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第8話 言葉ではなく

推論 Episode:09

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 だから案外このスラムって安全だし、あのおじさんたちもここにいる限りはチクられるなんてこと、ないし。

「ただその分、クリアゾンはサツとは最悪に相性が悪いの。目の敵にされてるって言ってもいいかしら。
 で、そこへ新参者のファミリー連中がつけこんできたのよ」

「つけこまれた……?」

 あらら。
 ルーフェイアったら、まだ話が見えないみたい。

「そ。つけこまれたの。
 ファミリー連中がサツと結託しちゃったのよ」

「そんな……!」

 あ、やっと通じた。

「抜け目ねぇな~。
 まぁこの国、サツも軍もたるんでるからなぁ」

 イマド……。

 ――こいつもホントわかんない。

 確かに言ってることはウソじゃないけど、それを堂々と言っちゃうんだから、どういう神経してるんだろ?
 この図太さ、あのミル――今はアヴァンに帰ってる――といい勝負かも。

「でも、警察って……普通は取り締まるほうなのに……」

 呆然と言うルーフェイアに答えたのは、ダグさん。

「だから賄賂さ。そのファミリーとやらがサツに金ばら撒いて、何やっても平気なようにしちまったんだよ。
 なにせこの国ときたら、軍のヤツもサツの連中も、空っケツでぴーぴー言ってるからな。はした金だって簡単にまるめこまれちまう」

「………」

 彼の説明に、よっぽどびっくりしたみたいでルーフェイア、黙っちゃうし。

「でもそうすると、なんだって連中が、ガキ殺したりしたんですかね?」
「そこなのよね……」

 これにはみんなで思案顔。

 だってファミリーの連中が狙うとしたら、普通はクリアゾンの関係者。なのにいくら凶悪(笑)って言えども、ひとつ下にあたるあたしたちのとこ狙うなんて、なんか辻褄あわない。

「俺らをぶつけ合って、潰すのが目的じゃねぇか?
 自分で言うのもなんだが、俺らとガルシィのチームはクリアゾンを除きゃ、ここじゃ最強だ。
 俺らがいなくなりゃ、あとは雑魚だけってことになる」

「え~?」

 ダグの言葉に、思わずそんなこと言っちゃったり。
 けどそう思ったの、あたしだけじゃなかったみたい。

「潰して……どうする?」

 ガルシィの言葉に、レニーサさんも乗って。

「ディアスの言う通りよねぇ。クリアゾンの方を潰すんならともかく、悪いけどあなたたちを、そこまでして潰す必要があるとは思えないわ」

 ――だよね。
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