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第四章 ポルノ・グラフィティ
36. CMYK
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「俺はそのニオイを知ってる。だから、さんざん馬鹿にされてきたお前らのオカルト話も、すぐに信じられた。俺んなかで辻褄が合っちまった」
そして半は、不言の真正面に立つと、そのままストンと腰を下ろす。
「つーわけで、イワ。今度は俺を信じてくれてもいいんじゃね。こいつはただのrkgkだ」
言い切っては、大あくびをする半。まだ朝の六時半を過ぎたばかりである。
「知らんけど、とは言わないのですね」
緑青が眉をひそめながらも笑顔を作る。そんな柔らかい雰囲気に押され、不言も恐る恐る顔をあげたのだが。
「……ただな」
唐突に目の前で、液体が勢い良く吹きこぼれる音が、不言を再びビクつかせる。
「逆にヤべーわ」
半が眠気覚ましにと、ポケットに忍ばせていた炭酸飲料を開けたのだ。
「ようは落画鬼を連れまわしてるヤツがいるってことなんじゃね」
抑揚もなくサラリと言い放つ半独特のペースに流されるまま、「確かに」と一度は頷く緑青だったが、すぐに思い直して否定する。
「……え、でも普通、そんなことできませんよ……」
「それはそう。ただの落書き犯には、落画鬼を自分の言いなりにさせる腕なんてねーんだわ。だからなんかの間違いで違法塗料を手に入れたとこで、フツーは使いこなせねー。下手したらボムった瞬間、自分も喰われるかんな」
もっとわかりやすく説明する方法はないかと、半は知識を求めるように緑青を見上げる。
「産まれてすぐ、母食いする虫かなんかいたよな? 知らんけど」
「ハサミムシ……でしたかね。蜘蛛のなかにも一部、母親を餌食にする種がいた気がします」
半は、ヒュッと口笛を吹くと、心から尊敬するように「やっぱ緑色って物知りだな」と緑青を賞賛する。社会から外れ、独自の生き方を貫いてきた半は、緑色に対する差別的な態度は微塵もない。
「てなノリで瞬コロだ。落画鬼の最初の栄養源ってヤツなんじゃね、知らんけど」
気怠げに言い放つと、喉を鳴らしながら缶の中身を流し込む。
不言は、そんな半の持つアメリカンクラシックなロゴデザインを眺めながら、(コイツこの状況でよく飲めるよな)と身震いする。
だが、ふたりの会話に置いてけぼりにされ、視線のやり場に困っていた彼は、臙脂色が特徴の缶に描かれた美しいデザインに集中することで、却って気分が落ち着きつつあった。
「いくら、早書き&即逃げが得意なライターでも、落画鬼から逃げきれるヤツはいなかった」
軽めの口調から一変、急に目を細め、少し昔の記憶を思い出すように切り出す半の表情は、男ですら頬を染めさせるポテンシャルを持つ。
緑青も、これが時と場合が違っていたなら、世の中の女性へ手を合わせて謝らねばならない衝動に駆られる尊さだと、密かに後ろめたさを感じたほどである。
「半さんが、私たちのことをまだ町絵師と呼ばれていた頃の……」
緑青は、過去とはいえ友を犯罪者呼ばわりするのは気が引けるのだろう。不自然なほどまわりくどい言い回しをはじめるので、半はすかさずツッコむ。
「落書き犯でいいんじゃね。いまさら変な気遣わなくていいし。知らんけど」
ごく一部のグラフィティ肯定派でもない限り、落書き犯はあくまで落書き犯だ。グラフィティ・ライターだの、ピーサーだのと呼び分けることもないし、必要もない。半は健全民に対し言葉を尽くしてまで、この世界を理解してほしいとは思っていない。
「半さんが落書き犯だった頃の」と、緑青は改めて控えめに切り出す。
「違法塗料によって引き起こされた事件のお話ですね。当初はパンデミックのストレスによる不良少年たちの集団ヒステリーやら神隠しやらと、有耶無耶にされていましたが……」
違法塗料が出回りはじめた当時はまだ、落画鬼が知れ渡ってなかったから仕方ない。――
誰が言ったか知らんけど「“お前を王にしてやれる(Can Make You King)”イカした塗料」って吹聴しながら、俺たちライターを煽った。
“キング”と呼ばれることは、グラフィティ・ライターを名乗る輩にとって、この上なく名誉なことだ。それにぶっちゃけ、ライター連中はどいつもこいつも煽り耐性ゴミカスのキッズだ。連中の間で、違法塗料を使いこなしてやろうって、度胸試しの夜遊びが流行るのは時間の問題だった。
そんで、“タグ・アンド・ラン(速攻でグラフィティをボムってすぐ逃げる動作)”に自信のある連中がこぞって挑んだが、次々に行方不明になってった。
もちろんニュースにも取り上げられた。だが、当時はすべての人間が他人に構ってる余裕なんてなかったパンデミック真っ盛り。それが、社会からあぶれたハンパ者ならなおさらだ。
出自の怪しいコメンテーターが、原因不明な鰯の大量漂着に考察を述べるのと同じくらい適当に口走って、すぐ感染症死者数の話題に切り替わるのがオチだった。
俺たちが百魚の王を夢見てどうイキったとこで、世間から見たらただの雑魚なんだろ、知らんけど。
仲間の不自然な失踪続きに、さすがに連中も塗料になんかあるって勘付きはじめた。ビビったんだろ。
「“絶えずてめえを狂わせる(Constantly Making You Krazy)”イカれた塗料」って呼んで、軽率に手出しするヤツはいなくなった。
ちな、俺が違法塗料を盗したのは、そう呼ばれるようになってからだ。
半は(ろくに蓋も開けれず終わったけどな……なんか知らんけど)と、ふたりへこっそり視線を送りながら、その想いを胸に仕舞った。
