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第9話 至高の日常

策謀 Episode:08

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 同じことをシルファ先輩も思ったらしかった。

「だがタシュア、子供たちは――大丈夫なのか?」

 心配そうに訊いてる。

「――それなんですけど」

 シルファ先輩の後に俺は口を挟んだ。

「ルーフェイアのやつが、ここ来るってんですよ。んで、ガキんちょの中に紛れ込むって言ってますけど」
「ルーフェイアが? 大丈夫なのか?」

 先輩が、また少し心配そうな表情になる。

「まぁあいつ、ケタ狂ってますから」
「それはそうだが……」

 シルファ先輩、否定しねぇし。
 けどあいつは実地で鍛えてっから、実際問題上級傭兵顔負けだ。

「まったく、何にでも首を突っ込みたがりますこと。
 ですが彼女がやるというなら、恐らく大丈夫でしょう」

 タシュア先輩、毒舌冴えまくってるし。
 ただ相手の力量はちゃんと認めるあたりは、この先輩は公平だ。

「潜入の方法は訊いていますか?」
「懸垂降下でこの階のどっかの病室に、潜り込むって言ってましたっけ」
「……ほう」

 先輩が面白がるみてぇな声を出す。

「懸垂降下と言うからには、ここの屋上へ上がるのでしょうが……どうするつもりやら」
「巨鳥、使うって言ってましたよ。ついでに上級隊も、屋上に展開させるらしいです」

 先輩二人の表情が変わる。

「まったく、贅沢な作戦を取りますこと」
「たしかに屋上へ上がるには効果的だが……何羽要るんだ?」

 言い分はもっともだ。巨鳥で屋上に展開とか言ったら、ふつうは十何羽が逃げて無駄になっちまうし。
 けど、今回は違うわけで。

「ルーフェイアのヤツ、キエーグのベルト使って、一度に何人も運ばせる気らしいですけど」
「………」

 シルファ先輩はもちろんさすがのタシュア先輩も、こん時だけはなんも言わなかった。

「言われてみれば、それで出来るな……」
「検証もしないでやるあたり、どうかとは思いますがね」

 前言撤回、やっぱこの先輩言うだけ言うし。でもこの先輩相手じゃ、言い返すだけムダってヤツだ。

「ともかくそゆ話なんで、看護士さん呼んでいいですか?

 あいつ、どの病室が空いてるか訊いてから、入るトコ決めたいって言ってるんで」

「そういうのを、行き当たりばったりと言うのですがね」

 呼び鈴押してる最中まで、先輩の毒舌ときたらまだ止まらねぇし。
 まぁ要するに、自力で情報取って決めろってんだろう。
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