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第10話 空(うつほ)なる真実

学院にて Episode:11

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「ねぇ、シルファ先輩見なかった?」

 2人が行ってしまう前に、急いで訊きたいことを口にする。

「シルファ先輩? 今日はちょっと見てないね」
「そう……」

 もう朝食を済ませて、どこかへ行ってしまったんだろうか?
 それからもうひとつ尋ねる。

「イマドも……いないよね?」

 なぜかナティエスとシーモアが、顔を見合わせて笑った。

「イマド、毎年夏休みはアヴァン行きっぱなしだしね」
「で、休み中は叔父さんとこで、めいっぱいこき使われるって嘆いてたな」

 去年もそうだったけどイマド、本当にぎりぎりまで戻ってこないみたいだ。

「そう……なんだ……」

 なんだか少し落ちこむ。
 そんなあたしを見て、またシーモアとナティエスは笑った。

「ほらほら、そんな顔しなさんなって。どうせあとひと月ちょっともすりゃ、イヤってほど毎日顔を会わせるんじゃないか」
「そうそう、すぐだってば」
「うん……」

 励ましてはもらったものの、いまひとつ気は軽くならない。

「やれやれ、こりゃすっかりだね。
 しゃぁない、明日でも景気付けにさ、どっか行くかい?」

「あ、それいいな。しばらくケンディク行ってないし」

 シーモアの提案に、ナティエスが賛成する。

「行ってなんか、美味しいもの食べよ♪
 ――っていけない、あたしたち朝ご飯食べるんだっけ」

「やば、急がないと食いっぱぐれちまうよ」
「あ、行ってらっしゃい」

 急いで食堂のほうへ駆け出した2人を見送ってから、あたしは周囲を見回した。

 ――シルファ先輩、寮かな?

 でもこの時間だと、いるとは思えなかった。
 訓練だったり補習だったりで、夏休みでも昼間は、みんなたいてい教室や訓練島だ。

 廊下の端で少し考えて、まずいちばん近い図書館へ、行くことにする。

 シルファ先輩はそれほどでもないけど、タシュア先輩はとても本が好きだ。
 だからたいてい図書館にいて、そこにシルファ先輩も一緒にいることが多い。

 それで見つからなかったら、寮へ戻ってみようと思った。
 その時。
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