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第1話 憧憬
約束 Episode:04
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「どうにか、なんねぇのかよ?」
俺の問いに、こいつは静かに首を振る。
そして微笑んだ。
「大丈夫、あたし慣れてるし……勉強もちゃんと、してるし……」
「ま、マジメ、なんだな」
俺なんざ勉強は、逃げられるだけ逃げてるってぇのに。
ルーフェイアのほうは俺の答えに不思議そうな顔になって、「勉強がいちばん楽しい」っつー、とんでもないこと言ってる。
「お前さ、少しダチと遊ぶとかなんとか、したほうがいいぞ?」
「ダチ……?」
なんか言葉、通じてねぇし。
「んと、友達。いるだろ?」
「ううん……。
あ、でも、兄さんとか隊員の人とか……ヒマなら相手、してくれるの」
「なんだよそれ――」
もう、ガッコどこの話じゃない。
要するにこいつはどっかの軍の中みてぇなとこで、ダチもなしにただ戦って……。
なんか腹が立った。
こいつから伝わってくるのは、悲しさばっかだ。なのに口と表情じゃ、平気な顔してる。
だからよけい、腹が立った。
「やめろよ」
「え?」
「そんな生活、やめちまえよ!」
自分でも、何で腹が立つかはわからない。けどどうにも許せなかった。
そんな俺を呆然と見るルーフェイアの瞳に、急に涙があふれる。
「ごめん……」
「え? あ、いや、泣くなよ。そのさ、お前に怒ったわけじゃ、ねぇから」
女子に泣かれたことなんかねぇから、めちゃくちゃ対処に困る。
けどよっぽどこたえちまったのか、どんだけ慰めてもこいつは泣きやまなかった。
「な、頼む、もう泣くなって」
「ごめんなさい!」
ずーっとこれの繰り返しだ。
結局俺は、泣きやむのを待つしかなかった。
ルーフェイアのやつを見ながら思う。
たぶんこいつは……今の生活が、気にいってるわけじゃないんだろう。でもなんでだか、それをやめようとは思ってない。
不思議だった。
それとも、なんか弱みみてぇなのがあって、どうにもならないのか。
「……だいじょぶか?」
少し収まってきたのを見て、訊いてみた。
さっきとちょこっとだけ、違う答えが返ってくる。
「ご、ごめんなさい……うん、だいじょうぶ……」
言いながらルーフェイアのやつが、涙をぬぐいながら顔を上げた。
あんだけ泣いてさすがにばつが悪りぃのか、俺のほうは見ないで時計に目をやる。
「あ、いけない……」
もっかい涙をぬぐって、こいつが立ち上がった。
「どした?」
「時間が……」
「へ?」
間抜けすぎる返事をしちまってから、思い出す。
「そいや、列車がどうとか言ってたっけな」
「うん」
ルーフェイアのやつがうなずいた。
「急がないと。
えっと、駅、どっち……?」
俺が街中引きずり回しちまったから、現在位置がわかんなくなったらしい。
「こっちだ」
この町だったら俺のほうが断然土地カンがあるから、言葉と一緒に走り出した。
ルーフェイアも走り出す。
俺の問いに、こいつは静かに首を振る。
そして微笑んだ。
「大丈夫、あたし慣れてるし……勉強もちゃんと、してるし……」
「ま、マジメ、なんだな」
俺なんざ勉強は、逃げられるだけ逃げてるってぇのに。
ルーフェイアのほうは俺の答えに不思議そうな顔になって、「勉強がいちばん楽しい」っつー、とんでもないこと言ってる。
「お前さ、少しダチと遊ぶとかなんとか、したほうがいいぞ?」
「ダチ……?」
なんか言葉、通じてねぇし。
「んと、友達。いるだろ?」
「ううん……。
あ、でも、兄さんとか隊員の人とか……ヒマなら相手、してくれるの」
「なんだよそれ――」
もう、ガッコどこの話じゃない。
要するにこいつはどっかの軍の中みてぇなとこで、ダチもなしにただ戦って……。
なんか腹が立った。
こいつから伝わってくるのは、悲しさばっかだ。なのに口と表情じゃ、平気な顔してる。
だからよけい、腹が立った。
「やめろよ」
「え?」
「そんな生活、やめちまえよ!」
自分でも、何で腹が立つかはわからない。けどどうにも許せなかった。
そんな俺を呆然と見るルーフェイアの瞳に、急に涙があふれる。
「ごめん……」
「え? あ、いや、泣くなよ。そのさ、お前に怒ったわけじゃ、ねぇから」
女子に泣かれたことなんかねぇから、めちゃくちゃ対処に困る。
けどよっぽどこたえちまったのか、どんだけ慰めてもこいつは泣きやまなかった。
「な、頼む、もう泣くなって」
「ごめんなさい!」
ずーっとこれの繰り返しだ。
結局俺は、泣きやむのを待つしかなかった。
ルーフェイアのやつを見ながら思う。
たぶんこいつは……今の生活が、気にいってるわけじゃないんだろう。でもなんでだか、それをやめようとは思ってない。
不思議だった。
それとも、なんか弱みみてぇなのがあって、どうにもならないのか。
「……だいじょぶか?」
少し収まってきたのを見て、訊いてみた。
さっきとちょこっとだけ、違う答えが返ってくる。
「ご、ごめんなさい……うん、だいじょうぶ……」
言いながらルーフェイアのやつが、涙をぬぐいながら顔を上げた。
あんだけ泣いてさすがにばつが悪りぃのか、俺のほうは見ないで時計に目をやる。
「あ、いけない……」
もっかい涙をぬぐって、こいつが立ち上がった。
「どした?」
「時間が……」
「へ?」
間抜けすぎる返事をしちまってから、思い出す。
「そいや、列車がどうとか言ってたっけな」
「うん」
ルーフェイアのやつがうなずいた。
「急がないと。
えっと、駅、どっち……?」
俺が街中引きずり回しちまったから、現在位置がわかんなくなったらしい。
「こっちだ」
この町だったら俺のほうが断然土地カンがあるから、言葉と一緒に走り出した。
ルーフェイアも走り出す。
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