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第20話 それは増殖する
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片づけの一件以来、イサさんとズデンカさんは、すっかり打ち解けてしまった。
しかもそれだけじゃなくて、ズデンカさんの友だちとも仲良くなってしまった。
そして今じゃこの屋敷の広い食堂は、おばさんたちの溜まり場だ。
僕としてはすごく複雑だった。
おばさんたちが遊びに来るときは、必ずと言っていいくらい、手土産を持ってきてくれる。
それは料理だったり、手作りのお菓子だったり、野菜だったり、チーズだったり……ともかくそのおかげで、僕の食糧事情は素晴らしく改善した。
あのひもじかった日々が、嘘みたいだ。
ただ、なんか肩身が狭い。
ここは師匠の屋敷で、僕はその一番弟子、しかもただ一人の弟子のはずなのに、屋敷の中にいまひとつ居場所がない。
ならばと部屋に籠って静かにしてると、必ず呼び出される。
それも食べ物付きで、ってところが卑怯だ。拒否できるわけがない。
そんなわけで僕はいつも食堂へおびき出されて、おばさんたちの井戸端会議の中に無理やり入れられて、愚痴や噂話を聞くのが日課になってしまった。
唯一呼び出されないのは師匠の研究を手伝ってるときだけど、それはそれでコキ使われるから、心の休まるときがない。
ちなみに師匠のほうは、見事に逃げ切ってる。
午前中はいつも寝てるし、お昼どきはおばさんたちは一回帰るから、朝食という名の昼食を食べに出てきた師匠は顔を合わせない。
午後は研究室にこもりっきりで、おばさんたちもさすがにその邪魔はしない。
そして夕方にはみんな帰るから、師匠は一日中「おばさんフリー」な生活だった。
――やっぱり神様は不公平だ。
僕がこんなに苦労してるのに、どうしておばさんたちや師匠は、あんなに好き勝手してるんだろう。
「おやスタニフ、どしたんだい? 深刻な顔して」
「ズデンカ、訊いちゃ可哀想だろ。きっと彼女にふられたんだよ」
「え、キミにカノジョなんていたの? ずーっと家にいるから、そんな人いないんだと思ってた」
「イサ、ホントのこと言ったら気の毒だよ」
僕を囲んで、いつもこの調子だ。
ただ時々、意外な噂も聞けた。
しかもそれだけじゃなくて、ズデンカさんの友だちとも仲良くなってしまった。
そして今じゃこの屋敷の広い食堂は、おばさんたちの溜まり場だ。
僕としてはすごく複雑だった。
おばさんたちが遊びに来るときは、必ずと言っていいくらい、手土産を持ってきてくれる。
それは料理だったり、手作りのお菓子だったり、野菜だったり、チーズだったり……ともかくそのおかげで、僕の食糧事情は素晴らしく改善した。
あのひもじかった日々が、嘘みたいだ。
ただ、なんか肩身が狭い。
ここは師匠の屋敷で、僕はその一番弟子、しかもただ一人の弟子のはずなのに、屋敷の中にいまひとつ居場所がない。
ならばと部屋に籠って静かにしてると、必ず呼び出される。
それも食べ物付きで、ってところが卑怯だ。拒否できるわけがない。
そんなわけで僕はいつも食堂へおびき出されて、おばさんたちの井戸端会議の中に無理やり入れられて、愚痴や噂話を聞くのが日課になってしまった。
唯一呼び出されないのは師匠の研究を手伝ってるときだけど、それはそれでコキ使われるから、心の休まるときがない。
ちなみに師匠のほうは、見事に逃げ切ってる。
午前中はいつも寝てるし、お昼どきはおばさんたちは一回帰るから、朝食という名の昼食を食べに出てきた師匠は顔を合わせない。
午後は研究室にこもりっきりで、おばさんたちもさすがにその邪魔はしない。
そして夕方にはみんな帰るから、師匠は一日中「おばさんフリー」な生活だった。
――やっぱり神様は不公平だ。
僕がこんなに苦労してるのに、どうしておばさんたちや師匠は、あんなに好き勝手してるんだろう。
「おやスタニフ、どしたんだい? 深刻な顔して」
「ズデンカ、訊いちゃ可哀想だろ。きっと彼女にふられたんだよ」
「え、キミにカノジョなんていたの? ずーっと家にいるから、そんな人いないんだと思ってた」
「イサ、ホントのこと言ったら気の毒だよ」
僕を囲んで、いつもこの調子だ。
ただ時々、意外な噂も聞けた。
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