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第9話 至高の日常

策謀 Episode:03

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「先輩、連中もしかして、2時間ごとに見張り交代してます?」
「ええ」

 ――さすが。

 けどそれを黙ってるあたりが、この先輩なんだよな……。

「えっと、毎時ちょうどでしたよね?」

「そうです。
 もっとも正確に言えば、3分程前に交代要員がナースステーションから割り当ての場所へ出て、0分で交代ですがね」

「あ、なるほど……」

 よく見てる。
 でもこれが分かりゃ、突入ががぜん楽になるってやつだ。

「当たり前ですけど、突入するんだったらその時間狙ったほうが、いいですよね?」
「当然です」

 ごちゃごちゃ質問するのが、さすがに気になったんだろう。この先輩が「何をを企んでるのか」って顔でこっち見たけど、俺は説明しなかった。

 だいたいが、説明するとなったら大ゴトだ。
 それから少し待つ。

(先ほどの、ケイカですが……)

 案の定、どっかからさっきの女の人が話しかけてきた。

(今、よろしいですか?)
(だいじょぶです)

 ――誰なんだろな?

 答えながら、少しだけ悩む。
 いちおう自己紹介?は貰ってるけど、面と向かって顔つき合わせたワケじゃねぇから、なんかピンとこなかった。

 もっともこゆこと出来るシュマーの人間で俺が知ってんのは、ルーフェイアのお袋ひとりだけだから、分かるほうがおかしい。

 んなこと考えてるうちに、向こうから予想通りのコトを訊かれた。

(先ほどお願いしていた件を、知りたいのですが)
(えーと)

 人数やら武器やら見張りの交代やら、整理しといたことをまとめて送る。

 このやり方のいいとこは、こゆ面倒な話も簡単に終わるってとこだろう。
 微妙な位置やらなんかが、言葉以上にきっちり伝わる。

 けど向こうは、これでも満足しなかった。

(見張りの交代等、犯人グループの詳細については承知しました。
 それで申し訳ありませんが、各病室の様子を詳しく伝えていただけませんか?)

(病室の……?)

 質問の意味が、イマイチ分かんねぇ。
 だいいち建物内の見取り図は、向こうこそ持ってるはずだ。

(どこで誰が何してるか、ってんですか?)
(いえ、『どこが空いているか』が知りたいのですが)
(はぁ?)

 よけい意味が不明だ。
 向こうも通じてないのがわかったんだろう、補足の説明が来る。
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