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第8話 諸刃のツルギ VS 抜身のカタナ
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柔剣道場に戻ると、薄羽さんにまだいたの的なゴミを見る目で一瞥される。もう既に家帰りたいと折れかける心を鼓舞して地稽古を申し込んだ。
「嫌よ。あなたと竹刀を交える無意味さを知ってるもの。私の魂が穢れるわ」
「ぅう薄羽さんでも、あれがまぐれにしか、み、見えないわけ?」
こうでも言わなきゃ絶対相手してくれない。当然、場は騒然。
「あの土壇場ギフテッドどした」
「髪切られてヤケなんじゃね」
「抜身の刀に挑むとか、まるで諸刃の剣」
この空気の中、浮かれているのはリョーマだけ。
「あいつ挑発うめえな」
薄羽さんは、ガタガタな挑発を鼻で笑うと面を被る。
「いいわ。相手してあげる」
もう後に引けない。
「見せてもらいましょうか、土壇場ギフテッドとやらを」
試合場内の中心に立つ薄羽さん。
「このラインを跨いだら一切の希望を捨てなさい」
地獄の門みたいなこと言って静かに構える。まさに蟻地獄。脇汗やばいし手震える。ライン跨げる気がしない。
「刀はしっかり握らねえと温まんねえ。冷てえと斬れ味が悪ぃんだ」
いつの間にか、竹刀を握った私の手を上から握るリョーマ。いや近っ……でもそれ所じゃない。
「いきなり意味わかんないんだけど」
「お前骨折ったことあるだろ」
「なんでわかんの?」
「身体が無意識に左手庇ってる。これじゃ安定してねえ」
しっかり支えろと言わんばかりの熱が、左手首に伝わってくる。メロすぎてひっくり返りそうになった瞬間、どつかれる背中。
「ちょ」
片足がラインを越える。面越しでもわかる蟻地獄の眼光、吸い込まれる。身体動かない。これは一瞬でもリョーマに、どスケベな囁きで心狂わせてくる悪いお兄さん性を妄想した罰? いける気がしたのは気のせい。私はただの蟻だった……。
「ツルギ!」
ドキッとして振り返る。初めてだ……名前を呼ぶリョーマ、謎のシミ広がる懐全開で。
「おいやめろ変態」
てかなんてタイミングで声かけてくるんだこらっ。
「菓子、懐に入れ忘れてたみてえだ。お前の涙で溶けた!」
身体の熱が一気に上がる。力が入る。
「どうでもいいわっ」
乾いた音が響く。目の前には狼狽する薄羽さん。私の竹刀が籠手を取っていた。
「なんで?」とざわつく周囲、私が一番聞きたい。
「そうだ、しっかり握れ。熱を込めれば絶対折れねえ。心も、骨も!」
文字通り、後方腕組み悪党面のリョーマ。やっぱ意味わからん。……けど、その笑顔を見てるとつられる。
『楽しいは何よりも強え力だ』
ああ、そっか。
「嫌よ。あなたと竹刀を交える無意味さを知ってるもの。私の魂が穢れるわ」
「ぅう薄羽さんでも、あれがまぐれにしか、み、見えないわけ?」
こうでも言わなきゃ絶対相手してくれない。当然、場は騒然。
「あの土壇場ギフテッドどした」
「髪切られてヤケなんじゃね」
「抜身の刀に挑むとか、まるで諸刃の剣」
この空気の中、浮かれているのはリョーマだけ。
「あいつ挑発うめえな」
薄羽さんは、ガタガタな挑発を鼻で笑うと面を被る。
「いいわ。相手してあげる」
もう後に引けない。
「見せてもらいましょうか、土壇場ギフテッドとやらを」
試合場内の中心に立つ薄羽さん。
「このラインを跨いだら一切の希望を捨てなさい」
地獄の門みたいなこと言って静かに構える。まさに蟻地獄。脇汗やばいし手震える。ライン跨げる気がしない。
「刀はしっかり握らねえと温まんねえ。冷てえと斬れ味が悪ぃんだ」
いつの間にか、竹刀を握った私の手を上から握るリョーマ。いや近っ……でもそれ所じゃない。
「いきなり意味わかんないんだけど」
「お前骨折ったことあるだろ」
「なんでわかんの?」
「身体が無意識に左手庇ってる。これじゃ安定してねえ」
しっかり支えろと言わんばかりの熱が、左手首に伝わってくる。メロすぎてひっくり返りそうになった瞬間、どつかれる背中。
「ちょ」
片足がラインを越える。面越しでもわかる蟻地獄の眼光、吸い込まれる。身体動かない。これは一瞬でもリョーマに、どスケベな囁きで心狂わせてくる悪いお兄さん性を妄想した罰? いける気がしたのは気のせい。私はただの蟻だった……。
「ツルギ!」
ドキッとして振り返る。初めてだ……名前を呼ぶリョーマ、謎のシミ広がる懐全開で。
「おいやめろ変態」
てかなんてタイミングで声かけてくるんだこらっ。
「菓子、懐に入れ忘れてたみてえだ。お前の涙で溶けた!」
身体の熱が一気に上がる。力が入る。
「どうでもいいわっ」
乾いた音が響く。目の前には狼狽する薄羽さん。私の竹刀が籠手を取っていた。
「なんで?」とざわつく周囲、私が一番聞きたい。
「そうだ、しっかり握れ。熱を込めれば絶対折れねえ。心も、骨も!」
文字通り、後方腕組み悪党面のリョーマ。やっぱ意味わからん。……けど、その笑顔を見てるとつられる。
『楽しいは何よりも強え力だ』
ああ、そっか。
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