   サラ「そ…そう」   サラはこの企みは成功するかどうかはシエラ次第だなと予想した。   5日後には堀や外壁も完成間近となってシュジを呼び寄せた。  速い馬で扱いの上手いメイドに連れられて出発したシジュは到着した頃には疲労困憊で馬から降りられなかった。   「着いたよシュジ」   「あ、お疲れ様。どうしたの?」   「ずっと怖い怖いって言ってたの。この子すごくうるさいの」   シュジ「速すぎるんです。乗り慣れてないんですからゆっくり走ってくださいよ…」   「速く走らせないと夜になるでしょうに。私は帰るんだから降りて」   身体を落とす様にして降りたシュジは地面に突っ伏した。   「もう、シュジ。何やってるの…」   シュジ「すみません。おお!地面が揺れてる…!」   「世話焼ける子ね。おいで」  シュジは手を引かれて馬小屋に連れて来られた。  藁の上に布が掛けてあって、そこに突き飛ばされた。   「動ける様になったら宿にお館様とラン様に挨拶に来なさい」    シュジ「はい…すみません…」   メイドは去って行った。  揺れる感覚が無くなって動ける様になるまでに汗をかいたシュジは怠い身体を動かして厩を出た。   冷静になって周りを見ると人が多く、家か何か造っているのが見える。   家はどうなったんだろうかと思うが、今は挨拶に行かなければならない。   宿に入ると甲冑姿の女やメイド達が話し合ったり食事をしている。   「シュジ。おいで」  見知ったメイドに連れられて3階に上がる。   ロビーにサラ、ラン、ミレイの3人がテーブルに広げた地図を眺めている。   「シュジを連れて参りました」   サラ「そう。下がって良いわ」    メイドが下がり、挨拶をする。   サラ「もう外壁も立つし外堀も完成するから安全になったわ。お前は墓参りしてきなさい。終わったらランに付きなさい」   シュジ「かしこまりました。ありがとうございます」    墓に行くとよく手入れされている。   墓石は磨かれ草も取り除かれていた。   捧げる花は無い。   シュジ「お父さん、お母さん。ソーアに行って奴隷となったけど元気にしてるよ。ん?奴隷?……まあ良いか。ソーア人になっちゃったよ」    返事は当然帰ってこない。    シュジ「ソーア人になってごめん。本当は死んでそっちに行きたかったんだけど。勝手に死ねないし。次はいつ来れるか分からないけど、また来るよ」    帰り道に自分達が暮らした家を見に行くと、改修工事の途中らしい。   もう帰る家は無いんだと思うと、とても悲しい気持ちになった。   無性に両親に会いたくなったシュジには変わっていく生まれ育った村が別の村だと感じた。   感傷的になったシュジは宿に向かって3階に上がる。    サラ「もう良いの?」   シュジ「はい」   サラ「少し驚いたみたいね。自分の家や村の変わり様に」    シュジ「はい。とても驚いております」   サラ「そうでしょうね。ランの部屋で少し休憩を取りなさい」    シュジ「はい。失礼します」    ランの名が掲げられた部屋に入る。  椅子に座って思い出を振り返ると、遠い昔の様に思えた。  3日掛けてカーメトに到着した軍は解散した。   サラとランは詰所に残ると言うのでメイド達と共に屋敷へ戻った。   3日後に、ミレイが屋敷を訪ねた。  ランとミレイがシエラに話した。    シエラ「シュジとでございますか?」    ミレイ「ええ。妹も頭は悪くないから貴女の要望にも添うのではないかと思ってね」     シエラは考えた。   ランが一緒にいるという事はトルクス家が執事の家に混ざっても問題無いと判断され、もうシエラの返答で事の成否が決まるのだろうと。     シエラ「妹君様とお会いしてみない事には何とも言えません。妹君様もシュジを気に入るかどうか…」   ミレイ「問題無いわ。いざとなったらつべこべ言わさない」   ランはミレイの悪い部分が出たと思った。    ミレイは優し口穏やかな性格ではあり、子供好きなのだが言う事には逆らわせない一面を持つ。   シエラはその一面は今知ったが、気に食わない。    この一面をシュジに使うならば看過出来ないと思った。    シュジにはもう情が湧いて本当の息子として接している程には可愛がっている。    ミレイ「勿論シュジには拒否する権利はあるわよ。さすがにサラ様の覚えが良くてラン様専用で貴女の息子となれば強制なんて出来ないわ」    シエラ「しかし、トルクス様。結婚となった場合はシュジが婿養子になるのですか?」    ミレイ「それではシュジが心細いでしょう。妹君の戸籍をそちらに移すわ」    シエラ「…シュジには奉仕もあります。結婚までは一切の性行為やキスも控えてもらいますが」    ミレイ「純愛で素晴らしい」   シエラ「…では、一度会わせましょう」   ミレイ「ありがとう」   こうして席が設けられる事と相成った。   ミレイ「ミア。今度ご領主様のお屋敷に一緒に行くわよ」   ミア「私がですか?なぜです?」   ミレイ「貴女の将来の夫となる人に会いによ」   ミア「将来の!?姉様、それは…」   ミレイ「相手は同い年の子よ。奴隷でダンジムル人だけどお嬢様の専用奴隷よ」   ミア「ダンジムル人で…奴隷…」    ミアはそんな者と結婚するのかと気分が暗くなる。   ミレイ「奴隷と言っても執事の養子でもあるの。貴女好みの子で人柄も良いわ」   ミア「…奴隷で執事の養子?」   ミレイ「そう。会うだけ会うわよ」    ミア「はあ…分かりました」    ミアは不安なものの騎士の家の者となった今、姉には逆らえない。   幼い子供奴隷を抱いて気持ちを紛らわせた。    
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