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第1話 憧憬

素顔 Episode:01

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◇Imad

 アイテム屋の方はハズレだった。

 ただ店のために言っとくと、別に品揃えが悪かったわけじゃない。
 ルーフェイアが欲しがるものが、レアすぎってやつだ。
 いきなり「精霊石が欲しい」とか言われて、店のやつ目を白黒させてたし。

「欲しかったんだけど……」
「欲しいってなぁ、んな物、あるわけないだろ」

「そう……なんですか?
 けど、これからどうしよう……」

 お世辞にも明るいとは言えねぇ店内から出てきて、まぶしそうにしながらルーフェイアが言う。

「なんだ、予定ないのかよ?」
「列車の切符……夕方、なんです」
「じゃぁ、どっかほか案内してやろうか?」
「ほんとに!」

 なんかこいつ、やけに嬉しそうだ。

「あたし、こういうとこ……あんまり、来なくて」

 ――はい?

 いったい、どーゆー生活してんだよ?
 けど貧乏でこれない、って感じじゃねぇし……。

 ――ま、いっか。

 とりあえず、街の中心へ向かって歩き出す。

「小っちぇえ町だし、たいしたもんないけどな」
「いいえ」

 なんでも街中歩けるだけでいいらしい。

 にしても変わってる、つうのかな? ちょっと普通じゃ信じらんない反応だ。
 と、大きな本屋の前でこいつが立ち止まった。

「あの、ここ……入ってもいいですか?」
「ああ」

 別に入ったって、誰も困らない。

 俺がうなずくと、ルーフェイアは喜んで店内へ駆け込んだ。
 しかもすっげぇ嬉しそうな感情、振りまいてくし。

 ――それにしたって女子ってふつう、服とかなんか見て回ると思ってたけどな?

 どうもこいつ、普通とは違うみたいだ。

 ただ当人はいたく満足げで、かなり広い店内をざっと一回りしてる。
 それからきっと好きなんだろう、歴史関係の棚の前で動かなくなった。

「すごい。ここっていろいろある……あ、もう!」

 こいつ小柄だから、高い棚に手が届かないらしい。

「これか?」

 代わりに取ってやる。

「すみません。――あ、これ詳しい」

 やっと見つけた、みたいな調子でぱらぱら本をめくるけど、レジへ持ってく気配はなかった。

「買わねぇのか?」
「買いたいですけど……重くなっちゃう。
 でもあとで落ちついたら、買いに来ようかな?」

 本の題名を覚えるようになぞりながら、妙なことを言いだす。
 けど落ちついたらって……旅行ってワケじゃなさそうだし、引っ越してきた感じでもないし。
 なんとも見当つかない。

「これと……あとこれと……」
「なにメモってんだ?」
「ええ、いろいろ」

 結局、こいつ一冊も買わずに出てきた。なんか題名と出版社、それにちょこっと内容をメモっただけだ。

 ――きっと店のやつ、ヤだったろうな。

 もっとも本人はンなこと、考えちゃねぇけど。
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