「見習い魔導士の憂鬱」 異世界へ行くはずが、向こうから人がきて……?!

こっこ

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第45話 お金は大事

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「よろしいですか?」

 当然だけど、見たことない人だ。

 年はたぶん、四十代。横幅が広めで、髪はまだ多いけど何故かだいぶ白髪で、でも全体的に脂ぎった感じの、まさに「おじさん」。
 間違ってもカッコいい、って言葉じゃ形容できない。そんな人だ。

 話しかけられたイサさんのほうは、きょとんとしてた。子供みたいな表情が妙に可愛い。

「ごめんなさい、どちらさま? あたし、顔と名前覚えるのが苦手で」

 イサさんの言葉に一瞬遅れて、話しかけてきた男の人が答えた。

「ここの会計役をしております、ボドウィッド・カルネウスと申します」

 イサさんが「あぁ」という顔になる。

「お話は伺ってますわ。イサと申します。こちらの領主様のご厚意で、このお城に寄せていただいてます」

 この人、ほんとに何者なんだろう? よくまぁこんな言葉が、さっと口から出るもんだ。

「私も、貴女の話は領主より伺っております。なんでも、遠いお国の出だとか」
「ええ」

 にこやかに話が進んでく。

 それにしても会計役って言えば、あの厨房おばさんが言ってた、無駄にケチな会計役のことだろう。

 見た目は少なくとも「切れ者」って感じじゃない。
 小者感満載ですぐ怒りだしそうで、けどお世辞やおべっかで上の人に取り入って出世しそうな、いちばん下で働きたくないタイプだ。

 これなら実力があるぶん、師匠にコキ使われるほうがずっとましだろう。

 おばさんはにこにこした顔で、会計役と話してた。

「大変な倹約家だと伺いましたわ。さぞかしお金の管理は、大変なのでしょうね」
「大変ですとも!」

 会計役の声が高くなった。
 そして延々と、自分がどんなに苦労してるか、遣り繰りに精を出しているかを言いたてる。まるで何かの叙事詩みたいだ。

 でもきっと、口で言うほどにはやってない。

 ――あー、それでか。

 僕の頭の中で、今のこの国の状況が繋がった。

 きっとこの人、こういうふうに自分がどんなに頑張ってるかをいろいろ言って、人を疑わない領主に気に入られたんだ。
 ただ領主はあんなお人よしだし、この人は仕事なんてできそうにないから、みんながため息つく状況になったに違いない。

 そんなことを考えながら眺めてたら、会計役と不意に目が合った。

「おや、こちらの方は?」

 いま気付いた、そんな言い方をされる。
 ヒドい。
 
 腹が立った僕は、まっすぐ会計役を見て言った。
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