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第8話 言葉ではなく

知らせ Episode:07

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◇Rufeir

「おーい、メシできたぞ」

 そう言って入ってきたイマドに、真っ先に反応したのは、子供たちだった。

 聞いたところでは3人とも、ベルデナードのスラムからここまで来たらしい。
 ただどうしてケンディクへ来ることになったのかはまでは、どうしても話してくれなかった。

「うひゃぁ、ご馳走だよ!」

 3人のなかではいちばん年かさらしい少年が、目をまるくした。

「うわぁ、いっぱいだ~!!」
「すっごぉい、これ全部食べていいの?!」

 大騒ぎになる。

「……そこらへんのありあわせだって。まぁいいや、しっかり食えよ?」
「うん!」

 一斉に手が伸びる。
 たちまち奪い合いが始まった。

「あ、だめよ、ケンカなんかしちゃ……ほら、たくさんあるんだもの」

 急いで間に入る。

「けど、こいつ俺の盗ったんだぜ!」
「ちがうよ、これあたしのだもん!!」

 この子達、満足に食べていなかったんだろうか? 自分の分を確保するのに必死だ。

 ――こんなに小さいのに。

 スラムは過酷だと聞いたことがあるけど、急に実感して悲しくなる。
 あたしも戦場は辛かったけど、こういう思いはしたことがない。

「あれっ、お姉ちゃんどうしたの?」
「あ~、泣かした~!!」
「俺じゃないぞ!」

 子供たちに騒がれて、自分がつい涙をこぼしていたことに気付く。

「あ、えっと、違うの。ケンカするほど……みんながお腹、空かせてたんだって思って……。
 ――ゆっくり、食べてね?」

 三人が静まり返った。

「どうしたの?」
「――ごめんなさい。もうケンカしない」

 子供たちが口々に謝る。

「そんな、いいのよ。あたしがすぐ泣いちゃうのが悪いんだもの。
 ほら、ミルクもあるからね」

「うん、お姉ちゃんありがと!」

 今度は三人とも、ケンカをせずにお行儀よく食べ始めた。その姿にほっとする。

「おい、これお前のな」

 ぼうっと子供たちを眺めていたら、イマドがお皿を出してくれた。
 子供たちの分とは別に、ホットサンドが乗せられている。

「ありがと」

 あたしはどうも生存競争に弱いから、わざわざわけておいてくれたんだろう。

 それにしてもイマド、いったい何人分作ったんだろう?
 子供たちのはきっちり3人前以上あるし、自分の分も2人前くらい確保している。

 ――子供5人で7人前とか?

 すごいとしか言いようがない。
 半分呆れながら、あたしも手をつけた。

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