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第8話 言葉ではなく

戦闘 Episode:20

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「あたしが連絡しといたから、裏取ってすぐに動いてくれたみたいね、リオネルは」

 母さんが自慢げに胸を逸らす。

「どぉ、見なおしたでしょ♪」
「母さん、娘に威張ってどうするの……」

 このやりとりに周囲から笑い声が起こって、恥ずかしくてしょうがない。

「事実だからいいの」
「よくないってば……」

 事実は事実だろうけど、それを母さんが威張るのは、ちょっと違うんじゃないだろうか?

 でも、それを気にしてくれる母さんじゃない。
 あたしの気も知らずに、話を続けてる。

「あと情報じゃ、リオネルが憲兵をマルダーグ大佐のお宅に向かわせてるらしいわ。だからじき、一連の騒ぎも収まるでしょ」

「そっか……」

 それなら黒幕も捕まって、今回の大騒動は収まるだろう。

 でもなんだかあたしは、寂しい風が吹き抜ける気分だった。

 確かにこれで「ファミリー」を名乗る犯罪組織が捕まって、スラムにも平穏(?)が戻るだろう。
 実際、「祭り」も中止になった。

 だけど殺された子供たちは帰ってこないし、この戦闘で出たはずの死者も生き返るわけじゃない。
 それに何より、このスラムの人たちの生活が変わるわけじゃないから……。

「――あんた、いい子よね」

 うつむくあたしの頭を、母さんが撫でた。

「ホントどこでどう間違えたんだか、うちの人間にしちゃ優しすぎだわ。
 けどそれにしても、どうやってこのクモ倒したのよ?」

「く、クモ……!!」

 母さんの言葉に、壊れた人形を振り返る。

 6本の足に2本のツメ。
 言われてみれば確かに、蜘蛛にも見えた。

 ――戦ってる時は、カニに見えたんだけど。

 でも一度そう言われてしまうと、クモにしか見えない。

 鳥肌がたってくる。

「おい、ルーフェイア、お前顔色悪りぃぞ? どうかしたのか?」
「あたし、あたし、クモ……」

 これだけは大っ嫌いだ。ゴキブリの方が何十倍かいい。

「いやぁっ! 誰か片付けてぇっっ!!」

 周囲が呆れかえる中、あたしはそのままそこへ座り込んでしまった。
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