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第7話 力の行方

策略 Episode:07

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◇Sylpha

 ルーフェイアが行ってしまうと、急に周囲が寂しくなった。
 華奢で繊細で泣き虫だが、あの少女には華がある。

 そのあたりのテーブルからグラスを取って、さりげなく辺りを見回していると、声をかけられた。

「いっしょに踊ってもらえませんか?」
「――すまない、失礼する」

 それだけ言って場所を変える。

 育ちの良さそうな貴族の子弟たち。
 殿下もそうだが、自分の力で得たわけでもないのに「権力」というものを振りかざして、平然としている。

 彼らから地位と権力を取ったら、恐らくなにも残らないだろう。

 ――つまらない、な。

 実力の伴わない力など、所詮は付け焼き刃だ。
 頼ろうものなら必ずどこかで足を掬われる。

 なんとなく胸元のペンダントをいじって、タシュアを思い出した。
 彼と比べればこの会場にいる貴族の子弟など、石ころにしかみえない。

 桁外れの実力と、それをさらに上回る精神力。
 普段それを見せることはないが、タシュアは付け焼き刃などという言葉とは無縁だ。

 今ごろ、何をしているのか。
 と、気配がした。

「――エレニア、どうした?」
「それが先輩、ちょっと困ったことが……」

 どうしたものか、そんな表情でこの才媛が起こったことを報告する。

「あの殿下にも困ったものです。とりあえず下級生たちが、あとをつけてはいますけれど」

 さすがに呆れているようだ。

「殿下は……今どこに?」
「つい先程、屋外へ。ナティエスが知らせてきました」
「まずいな。行こう」
「はい」

 二人で急いで向かう。

「他の子は?」
「全員外です」

 脚にまとわりつく裾をさばきながら、横切っている会場が、どこかおかしい気がした。
 さっきまでと何かが違う。

 なんだかやけに引っかかったが、私はともかく外へ急いだ。殿下のことのほうが先だ。

「あ、先輩!」

 シーモアとナティエスが振り向く。

「殿下は?」
「あっちです」

 二人の案内で、庭園の奥へ走り出す。
 だがとつぜん前に、何人もの男たちが立ちはだかった。

「この奥は危険ですよ、お嬢さんがた。早く会場へお戻りなさい」

 警護役の男が、声をかけてくる。

 ――そういうことか。

 さっきの違和感の正体を知る。

 ここの警護役は当たり前だが、私たちとは面識がある。
 だから私たちにむかって、こんなふうに声をかけることはない。

 それを知らないと言うことは……。

「さぁ、会場へ戻りましょう。案内しますよ」

 男の様子にほぼ間違いないと見て、ドレスの裾に手をかける。
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