魔法少女のマスコットになったのに、この子が全然その気じゃない件について。

すらすら凪々

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第一章

転生先もブラックだったんですが1

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「おはよーっぽ!」

 現世ならば、寝ぼけ眼をこすりながらのだるい挨拶も──ここでは、きゅるるん・うるるん・ピッカピカのハイテンション朝のごあいさつになる。 

「おはよーっぴー! 今日もソラメモがんばるっぴ!」

 ここには“ネガティブ”という言葉が存在しない。いや、あっても自動変換されるようなもんだ。
 マイナス感情はすべて、ポジティブというフィルターにかけられて、キラキラに加工される。

 ……正直、俺はそんな日々に少しずつうんざりしてきていた。




 数ヶ月前、俺はこの天界《ソラリウム》に“生まれ落ちた”。

 ──そう、いわゆる転生ってやつだ。

 原付で快調にぶっ飛ばしてたある日、目の前を何か小さなモノが横切った。
 とっさにハンドルを切って、ガシャン!って派手にコケた。

 しかもその時、俺は15連勤明けでヘトヘト。やっと数時間、自宅に帰れるって時だった。

 なのに、コレだ。やってられないったらない。


 ──で、「あ、死んだな」と思った次の瞬間には、この世界にいた。

 フワッフワで、キラッキラな、現実感のない世界。

 ピンクや黄色の雲、真っ白に晴れた空、絶えず輝く虹。
 初めて見たときは「女児向けアニメの中かよ!」ってツッコミを我慢するのが大変だった。

 雲のあいだに漂いながら、俺は近くの湖面に映った自分の姿を見て、絶句した。

 

 ──白い。まるい。ふわふわしてる。

 

「……ぬいぐるみ?」

 いや、ぬいぐるみっていうか、完全にマスコットキャラだった。
 日曜朝にテレビで見かけるような、あの枠のやつだ。

 呆然としていると、どこからか同じような姿のやつがふよふよ近づいてきて、こう言った。

「新入りッピね! こっち来るッピ!」

 流されるままについていくと、そこは荘厳な建物の中だった。

 重厚な扉が開き、ふわりと甘い花の香りが漂ってくる。

「ママミラさまーッピ! 新しい仲間が生まれましたッピ!」

 室内は、きらめく宝石の箱のようだった。

 天井からぶら下がる無数の光の粒。風に揺れるレースのカーテン。
 いくつもの窓から差し込む光が、世界全体を神殿みたいに見せていた。
 

「そうですか。──おはよう、シエル=フィロソフィア=ルクス=コーデックス」

 そこに立っていた──いや、浮かんでいたのは、長い銀髪に星をまとう女性。
 透きとおる声で、俺に向かってそう告げた。

 シエル? フィロ……なんとか?
 そんな長ったらしい名前に聞き覚えはない。

 訝しげな俺に、さっきのもふもふが補足を入れる。

「ママミラさまは新しく生まれた仲間に、ありがたーい名前をくれるッピ!」

 ……ありがたいのかは置いといて、ネーミングセンスにはちょっと疑問がある。

「まだ少し戸惑っているようですね。──ルーダ、ソラリウムを案内してあげなさい」

「かしこまりましたッピ! シエル、ついてくるッピ!」

 そう言って“ルーダ”と呼ばれたそいつは、ぷわんと浮かび上がって、部屋を飛び出した。

 ……いやいや俺、飛べねーけど!? 

 そうツッコミを入れる間もなく、ぽよんと俺の“マスコット人生”がスタートしたんだ。
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