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第52話 お茶会の謎、世界の謎
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今回は僕らは、黙ったまま廊下を歩いた。
口を開いたら会計役の話になりそうだし、それを誰かに聞かれたら大変なことになる。なら、黙ってるのがいちばんだ。
沈黙は金、それは父さんの口癖のひとつだった。
うっかり口を開いておかしな誤解をされるくらいなら、黙ってるほうが数倍いい。
それに黙ってると相手が勝手に想像して、適当に都合のいい解釈をしてくれるもんだ、と。
本当に父さんの言葉はどれも、深いものが多い。
「ようこそおいでくださいました」
案内された部屋には姫さまはじめ、貴婦人がたがもう勢ぞろいしてた。
「これからあのパンが来るそうですわよ」
「楽しみですわね」
お茶を口に運びながら、ご婦人がたが言葉を交わす。
師匠の屋敷の居間を占拠してた「おばさん」っていう、がさつな種族とは大違いだ。
言葉づかいも仕草も、すべてが優雅だ。
出されたお茶を飲みながらそんなことを考えてたら、黒髪のご婦人が口を開いた。
「そういえば、先日の夜会で姫さまがおっしゃったことですけれど」
何だろう、と思う。僕はあの日はほとんど姫さまのそばにいなかったから、内容が見当つかない。
ご婦人がたがうなずいた。
「興味深いお話でしたものね」
「ですけど私、どうやったらいいか分からなくて……」
「私もですわ」
なんのことだか分からないけど、姫さまがおっしゃったことって言うのは、けっこう難しいことだったみたいだ。
と、一人のご婦人が切り出した。
「私、姫さまのおっしゃるとおりにやってみましてよ」
まぁ、とみんながいっせいに声をあげた。
「どうでして?」
「思ったより簡単でしたわ」
やってみたという、金髪に青い目のご婦人が言う。
彼女が言うには、夕食のあと旦那さんの好きなお酒を用意して、晩酌に誘ったんだとか。
「そうしたら、すぐに困りごとを話してくださいましたの。今年の麦の作柄が良くて、という話でしたわ」
「作柄が良くて? 悪くて、ではないんですの?」
「良くて困っているそうですわ。それで私、不思議に思って、あとでうちの家令に訊いてみましたの」
これは何の会合だろう? ふわふわのパンを食べる、お茶会じゃなかったんだろうか?
金髪碧眼のご婦人の話は、まだ続いてた。
「家令が言うには、豊作だと売れ残りが増えると。そうなると値が下がって、収入が減るとのことでしたわ」
「不作の年なら分かりますけど……豊作で収入が減るなんて、不思議なことですわね」
ご婦人がたが、顔を見合わせる。
口を開いたら会計役の話になりそうだし、それを誰かに聞かれたら大変なことになる。なら、黙ってるのがいちばんだ。
沈黙は金、それは父さんの口癖のひとつだった。
うっかり口を開いておかしな誤解をされるくらいなら、黙ってるほうが数倍いい。
それに黙ってると相手が勝手に想像して、適当に都合のいい解釈をしてくれるもんだ、と。
本当に父さんの言葉はどれも、深いものが多い。
「ようこそおいでくださいました」
案内された部屋には姫さまはじめ、貴婦人がたがもう勢ぞろいしてた。
「これからあのパンが来るそうですわよ」
「楽しみですわね」
お茶を口に運びながら、ご婦人がたが言葉を交わす。
師匠の屋敷の居間を占拠してた「おばさん」っていう、がさつな種族とは大違いだ。
言葉づかいも仕草も、すべてが優雅だ。
出されたお茶を飲みながらそんなことを考えてたら、黒髪のご婦人が口を開いた。
「そういえば、先日の夜会で姫さまがおっしゃったことですけれど」
何だろう、と思う。僕はあの日はほとんど姫さまのそばにいなかったから、内容が見当つかない。
ご婦人がたがうなずいた。
「興味深いお話でしたものね」
「ですけど私、どうやったらいいか分からなくて……」
「私もですわ」
なんのことだか分からないけど、姫さまがおっしゃったことって言うのは、けっこう難しいことだったみたいだ。
と、一人のご婦人が切り出した。
「私、姫さまのおっしゃるとおりにやってみましてよ」
まぁ、とみんながいっせいに声をあげた。
「どうでして?」
「思ったより簡単でしたわ」
やってみたという、金髪に青い目のご婦人が言う。
彼女が言うには、夕食のあと旦那さんの好きなお酒を用意して、晩酌に誘ったんだとか。
「そうしたら、すぐに困りごとを話してくださいましたの。今年の麦の作柄が良くて、という話でしたわ」
「作柄が良くて? 悪くて、ではないんですの?」
「良くて困っているそうですわ。それで私、不思議に思って、あとでうちの家令に訊いてみましたの」
これは何の会合だろう? ふわふわのパンを食べる、お茶会じゃなかったんだろうか?
金髪碧眼のご婦人の話は、まだ続いてた。
「家令が言うには、豊作だと売れ残りが増えると。そうなると値が下がって、収入が減るとのことでしたわ」
「不作の年なら分かりますけど……豊作で収入が減るなんて、不思議なことですわね」
ご婦人がたが、顔を見合わせる。
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