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第8話 言葉ではなく
古巣 Episode:12
しおりを挟む「で、仕返しってワケか」
なんの感情もない静かな声で、イマドのヤツが確認してきた。
「そうなるかな。まぁどっちにしたって、これを放っておくわけにはいかないしね」
「でも、何も……」
抗争までやらなくていい、ルーフェイアのヤツはそう言いたいんだろう。
滅多やたらに強いくせに、この子は争いごとは大っ嫌いだ。
けどその言い分は、ここじゃ通らない。
「自分でオトシマエつけらんないようなヤツは、ここじゃ暮らしてけないんだよ」
どれだけきっちりカタをつけられるか。それがこのスラムでの価値だ。
ましてやチームで保護してるガキがやられたのに、何の行動も起こさなかったら、そのうちこっから追い出されるか、ナメられて潰されるのがオチだ。
ルーフェイアは黙ったままだった。多分どうしていいか、わかんなくなってるんだろう。
「さて、約束だよ。理由話したんだから帰ってもらう」
こういうとまたこの子、泣き出しそうになった。
「そんな顔しなさんなって。
全部片付いたら、ちゃんと帰るさ」
「そうそう。だいいちあたしたち、学院生なのよ?
ちょっとやそっとじゃケガもしないもん。だから安心して待っててね」
ナティのやつが上手く言葉を添える。
「シーモア、ナティエス……」
ルーフェイアの瞳から、また涙がこぼれた。
「――おい、とりあえず行くぞ」
泣いてるこの子を、意外にもイマドがうながす。
「でも……」
「しゃぁねぇだろ、約束なんだし」
ルーフェイアはイマドには逆らわないから、しぶしぶながらも従った。
ドアを開けて二人を送り出す。
「悪いねイマド、この子頼むよ。
それとウィン、この二人をちゃんと外まで送ってやんな」
「おっけー」
ドアのところで、ルーフェイアが立ち止まった。
半泣きの顔で訴えてくる。
けど今度も、イマドがその背を押した。
「ほら、行くぞ。
じゃぁな、シーモア」
ウィンに続いて、あっさりと二人も出て行く。
――って、やけに素直じゃん。
見かけによらず食わせもののイマドが、すんなり帰ったのが気にはなったけど、その時はあたしはそれ以上考えなかった。
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