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第8話 言葉ではなく

団欒 Episode:06

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「平気平気。だいいちオイラ、ここ育ちだぜ?
 ――おばちゃん、サンキュ。ねぇちゃん、にいちゃん、またな!」

 弾けるようにウィンが出て行った。
 その後ろ姿に、イマドが苦笑する。

「あのバカ、もう出来てんだから、食ってきゃいいのによ」
「出来てってあんた――夕食までやってくれたのかい?」

 今度はおばさんが呆れ顔になった。

「すいません。つい」
「いや、それはいいんだけどさ……大変だったろう?」
「そうでもないです。けっこう寮なんかで、みんなに作らされてますから」

 思わず可笑しくなる。

 イマドが料理上手なのは、学院では有名だ。
 何かあるたびに食事は彼が作らされているし、それ以外にも、よくあたしに作ってくれる。

「あんた、いい嫁さんに……あ、いや、そうじゃないか。
 ともかくもうひとり帰ってくるから、そうしたらありがたく、夕飯いただこうかね」

「もうひとり……ご主人ですか?」

 そう言うとおばさんが、手をひらひら振って笑った。

「ダンナなんてちゃんとしたもの、いるわけないだろ。いちばん上の子だよ。いつもは家に寄り付かないのに、今夜は帰るって連絡があってね。
 ――ほら、噂をすればだ」

 言っているうちにドアが開いて、20歳くらいの男の人が入ってきた。

 身長はタシュア先輩と同じかそれ以上で、身体つきはもっとがっしりしている。
 髪は栗色で瞳は青灰色。ただ肌は、ずいぶん日に焼けていた。

「なんだ、お客がいるのか」

 瞬間はっとする。

 ――この人、並じゃない。

 ちょっと見ただけじゃ分からないけれど、視線の配りかたや動きかたが、普通じゃなかった。
 これは……いつも人を殺している人間の動きだ。

(イマド……)

 隣にいたイマドに思わず囁く。

(心配すんな。最初から俺の目当てはこいつだ)

 例によってなにもかも見透かしてるらしい彼が、やっぱり囁き声で返してきた。

 ただそうは言われても、落着かない。
 なにしろこれだけの人だ。きっとすぐ、あたしたちの素性に気がつくだろう。

「ずいぶん可愛い子だな。誰の友達――」

 思ったとおり、言葉の途中でこの人が、あたしの太刀に目を留めた。

 瞬間、ナイフが抜かれて殺気がほとばしる。
 あたしも思わず身構えた。

「お前ら、連中の回しモンかっ! 人んちあがりこみやがって、ぶっ殺してやるぜ」

 室内に緊張が走る。
 けどどうかなるより早く、おばさんが怒鳴りつけた。

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