「見習い魔導士の憂鬱」 異世界へ行くはずが、向こうから人がきて……?!

こっこ

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第39話 簡単な話?

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「で、山の北がドグエ領。南はマグヌス領。どっちも戴く国王は同じです」
「了解。そうなるとこのヤルマル領がいわゆる異国と接してるのは、この東の山脈部分だけってことね」
「そうなります」

 ユラの村始め、ヤルマル領がどこものんびりしてるのは、この地形のおかげだ。
 東から攻めるには、あまりにもここはやりづらい。

 おばさんは何が気に入ったのか、僕が書いた地図をじっと眺めてた。

 何かぶつぶつ言ってるもいるけど、よく聞き取れない。
 そのうちぽふっと音を立てて、ベッドに突っ伏した。

「ここが落ちれば隣国としては万々歳だから、何か介入してんじゃないかってのは思うんだけど……対処法がねー。どうするかな」

 ただぶつぶつ言ってるのかと思ったら、そうじゃなかったらしい。
 対処法を考えるために、原因を突き止めようとしてたみたいだ。
 と、おばさんがぽんと手を打った。

「――とりあえず領主を阻止できれば、隣国がどうだろうが当座いいのか」
「そういうことにはなりますけど……できるんですか?」
「それを考えてるんじゃない」

 おばさんの声が硬くなった。

「と言うかね、何をどうするかまだ見当つかないから、考えてるワケ。それとも、キミは何か考えついたの?」
「いえ……」

 それが分かったら苦労しない。というか、城の誰もが苦労してない。
 なのにおばさんときたら、僕を冷ややかな目で見た。

「考えつきもしないのに、何とか何とかって。まったく、なんでみんなそうなのかしらね? 頭は飾りじゃないだろに」

 かなりおかんむりだ。まずい。
 ここはそれこそ何とかしないと、僕が地獄を見る。

 必死に考えた僕は、閃いた案を言ってみた。

「厨房行きませんか? 何かその、おいしいものあるかもしれませんよ」
「あたしそんなに食べられないの、知ってるでしょ。恨みでもあるの?」
「残したら僕が食べますってば」

 言いながら半分引っ張るようにして、イサさんを連れ出す。
 機嫌が悪い女の人には、おいしいお茶とお菓子。これは鉄則だ。
 父さんに教わった、いちばんの秘儀だ。

 廊下を抜けてくぐり戸をくぐって、離れにある厨房まで行く。
 その間も後ろから、おばさんのぶつぶつ言う声が聞こえてた。

「スタンアローコンレックスが、やっぱり使えそうなのよねぇ」
「なんですか、そのスタなんとかって」

 どうにも固有名詞っていうのは聞きとりづらい。

「あたしの国に、そういうものがあったの」

 どうやら油で走る車とか、そういうものと同じ、異世界の「何か」らしい。
 でもそうだとしたら、どうやってこっちの世界に、それを再現するんだろう?

 不思議に思いながら歩いてるうちに、厨房の前に着く。
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