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第8話 言葉ではなく

追跡 Episode:16

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 ――ほんと、我が娘ながら凄いわね。

 この魔法の使い分けとコントロールだけは、どうあがいてもあたしじゃかなわない。
 まぁだからこそ、15歳でシュマーの総領になることを、約束されてるわけだけど……。

 あと、およそ3年。
 たったそれだけでこの子はあたしの代わりに、数千人の頂点に立つことになる。

 あと僅か3年で……。

「――母さん?」

 ちょんちょん、とルーフェイアが服の裾を引っ張ってきた。

「どうかしたの?」
「あ、なんでもないわ。

 それよりルーフェイア、あんた相変わらずたいしたもんじゃない」
 この言葉に、ルーフェイアが怪訝そうな顔を見せる。

「母さん……ほんとに大丈夫?」
「どういう意味よ」

 可愛い娘だけど、こういう言われ方されるとちょっと不満。

「だって、母さんが……そんな風にあたしのこと、言うなんて……」

「あぁ、そういう意味? 別にどうもしてないわよ。しばらく見なかったけど、やっぱりさすがだと思っただけだから」

 ――あら大変。

 言った瞬間ルーフェイアの顔が曇っちゃって、微妙にアレなところに触れたのに気づく。
 このまま放っておいたら、この子ってば泣き出しちゃうわね。

「ごめんごめん、そういうつもりじゃなかったのよ。
 さ、イマドかディアスのとこにでも行ってなさいね。あたしはこっち片付けちゃうから」

 幸い間に合ったみたいで、この子が泣き出さないうちに手が打てた。
 で、今度は男たちに振り向いて一言。

「でね、あなたたちにはちょっと、聞きたいことあるのよ」

 聞ける相手は四人。
 うちひとりは、あたしが捕まえてきたファミリーの兵隊。

 残る三人のうち二人も、どうみても用心棒。装備見れば分かっちゃう。
 けど、わざと知らなそうな人間に訊いてみた。

「さ、ボスの『今の』居場所を教えてもらいましょうか?」
「し、知らねぇ……」

 ――なによ。

 にっこり笑って問い掛けてあげたのに、こいつったら後ずさったりして。

「知らないわけないでしょ。ボスからの命令無しに、あんなことできるわけないんだから」
「知らねぇものは知らねぇよ!」
「あらそう」

 まぁこんなただの用心棒が何か知ってるとは、あたしも思わないけど。
 もっともわざわざ訊いてるのには、当然下心アリ。

「素直に言ってくれれば、手荒なマネしなくてすむんだけど?」
「だから、知らねぇって言ってるだろ!」

 質問してあげてる男の顔色が変わる。
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