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第9話 至高の日常
遊戯 Episode:07
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「――今も精霊を憑依させているのですか?」
「はい」
訊かれてルーフェイアは、素直にうなずいた。
タシュアの表情がちらりと――私にしか分からないだろうが――険しくなる。
「普段から精霊に頼るのは、考えものですよ」
しかし言葉には微塵もそれを見せず、いつもと同じ声音だった。
「ルーフェイア、本当に、大丈夫なのか?」
私も心配になって尋ねる。
シエラ学院では確かに精霊の使用を認めているが、それでも上級傭兵か候補生に限られ、それ以下の子供が使うのは禁止されている。
それというのも、公式には何事もないということになっているが、精霊を使うと稀に精神汚染を起こすというのは公然の秘密だからだ。
それなりに大人の上級隊でさえ、一定の危険はあるのだ。
ましてや小さい子が使った場合、「喰われる」可能性はかなり高かった。
またそうでなくとも精霊には、身体機能を強引に引き上げる作用がある。
そんなものを成長途中の小さな子が使って、ただで済むとは思えない。
ルーフェイアが重さを感じなかったのはこのせいだろうが、それだけに心配だった。
「私も、普段から精霊を憑依させるのは、よくないと思うが……」
この子の表情が翳る。
どきっとするような、子供らしくない哀しげな表情。
「いや、その――今までそうしていたなら、大丈夫なんだろうが」
言い繕った私の言葉に、ルーフェイアが寂しげに微笑んだ。
次いでその手に光がわだかまって、二つの石になる。この子が精霊を外したのだ。
「二体も憑依させていたのですか」
「――はい」
タシュアの声は相変わらずだったが、珍しくこの子は泣かなかった。
碧い瞳に、その年齢からは考えられない悲しさをたたえながら、手の上の石を見つめている。
なんだかいたたまれなくなって、私は口を開いた。
「その精霊は……炎系か?」
石化させた精霊は、たいていその属性に応じた色を持つ。
二つ持っているうちのひとつは、紅みを帯びているから、たぶんそうだろう。
「えっと、炎系の……サラマンダーなんです」
あまり聞かない精霊の名前を、この子は口にした。
「はい」
訊かれてルーフェイアは、素直にうなずいた。
タシュアの表情がちらりと――私にしか分からないだろうが――険しくなる。
「普段から精霊に頼るのは、考えものですよ」
しかし言葉には微塵もそれを見せず、いつもと同じ声音だった。
「ルーフェイア、本当に、大丈夫なのか?」
私も心配になって尋ねる。
シエラ学院では確かに精霊の使用を認めているが、それでも上級傭兵か候補生に限られ、それ以下の子供が使うのは禁止されている。
それというのも、公式には何事もないということになっているが、精霊を使うと稀に精神汚染を起こすというのは公然の秘密だからだ。
それなりに大人の上級隊でさえ、一定の危険はあるのだ。
ましてや小さい子が使った場合、「喰われる」可能性はかなり高かった。
またそうでなくとも精霊には、身体機能を強引に引き上げる作用がある。
そんなものを成長途中の小さな子が使って、ただで済むとは思えない。
ルーフェイアが重さを感じなかったのはこのせいだろうが、それだけに心配だった。
「私も、普段から精霊を憑依させるのは、よくないと思うが……」
この子の表情が翳る。
どきっとするような、子供らしくない哀しげな表情。
「いや、その――今までそうしていたなら、大丈夫なんだろうが」
言い繕った私の言葉に、ルーフェイアが寂しげに微笑んだ。
次いでその手に光がわだかまって、二つの石になる。この子が精霊を外したのだ。
「二体も憑依させていたのですか」
「――はい」
タシュアの声は相変わらずだったが、珍しくこの子は泣かなかった。
碧い瞳に、その年齢からは考えられない悲しさをたたえながら、手の上の石を見つめている。
なんだかいたたまれなくなって、私は口を開いた。
「その精霊は……炎系か?」
石化させた精霊は、たいていその属性に応じた色を持つ。
二つ持っているうちのひとつは、紅みを帯びているから、たぶんそうだろう。
「えっと、炎系の……サラマンダーなんです」
あまり聞かない精霊の名前を、この子は口にした。
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