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第10話 空(うつほ)なる真実

ノネ湖にて Episode:09

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「迎えが来ましたから。いまご案内します」
「すみません」

 彼女の案内で用意された車に乗り込み、さらに現場へと急行する。
 辺りはあちこち血に染まって、すでに到着していた先輩が、手当てに奔走していた。

「だいじょうぶですか?」

 ブレスレットを外して武器に戻しながら、声をかける。

「いま村の若いのが、足跡を追ってるらしい。すぐ連絡が入ると思う――ザムスさん、そっちを持って!」

 重傷者のことで、先輩は頭がいっぱいのようだ。

「仕方ない、少し待機だな……ルーフェイア、どうした?」

 隣のルーフェイアが、険しい表情を見せている。
 視線は……少し先の、林だ。

「――来ます」

 言ってこの子が、太刀に片手をかける。
 近づいてきたのだろう、こんどは私にも気配が分かった。

 次の瞬間、茂みを突き破るようにして、竜が現れる。

 一気に迫ってくるのを、進路へ割り込んで大鎌(サイズ)を振るい、けん制した。
 だが。

「2匹目?!」

 幸い訓練の成果で、考えるより先に身体が動く。
 いちばん近いものを薙ぎ、勢いを利用して反転、もう1頭の手を切り払った。

「クーノ先輩、出られますか?!」

 車に乗ろうとしている、先輩に声をかける。

「今もう――うわっ!」

 悲鳴。
 こちらの2匹を相手にしている間に、もう1匹が車の前に回りこんだらしい。

 一瞬のためらいもなく、ルーフェイアが呪文を放った。

「トォーノ・センテンツァっ!」

 小さな雷撃が命中して、3頭目の動きが止まる。

「いったい、何匹いるんだ?」
「分かりません。血の臭いで、集まってきたのかも……」

 もっともいまは、悩んでいる暇はない。
 
 ちらりと見ると、先輩が無事に車に乗り込んでいた。
 なんだかんだ言っても、さすがシエラの本校生だ。ルーフェイアが作った隙を、逃さなかったらしい。

「先輩、精霊――いきます!」

 防御呪文を車にかけながら、この子が言う。

「分かった。
 ――先輩! 車から出ないで下さい!」

 私が警告している間に、ルーフェイアが召喚の呪を唱え出した。

「鳴り響く時の内に棲む者よ、その稲妻持ちて我が敵を打ち砕け――来いっ、アエグルンっ!!」

 呪に誘われて、虚空から精霊が姿を現す。
 力が発動すれば、どれか1匹は動きが止まるだろう。

 この状況で数が1つでも減れば、戦局が変わる。
 だがルーフェイアは、それでは済まさなかった。
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