44 / 52
第44話 壁に咲く花
しおりを挟む
「あーもう、こういうのヤだ」
「諦めてくださいよ」
このやり取り、何度繰り返しただろう?
姫さまや領主様と親しくなって数日、僕らは晩餐に招待されることになった。
厨房おばさんなんかが言うには、僕らみたいな平民が招待されるのは、かなり珍しいっていう。
でもこういうお城って言うのはけっこう日々は退屈で、みんな楽しむ口実を探してるんだとか。
そんなわけで晩餐って話が出たらしいのだけど、イサさんが最初はかなり渋った。
理由は「面倒くさい」。
こんな理由で領主からの晩餐を断ろうとするなんて、さすがおばさんだ。
誰だって駆けつけるくらい栄誉なのに、その辺の花ほどにも感じてない。
けっきょく姫さまがわざわざ説得してくれて、なるべく内輪の、気軽でささやかなものにするってことで、折り合いがついた。
そして今、その席だ。「気軽なもの」ってことで立食式で、取り立てて席順とかは無い。
たしかに気楽で気軽だ。
でもささやかって言ってた割には、なんだかんだで二十人以上いる。
まぁ領主様や姫さまからすれば、たしかに「ささやか」なんだろうけど……。
「食べないんですか?」
「食べてるわよ」
相変わらずイサさんの食欲は、小鳥並みだ。
料理が、手元のお皿にほんの少しだけ乗せてあって、それをつついてる。
ただこういう席じゃ食べたい分だけでいいし、イヤなら手をつけなくてもいいから、好きなようにやれてるみたいだった。
けど、壁際の椅子に座ったきりなのはどうかと思う。
だいたいこういう席じゃ、立って談笑するのがマナーなのに。
それを言ったら、あっさり「できないから」と返ってきた。
「ずーっと立ち続けなんて、あたし、途中で具合悪くなるもの」
「そうかもしれませんけど、でも少しは立って、いろんな方と話しないと」
じゃないと、領主様の顔が立たなくなりそうだ。
まぁおばさんが、そんなもの気にするとは思えないけど。
会場は、お城の一室。式典とかをする感じの、でもそう大きくはない広間だ。
っても今回は少人数だから、広さとしては十分だった。
――けっこう、似合ってるかな?
ドレス姿のイサさんを見て、ちょっとそんなことを思う。
この人子持ちのくせに、若い娘みたいに細いから、貸してもらった深い赤のドレスがいい感じだ。
なのに、壁の花。
いや、花って言うには花盛りすぎてるけど。
それでも立って談笑すれば、もう少しサマになるのに。
そんなこと考えながらイサさんの隣でぼーっとしてたら、声をかけられた。
「諦めてくださいよ」
このやり取り、何度繰り返しただろう?
姫さまや領主様と親しくなって数日、僕らは晩餐に招待されることになった。
厨房おばさんなんかが言うには、僕らみたいな平民が招待されるのは、かなり珍しいっていう。
でもこういうお城って言うのはけっこう日々は退屈で、みんな楽しむ口実を探してるんだとか。
そんなわけで晩餐って話が出たらしいのだけど、イサさんが最初はかなり渋った。
理由は「面倒くさい」。
こんな理由で領主からの晩餐を断ろうとするなんて、さすがおばさんだ。
誰だって駆けつけるくらい栄誉なのに、その辺の花ほどにも感じてない。
けっきょく姫さまがわざわざ説得してくれて、なるべく内輪の、気軽でささやかなものにするってことで、折り合いがついた。
そして今、その席だ。「気軽なもの」ってことで立食式で、取り立てて席順とかは無い。
たしかに気楽で気軽だ。
でもささやかって言ってた割には、なんだかんだで二十人以上いる。
まぁ領主様や姫さまからすれば、たしかに「ささやか」なんだろうけど……。
「食べないんですか?」
「食べてるわよ」
相変わらずイサさんの食欲は、小鳥並みだ。
料理が、手元のお皿にほんの少しだけ乗せてあって、それをつついてる。
ただこういう席じゃ食べたい分だけでいいし、イヤなら手をつけなくてもいいから、好きなようにやれてるみたいだった。
けど、壁際の椅子に座ったきりなのはどうかと思う。
だいたいこういう席じゃ、立って談笑するのがマナーなのに。
それを言ったら、あっさり「できないから」と返ってきた。
「ずーっと立ち続けなんて、あたし、途中で具合悪くなるもの」
「そうかもしれませんけど、でも少しは立って、いろんな方と話しないと」
じゃないと、領主様の顔が立たなくなりそうだ。
まぁおばさんが、そんなもの気にするとは思えないけど。
会場は、お城の一室。式典とかをする感じの、でもそう大きくはない広間だ。
っても今回は少人数だから、広さとしては十分だった。
――けっこう、似合ってるかな?
ドレス姿のイサさんを見て、ちょっとそんなことを思う。
この人子持ちのくせに、若い娘みたいに細いから、貸してもらった深い赤のドレスがいい感じだ。
なのに、壁の花。
いや、花って言うには花盛りすぎてるけど。
それでも立って談笑すれば、もう少しサマになるのに。
そんなこと考えながらイサさんの隣でぼーっとしてたら、声をかけられた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる