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第3話 葛藤

誤解 Episode:06

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「わわわ、ルーフェ泣かないで!
 ゴメン、ちゃんといっしょにご飯食べるよ!」

 苛酷な環境から抜け出したばかりの少女は、まだかなり情緒不安定で、ちょっとしたことで泣き出すのだ。

 ――単に泣き虫の可能性もあるが。

 どちらにせよ、このまま泣かせておくわけにはいかない。

「と、ともかくホラ、いっしょに食堂行こ」

 慌てて手を引いて食堂へ向かおうとすると、一瞬ルーフェイアが、クラスメイトのほうに視線を向けた。

(なるほど)

 さすがにこんどは、この子の望みがロアにも分かる。

「ほら、そこの3人! キミたちもこっち来て、いっしょにご飯食べなさい」
「へ? オレらっすか?」

 そういうつもりはなかったのだろう、彼らが面食らう。

「オレら、食堂までいっしょに来ただけなんスけど……」
「こらこら、先輩の言うことはきかなきゃダメだろ。ルーちゃんとご飯食べられるなんて、うん、大賛成」

 このあたりはいっしょにつるんでいても、温度差があるようだ。

「けどなぁ……」

 今ひとつ煮え切らないクラスメイトの前で、ルーフェイアが悲しそうに視線を落とした。

 ―― 一撃必殺。

「あー分かった分かった、いっしょに食うから泣くなっての」
「そそ、ルーちゃんだいじょうぶ、心配しなくていいからね」

 エレニアが、やれやれとため息をついた。

「まったく、みんなルーフェイアには弱いわよねぇ」
「そう言われてもさー」

 なぜと問われたら困るのだが、この子を見ていると、守ってやらなければならない気がしてくるのだ。

 年より小柄で、性格も幼いせいかもしれない。
 そんなルーフェイアを真ん中に、ぞろぞろと食堂へ移動する。

 シエラの食事のメニューはシンプルだ。
 日替わりで朝は一種類、昼夜は二種類のセット物、あと飲み物がお茶など何種類か。
 ただおかわりは自由だし、味もけして悪くない。

 何よりここに来る子の多くは、満足に食事もできなかった時期がある。
 そのせいもあって、タダでお腹いっぱい食べられればとりあえず十分、という子がほとんどだった。

「ルーフェはさっぱりセットだね」
「あ、はい」

 選んでやり、そろえてやり、席を取ってやり、重そうなら代わりに持つ。
 孫に甘い祖父母もかくやというほどの、可愛がりぶり過保護ぶりだ。

「ルーちゃん良かったね、先輩にすごく可愛がってもらって」
「いや、なんつーか、可愛がりすぎだろ」
「そうよねぇ、私もちょっと心配で」

 うしろでエレニアはじめ、一同のそんなつぶやきが聞こえたが、ロアは気にもしない。
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