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第10話 空(うつほ)なる真実
そして、学院にて Episode:09
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振り返る。
どこも変わっていないはずなのに、なぜか新鮮に見える部屋。
――また、ここから。
そんなふうに思いながら見回して、途中で視線が止まった。
机の上に、バッグがひとつ。
あの時タシュアに、思わず投げつけた物だ。
彼は私の部屋の合鍵を持っているから、持って帰ってきて置いてくれたのだろう。
部屋の中の空気が、思ったほど澱んでいなかったのも、たぶんそのせいだ。
中を開けてみると、洗った水着とタオルが、綺麗に畳まれて入っていた。
「まったく……」
思わずつぶやいたが、何がまったくなのか、自分でもよくわからない。
なんとなくため息を付きながら、バッグを置こうとして気づく。
中に見覚えのない、小さな箱があった。
革製の、立派な箱だ。
取り出して、開けてみる。
中には、細い銀で編まれた鎖に、小さな宝石――たぶん月長石――があしらわれた、アンクレットが入っていた。
箱の中に刻印された店の名前は、ランプラ・セレーネ。
誰からのものか、確認しなくても分かる。
デザインは私が身に着けているブレスレットとそっくりだし、店は二人してお世話になった先輩の実家だ。
なんだか可笑しくなってきて、一人で小さく笑いながら、アンクレットを着けた。
どう見てもこれは、注文して作らせたものだ。
そうでなければ、精霊からもらったブレスレットと、デザインが揃うわけがない。
こんなことをするくせに……一方で、私をあんな目に遭わせるのだ。
ギリギリのところで人の世界に踏みとどまっている、そんなタシュアの生き方。
以前はただただ驚嘆するだけだったが、今は少し、可愛らしくも思えた。
慣れた自室で一休みしたあと、ともかくタシュアを探そうと、荷物を片付けて部屋を出る。
――会ったら、なんと言おう?
だがいろいろなことがありすぎたせいか、どうにもまとまらない。
結論の出ないまま、私はまずタシュアの部屋へ行ってみた。
が、ノックしても返事はない。
「……入るぞ?」
渡されている合鍵と予備の警報用魔石を使って、部屋に入ってみたが、やはり中は空だった。
時間から考えて……お昼でも食べに行ったのだろうか?
どこも変わっていないはずなのに、なぜか新鮮に見える部屋。
――また、ここから。
そんなふうに思いながら見回して、途中で視線が止まった。
机の上に、バッグがひとつ。
あの時タシュアに、思わず投げつけた物だ。
彼は私の部屋の合鍵を持っているから、持って帰ってきて置いてくれたのだろう。
部屋の中の空気が、思ったほど澱んでいなかったのも、たぶんそのせいだ。
中を開けてみると、洗った水着とタオルが、綺麗に畳まれて入っていた。
「まったく……」
思わずつぶやいたが、何がまったくなのか、自分でもよくわからない。
なんとなくため息を付きながら、バッグを置こうとして気づく。
中に見覚えのない、小さな箱があった。
革製の、立派な箱だ。
取り出して、開けてみる。
中には、細い銀で編まれた鎖に、小さな宝石――たぶん月長石――があしらわれた、アンクレットが入っていた。
箱の中に刻印された店の名前は、ランプラ・セレーネ。
誰からのものか、確認しなくても分かる。
デザインは私が身に着けているブレスレットとそっくりだし、店は二人してお世話になった先輩の実家だ。
なんだか可笑しくなってきて、一人で小さく笑いながら、アンクレットを着けた。
どう見てもこれは、注文して作らせたものだ。
そうでなければ、精霊からもらったブレスレットと、デザインが揃うわけがない。
こんなことをするくせに……一方で、私をあんな目に遭わせるのだ。
ギリギリのところで人の世界に踏みとどまっている、そんなタシュアの生き方。
以前はただただ驚嘆するだけだったが、今は少し、可愛らしくも思えた。
慣れた自室で一休みしたあと、ともかくタシュアを探そうと、荷物を片付けて部屋を出る。
――会ったら、なんと言おう?
だがいろいろなことがありすぎたせいか、どうにもまとまらない。
結論の出ないまま、私はまずタシュアの部屋へ行ってみた。
が、ノックしても返事はない。
「……入るぞ?」
渡されている合鍵と予備の警報用魔石を使って、部屋に入ってみたが、やはり中は空だった。
時間から考えて……お昼でも食べに行ったのだろうか?
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