馬鹿な子に未来は託された。

八十三広

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賢人「何丁ぐらい造ったんだろう……」
リリア「478。3人で造っても478よ」
賢人「まだ500にも届かないの!?」

リリア「あんたが図書館の本作成を協力してるからね。それに、他の2人と補助の質もまだ低いというのもあるわ。その代わり強力らしいけど」

賢人「気長にやるしかないかー」  
リリア「頑張ってやりましょう」

顕微鏡も創造して使い方を教え、広めた賢人。

とうとう人間の元である精子と卵子が発見される。

誰もがこれに驚いたものの、なかなか懐妊しない夫婦の真相も解明された。

ただの水にも様々な虫がいる事が判明して飲むならば煮沸しなければならないとキュアノに報告があがった。

キュアノ「そうか。賢人が潔癖なのも納得がいくな」

コムド「いかがしましょう?」

キュアノ「かなり大きい鍋に水を大量に入れて石炭で煮て殺そう。病人と医者、看護婦に無料で与えろ。城下で汚れていそうな場所にも湯を掛けて試せ」

コムド「ははっ」

賢人は顕微鏡を無償提供したが、修理や新しく想像するのは有料とし、ロンギアルと折半した。

賢人は日本の貨幣を見せてみた。

コムド「この人物達は誰なんだ?」

賢人「日本の昔の偉人達です。ロンギアルで言うなら……偉大な王とか?」

キュアノ「……どう思う?」

キュアノはコムドや官僚達に意見を求めた。

コムド「ロンギアルでは流通させても問題無いと思われますが、製造が難しいですな。紙は破れたり燃えたらどうしている?」

賢人「銀行に持って行けば新しいのに替えてくれます。破れた部分は破片がいります。燃えたのは駄目だったと思います。あと、細工するのは違法です。曲げたり折ったり落書きしたりは駄目です」

キュアノ「だろうな。しかし製造出来れば金貨や銀貨、銅貨よりは良いな。余裕が出来れば何処かの国と交易する為の金として確保しておける」

コムド「持ち運びも楽になりますな。削られる事もありません」

キュアノ「特別な紙と特別なインクを開発させていっそのこと紙にしてしまうか」

コムド「それも良いと愚考します」

こうして紙幣の開発も急がれる事となった。

忙しさで大わらわになりながらも、賢人はコムドと面会して土葬に忠告を入れた。

コムド「確かに人1人が寝転んだ程の場所を必要としている。燃やせと言うのか?」

賢人「はい。燃やさないと病気にもなると思います」

コムド「陛下に伝えてみよう。が、あまり期待しない方が良いだろう」

賢人「わかりました」

キュアノはこの提案は理に叶っていると思ったが消極的だった。

ロンギアルは土葬が一般的で、人を燃やすというのは狂気の沙汰だと感じたのだ。

が、火葬を望む者は申し入れれば許可する事にした。

墓は日本式となり、家族が死ぬ毎に同じ墓に入れるという魅力を賢人は説いた。

教会は激怒して賢人を「悪魔の子」だとあちこちで吹いた。

賢人はそれに何とも思っておらず、奴隷達が仕入れてきた風説や聖職者達の言を聞いて愉快で大笑いした。

そもそも教会は賢人の存在を良く思っていなかった。

今まで自分達が乞われ、寄付を要求して教えてきた字や数に技術をあっという間に無償で提供し、あまつさえ上回る。

こうなると教えを乞われる事も無くなって権威を振りかざす事も難しくなった。

賢人が現れる以前は王家さえ顔色を窺う事さえあったのに今では面会を希望しても多忙と言って断られていた。

火葬という概念を持ち込んだ賢人に、葬儀を取り仕切る教会は苛立ちを隠せなくなったのだ。

当然キュアノやコムド、ダーデの耳にも届いた。

ダーデは宗教は好きだが、神に仕える者達は好きではなかった。

清貧を謳いながら豪勢な食事を食らい、人の不幸と不安と善意の寄付で金を得ておきながら神の言葉を語り、偉そうに振る舞う者達という印象が強い。

領分を侵したのは賢人ではあるが、軍としては大量の死者が出ると燃やしていたのでダーデとしては「たかが火葬」という程度で何を騒いでいるのか理解が出来なかった。

キュアノとコムドも聖職者の印象はダーデと然程変わらない。

国の最高権力者と宰相の立場からすると、聞き流して見ていない振りが出来る状況では無かった。

コムド「謝罪しろと命令しても何故かと聞かれたら困りますな」

キュアノ「賢人は病気対策と土地の確保の為に提案しただけだろうからな」

コムド「かといって放置していても事態は悪くなります。教会には敬虔な信者、賢人には忠誠心の高い戦える奴隷がおりますので」

キュアノ「困ったものだ。賢人は利権を脅かす気も宗教に疑問を呈した訳でもないと伝えろ」

コムド「かしこまりました」

教会は矛を収めたものの、賢人以外はいがみ合う結果となる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

敬虔な信者達の店で品物を購入と売却を断られる様になり、街中で絡まれる事が多いと奴隷達が不満を溢す様になった。

賢人「女々しいな!」

そう賢人は笑いながらも奴隷達の暴発を抑えた。

更に8名の奴隷を買い、知識を脳に与えて勉学に励ませる。

1月程経った頃、1名の女奴隷が複数の男に強姦された末に暴行を受けて殺された。

そして1名の少年奴隷も酷い暴行を受けて腕を骨折した。

これに激怒した賢人は女奴隷が26歳だったので、少年の完治+26日は創造しないと宣言した。

誰が説得しても頑なに聞き入れず、それどころか都市の外に空き地を購入してそこを訓練所にして奴隷達に武器の扱いを教え始めた。

これに誰もが戦慄した。

奴隷の反乱が起きても不思議ではなくなった。

賢人と知識を与えられた者、元大工だった奴隷の手によって4階建てのコンクリート製の詰所を創造した。

賢人はあくまでも身を守る為の手段だと主張。

教会も慌てて信者達の自重を求め、キュアノも賢人が所有する奴隷達の自衛の為の武装を認めた。

キュアノ「何日程かかりそうか?」
コムド「50日は創造はしないでしょう」

キュアノ「……訓練で弾を使用するのは停止。配備した物は大事に使わせろ」

ダーデ「分かりました」

赤目も詰所に引き取られ、頭、胴に着ける鎧を開発した。


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