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第8話 言葉ではなく

追跡 Episode:10

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「シーモア、大丈夫だったの?」
「ああ」

 成り行きを見てたみんなが、心配そうに声をかけてきた。

「ルーフェイアのお袋さんが入ってくれたからね」
「そっか。でもよかった」

 けどほっとしてもらってるヒマがない。

「みんな、ここから急いで退こう。
 それと退きながら、手分けして他の連中に連絡つけないと」

 ここであたしが襲われたってことは、多分ファミリーのやつらのアジトが近い。
 だからこんな風に尾けられたときのために、あいつらみたいな兵隊が見張ってて、場所を突きとめられるのを防いでるんだろう。

 逆に言うなら、だからこそ今まで分からなかったってことだ。

「けど、あのヤク売りどうすんの?」
「そっちはルーフェイアの親父さんが、尾けてるってさ」

 なんでもこの親父さん、昔はここじゃ知られてたらしい。
 ナティも納得したらしくてうなずいた。

「じゃぁそっちも大丈夫かな。
 けどおばさん、どうしてここにいるんですか? 確かどっかへ行くってさっき……」

 それはあたしも不思議だ。
 確かスラムの外へ情報集めに行くって言ってたのに、こんなに早く片付いたんだろか?

「なぁによ、あたしが帰ってきたら困るみたいな顔しちゃって。
 ちょっとツテがあってね、この手の情報はすぐ集まるのよ、あたしは」

 ――やっぱこのおばさん、ヘンだ。

 でも本人はこれが普通らしいし。

「もっとも最初っから、アタリはつけてたんだけどね。
 で、戻ろうと思ってスラムの入り口でディアスと合流して、近道してたら妙な連中がいるのに気付いたってワケ」

 それでつけてきたらあの騒ぎになって、思わず割って入ったんだって言う。

「ともかく早く帰りましょ。じきディアスも……あら、戻ってきたわ♪」

 ダンナが戻ってきてこの人、妙に嬉しそうだ。
 しかもダンナはダンナで飄々としてるし。

「どう、首尾は?」

 ルーフェイアのお袋さんにそう言われて、親父さんのほうが黙って親指を上げた。

「そ。さすがディアスよね~♪ じゃぁあとは、帰って作戦でも練りますか。
 あ、そうそう。悪いけどディアス、その荷物持ってよ」

 気絶してるヤツをダンナさんに押しつけて、おばさんが歩き出す。
 って、だからそっちは……。

「反対ですってば」
「あら、そうだったっけ?」

 ――ホントにこの人、大丈夫なのかね?

 なんか不安になりながら、あたしらは引き上げた。
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