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第10話 空(うつほ)なる真実

アヴァンにて Episode:12

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「この子の上着と、あと……水着があれば欲しいんだが」

「あら、可愛い妹さんですね。
 少々お待ち下さい。今出しますので」

 なぜか妹にされる。

 確かに、この年で先輩後輩で、旅行に出るのは珍しいけど……。
 けどそんなあたしの感想は関係なしに、先輩と店員さんは服選びに夢中だ。





「このカーディガンなど、いかがですか?
 可愛らしいデザインですから、お似合いと思いますが」

「………」

 先輩があたしと服を交互に見ながら黙ってるから、店員さんが慌てて次を出してる。
 そのうち先輩、全然違う棚から服を引っ張り出した。

「ルーフェイア、ちょっとこっちへ来て、後ろを向いてくれないか?」
「あ、はい」

 あたしの背中に合わせて、サイズを確かめてるみたいだ。

「大丈夫そうだな……着てみてくれるか?」
「はい」

 渡されたのを見たら、カーディガンじゃなくてパーカーだった。

「こっちの方が、ショートパンツに似合うだろう?」
「……?」

 そういうものなんだろうか。

 そのほかに先輩は、タンクトップやら袖なしのワンピースやら、ショートパンツなんかまで選び出す。
 何度も呼ばれては大きさを合わせて、試着して先輩がそれをながめて……その繰り返しだ。

「あの、先輩、こんなにいっぱい……」
「いいんだ」

 きっぱり言われて、何も言い返せなくなる。

 旅行に連れ出された時もそうだったけど、思ったよりシルファ先輩、強引なところがあるみたいだった。
 それから水着を選んで、やっと先輩、服選びをやめる。

「そうしたら、これで」
「かしこまりました」

 店員さんが、丁寧にたたんで包み始める。
 慌ててあたしは、先輩に駆け寄った。

「あの、あたしが払いますから!」
「私が買うんだ。気にするな」

 先輩、とりつくしまもない。

「でも、あの、悪いですし……」

 あたしが自分で、大して着替えを持たずに出てきたのが悪いのに、先輩にお金を使わせるわけにはいかなかった。

「いいと言っただろう? だから、いいんだ」

 でも先輩、よく分からない理由で却下する。

「けど……」
「――ルーフェイア」

 鋭く言われて、一瞬すくみあがった。

「あ、あの、ごめんなさい……」

 思わず謝ったあたしの頭を、先輩がそっとなでる。

「謝らなくていい。
 私が買いたいんだ。着てくれるな?」

 綺麗な紫の瞳。
 覗き込まれてそう言われると、あたしももう反論できなかった。
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