そして半は、不言の真正面に立つと、そのままストンと腰を下ろす。
「つーわけで、イワ。今度は俺を信じてくれてもいいんじゃね。こいつはただのrkgkだ」
言い切っては、大あくびをする半。まだ朝の六時半を過ぎたばかりである。
「知らんけど、とは言わないのですね」
緑青が眉をひそめながらも笑顔を作る。そんな柔らかい雰囲気に押され、不言も恐る恐る顔をあげたのだが。
「……ただな」
唐突に目の前で、液体が勢い良く吹きこぼれる音が、不言を再びビクつかせる。
「逆にヤべーわ」
半が眠気覚ましにと、ポケットに忍ばせていた炭酸飲料を開けたのだ。
「ようは落画鬼を連れまわしてるヤツがいるってことなんじゃね」
抑揚もなくサラリと言い放つ半独特のペースに流されるまま、「確かに」と一度は頷く緑青だったが、すぐに思い直して否定する。
「……え、でも普通、そんなことできませんよ……」
「それはそう。ただの落書き犯には、落画鬼を自分の言いなりにさせる腕なんてねーんだわ。だからなんかの間違いで違法塗料を手に入れたとこで、フツーは使いこなせねー。下手したらボムった瞬間、自分も喰われるかんな」
もっとわかりやすく説明する方法はないかと、半は知識を求めるように緑青を見上げる。
「産まれてすぐ、母食いする虫かなんかいたよな? 知らんけど」
「ハサミムシ……でしたかね。蜘蛛のなかにも一部、母親を餌食にする種がいた気がします」
半は、ヒュッと口笛を吹くと、心から尊敬するように「やっぱ緑色って物知りだな」と緑青を賞賛する。社会から外れ、独自の生き方を貫いてきた半は、緑色に対する差別的な態度は微塵もない。
「てなノリで瞬コロだ。落画鬼の最初の栄養源ってヤツなんじゃね、知らんけど」
気怠げに言い放つと、喉を鳴らしながら缶の中身を流し込む。
不言は、そんな半の持つアメリカンクラシックなロゴデザインを眺めながら、(コイツこの状況でよく飲めるよな)と身震いする。
だが、ふたりの会話に置いてけぼりにされ、視線のやり場に困っていた彼は、臙脂色が特徴の缶に描かれた美しいデザインに集中することで、却って気分が落ち着きつつあった。
「いくら、早書き&即逃げが得意なライターでも、落画鬼から逃げきれるヤツはいなかった」
軽めの口調から一変、急に目を細め、少し昔の記憶を思い出すように切り出す半の表情は、男ですら頬を染めさせるポテンシャルを持つ。
緑青も、これが時と場合が違っていたなら、世の中の女性へ手を合わせて謝らねばならない衝動に駆られる尊さだと、密かに後ろめたさを感じたほどである。
「半さんが、私たちのことをまだ町絵師と呼ばれていた頃の……」
緑青は、過去とはいえ友を犯罪者呼ばわりするのは気が引けるのだろう。不自然なほどまわりくどい言い回しをはじめるので、半はすかさずツッコむ。
「落書き犯でいいんじゃね。いまさら変な気遣わなくていいし。知らんけど」
ごく一部のグラフィティ肯定派でもない限り、落書き犯はあくまで落書き犯だ。グラフィティ・ライターだの、ピーサーだのと呼び分けることもないし、必要もない。半は健全民に対し言葉を尽くしてまで、この世界を理解してほしいとは思っていない。
「半さんが落書き犯だった頃の」と、緑青は改めて控えめに切り出す。
「違法塗料によって引き起こされた事件のお話ですね。当初はパンデミックのストレスによる不良少年たちの集団ヒステリーやら神隠しやらと、有耶無耶にされていましたが……」
違法塗料が出回りはじめた当時はまだ、落画鬼が知れ渡ってなかったから仕方ない。――
誰が言ったか知らんけど「“お前を王にしてやれる(Can Make You King)”イカした塗料」って吹聴しながら、俺たちライターを煽った。
“キング”と呼ばれることは、グラフィティ・ライターを名乗る輩にとって、この上なく名誉なことだ。それにぶっちゃけ、ライター連中はどいつもこいつも煽り耐性ゴミカスのキッズだ。連中の間で、違法塗料を使いこなしてやろうって、度胸試しの夜遊びが流行るのは時間の問題だった。
そんで、“タグ・アンド・ラン(速攻でグラフィティをボムってすぐ逃げる動作)”に自信のある連中がこぞって挑んだが、次々に行方不明になってった。
もちろんニュースにも取り上げられた。だが、当時はすべての人間が他人に構ってる余裕なんてなかったパンデミック真っ盛り。それが、社会からあぶれたハンパ者ならなおさらだ。
出自の怪しいコメンテーターが、原因不明な鰯の大量漂着に考察を述べるのと同じくらい適当に口走って、すぐ感染症死者数の話題に切り替わるのがオチだった。
俺たちが百魚の王を夢見てどうイキったとこで、世間から見たらただの雑魚なんだろ、知らんけど。
仲間の不自然な失踪続きに、さすがに連中も塗料になんかあるって勘付きはじめた。ビビったんだろ。
「“絶えずてめえを狂わせる(Constantly Making You Krazy)”イカれた塗料」って呼んで、軽率に手出しするヤツはいなくなった。
ちな、俺が違法塗料を盗したのは、そう呼ばれるようになってからだ。
半は(ろくに蓋も開けれず終わったけどな……なんか知らんけど)と、ふたりへこっそり視線を送りながら、その想いを胸に仕舞った。
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【AIの使用について】
本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。
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