馬鹿な子に未来は託された。

八十三広

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赤熊軍団

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軍所有の赤熊が30匹に到達したので物資や兵員輸送能力が劇的に向上した。

ダーデ「賢人、これでしばらくは様子を見る。部下達も運用方法を考える時間がいるだろうからな」

賢人「じゃあ後はもらうよ」

賢人所有の赤熊が80匹を超えた頃、ミリアの陣痛が始まったと奴隷が報せを持ってきた。

賢人「お、そうか。男が帰ってもやる事は無いから頑張ってもらってくれ。代わりにリリアさんを帰すから」

リリアは都市に戻り、屋敷に入った。

リリア「何故医者と看護婦以外の者がこんなにも部屋でうろついているの! 少しでも清潔を保たなければならないのだから数を減らしなさい! 犬もこの場には必要ないわ!」

侍女の統括責任者と2名を残し、他は下がらせた。

リリア「奥方様、賢人様は森から出ず仕事に精を出すので奥方様は出産に精を出せと申しておりました」

ミリア「ええ……! リリア、悪いけど都市残し面倒を見ていて!」

リリア「かしこまりました。私も身が汚れているので下がります」

リリアは屋敷を退出して与えられた家に戻って身を清めた。

念入りに身体を洗い、汚れを落とす。
リリアも屋敷に詰めてその時を待った。

賢人は奴隷達の統括を務め、森の外へと下がっている。 

賢人「良いか。暑いんだから体調がおかしくなったら川で身体を冷やして動ける様になるまで森に入って涼むんだ。塩も舐めろ。頭もちゃんと冷やすんだ」

屋根を造設して日陰を作って体調を優先とした。
2日目にやっと産まれた。

王族誕生として3日間の休日を宣言したキュアノ。

賢人は都市から連れてきた奴隷を帰し、自身はキュアノやダーデとの会議もあるのでまだ帰る事は無かった。

キュアノ「どこの村でもかなりの薪の備蓄が完了したらしい。料理や風呂や暖を取る為の分もな」

ダーデ「軍でも備蓄が進んでおります」

キュアノ「城もな。が、先の騒動で大打撃を受けた貴族の懐がまだ潤っていない。それに薪や木材の価値は急落したおかげで貴族が連れてきた魔法使いや奴隷の手当てのせいで増えにくいようだ」

ダーデ「如何なさいます?」

キュアノ「森の攻略はやめて維持としよう。魔法使い達と樵は下がらせて奴隷達を残せば出費を抑えて死骸の採取で稼げるだろう」

賢人「木の価値は上げられるかも知れませんよ?」

キュアノとダーデは賢人を見た。

キュアノ「どうやってだ?」

賢人「王都を別の場所に作るんです」

キュアノ「……作る? 何処に?」
賢人「それは……村とかが乱立してる場所?」
ダーデ「それでは村が困るだろう」

賢人「今の王都にある城を壊せばかなりの家建てられるでしょ? それに、新しく王都を作れば家を建てる必要があるから木の価値も上がるんじゃないですか? 色んな所にいる大工も仕事が増えるし樵も森から下がる必要も無いし魔法使いも仕事が増える」

キュアノ「しかし……畑の問題もある」

賢人「王都周りの畑をあげればどうですか? 新しい王都ができたら着いてくる農家の人もいるだろうから維持は出来ませんし」

キュアノ「しかしな……多大な金が掛かる。まあ、一種の公共事業になって還ってくるが」

賢人「いや、そんなにすぐに王都は作らなくても徐々に作れば良いと思います。じゃないと資材が不足すると思います。物も人もゆっくり移動させないといけませんし。なんせ木材はこの森で採るんですから」

キュアノ「しかしな……」

賢人「貴族にも金を出させれば良いと思います。使い道が無くて困っている貴族もいるんじゃないですか?」

キュアノ「ふむ……金も回るか。しかし利権の問題もある」

賢人「利権というのが何なのかよくわかりませんけど、競い合ってより良くなるんじゃないですか?」

賢人は適当な事を言ったが、キュアノには大いに拝聴する意見である。

利権を掴み、足下を見て商売する物もいる。

何代にも渡って相続されてきた知識やノウハウも賢人がもたらした記憶の映像化によってそれを凌駕されている。

利権を掴んでいる者しか運用出来なかった事柄も他者が出来る可能性はある。

競走すれば権力も削れ、利益の独占も防げる。

ダーデ「私にはよくは分かりませんが、王都を代わられるのであれば軍部も追従する必要がございます」

キュアノ「……コムドの意見も聞いてからにしようか。しかし賢人は頭が柔らかいな。子供だからか?」

賢人「いや、日本でも首都の機能を分散させようかって意見もあったんです。じゃあロンギアルなら1から作り直すし木材も使うから価値が上がるんじゃないかと思って」 

ダーデ「機能の分散か。軍では関係はないが」

キュアノ「分散か。赤熊を増やせば流通も移動も楽になるから可能だな。本格的に考える。森の攻略は答えが出るまで一時打ち切りとするが、兵隊は森に入れて貴族達の死骸稼ぎは継続させよう」

ダーデ「私も帰って判断を待ちます。兵はもう慣れているので隊長に任せれば充分です」

キュアノ「うむ。賢人、すまないが森の維持と貴族達が諍わないか監視を頼む。偶にで良い」

賢人「分かりました」

2日後にキュアノはミリアと新しい甥と対面して王都へと帰った。








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