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第一章
転生先もブラックだったんですが2
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俺はルーダの後を追った。
空はなんとなく意識したら飛べた。この世界の物理法則はどうなってんだ。ジャンプした覚えもないのに、ふわっと身体が浮いて、それっきり下がらない。現実味がなさすぎて逆に不安になる。
「このソラリウムは、雲よりず~~~っと上にあるッピ!」
ルーダがクルクルと宙返りしながら案内してくる。
見下ろすと、眼下にはまるで綿菓子のようなフワッフワの雲が広がっていた。その雲の海の合間には、大小さまざまな「島」が浮いていて、それぞれが虹の橋で繋がっている。まるで空中に浮かぶおとぎの国。色も、形も、現実の常識からかけ離れていた。
「……え、あれで島って言うのか?」
思わず独りごちる。
キノコの傘みたいなやつもあれば、クジラの背中みたいなのもある。立っていいのか疑問になる形状ばかりだ。でも、確かにそこには“暮らし”があった。ふわふわの球体たちが、虹に乗ったり滑ったり、ぷかぷか飛んで移動してる。
ルーダからは、いろんな場所に連れていかれた。
まず案内されたのは、神殿群。ママミラさまを礼拝するための神聖な空間で、どの神殿も建築様式がちがっていて驚いた。金色の花で飾られた礼拝堂、水晶の壁でできたチャペル、音楽が鳴り響く風の広間。そこに漂う空気は静かで、ふわふわの連中もちゃんと頭(らしき部位)を下げて祈っていた。
「ここはルクス広場ッピ! みんなが集まってわちゃわちゃする場所ッピよ!」
なるほど、確かににぎやかだ。小さなマーケットもあるし、浮かぶ屋台まである。誰が作ってるんだろうな、これ。
だが、いちばん気になったのは温泉だった。
「エーテル温泉・ゆらゆらの湯ッピ!」
なんか名前からして効能ありそうだ。巨大な雲をくり抜いたような浴槽に、淡い光を帯びた湯が湛えられている。表面には花のような文様が浮かび、湯気は香るように甘い匂いをまとっていた。
「成分はエーテル由来ッピよ。ふわふわになるッピ!」
「……エーテルってなに?」
「空気と魔力と記憶がまざったものッピ!」
説明がふんわりしすぎててよく分からないが、とりあえずすごいらしい。だがそのときは入らずじまいだった。だって生まれてまだ30分くらいだしな。
「──で、ここがスコピカ本部ッピ!」
ルーダが誇らしげに紹介したその場所は、急に景色が変わる場所にあった。幻想的だった空の風景の中に、突如として現れる巨大な塔。空を突き刺すようにそびえ立ち、表面は金属質で、ガラスと光のラインが走っている。どう見てもSFだ。場違い感がすごい。
「ここが今日から働いてもらうとこッピ!」
「今日からって!? 早くないぽ!? 俺、生まれて数分しか経ってないぽよ!?」
企業戦士もびっくりの超即戦力社会。休む暇もリフレッシュもなく、いきなり働かされる。あの世ってもっとこう、のんびりしてるもんじゃないのか!?
「大丈夫ッピ、大丈夫ッピ! スコピカの教育制度はスパルタじゃないッピ!」
だからそういうことじゃない。ていうか“大丈夫”の根拠を言ってくれ。
ルーダに促されて塔の中に入ると、そこにはまた別世界が広がっていた。
床は透き通るガラスのような材質で、踏むとポンポンと可愛らしい音が鳴る。壁には空に浮かぶ映像や文字が流れ、天井は吹き抜けで、最上部には星空のような球体がゆっくりと回っていた。
「天井のは、ソラリウムの天球儀ッピ。星の動きが映ってるッピよ!」
ルーダの言葉に見上げると、確かに星々がゆっくり動いているのがわかる。夜ではないのに、そこだけ静かな宇宙のようだった。
俺は思った。
「……やべぇ、ちょっとワクワクしてきたぽよ」
空はなんとなく意識したら飛べた。この世界の物理法則はどうなってんだ。ジャンプした覚えもないのに、ふわっと身体が浮いて、それっきり下がらない。現実味がなさすぎて逆に不安になる。
「このソラリウムは、雲よりず~~~っと上にあるッピ!」
ルーダがクルクルと宙返りしながら案内してくる。
見下ろすと、眼下にはまるで綿菓子のようなフワッフワの雲が広がっていた。その雲の海の合間には、大小さまざまな「島」が浮いていて、それぞれが虹の橋で繋がっている。まるで空中に浮かぶおとぎの国。色も、形も、現実の常識からかけ離れていた。
「……え、あれで島って言うのか?」
思わず独りごちる。
キノコの傘みたいなやつもあれば、クジラの背中みたいなのもある。立っていいのか疑問になる形状ばかりだ。でも、確かにそこには“暮らし”があった。ふわふわの球体たちが、虹に乗ったり滑ったり、ぷかぷか飛んで移動してる。
ルーダからは、いろんな場所に連れていかれた。
まず案内されたのは、神殿群。ママミラさまを礼拝するための神聖な空間で、どの神殿も建築様式がちがっていて驚いた。金色の花で飾られた礼拝堂、水晶の壁でできたチャペル、音楽が鳴り響く風の広間。そこに漂う空気は静かで、ふわふわの連中もちゃんと頭(らしき部位)を下げて祈っていた。
「ここはルクス広場ッピ! みんなが集まってわちゃわちゃする場所ッピよ!」
なるほど、確かににぎやかだ。小さなマーケットもあるし、浮かぶ屋台まである。誰が作ってるんだろうな、これ。
だが、いちばん気になったのは温泉だった。
「エーテル温泉・ゆらゆらの湯ッピ!」
なんか名前からして効能ありそうだ。巨大な雲をくり抜いたような浴槽に、淡い光を帯びた湯が湛えられている。表面には花のような文様が浮かび、湯気は香るように甘い匂いをまとっていた。
「成分はエーテル由来ッピよ。ふわふわになるッピ!」
「……エーテルってなに?」
「空気と魔力と記憶がまざったものッピ!」
説明がふんわりしすぎててよく分からないが、とりあえずすごいらしい。だがそのときは入らずじまいだった。だって生まれてまだ30分くらいだしな。
「──で、ここがスコピカ本部ッピ!」
ルーダが誇らしげに紹介したその場所は、急に景色が変わる場所にあった。幻想的だった空の風景の中に、突如として現れる巨大な塔。空を突き刺すようにそびえ立ち、表面は金属質で、ガラスと光のラインが走っている。どう見てもSFだ。場違い感がすごい。
「ここが今日から働いてもらうとこッピ!」
「今日からって!? 早くないぽ!? 俺、生まれて数分しか経ってないぽよ!?」
企業戦士もびっくりの超即戦力社会。休む暇もリフレッシュもなく、いきなり働かされる。あの世ってもっとこう、のんびりしてるもんじゃないのか!?
「大丈夫ッピ、大丈夫ッピ! スコピカの教育制度はスパルタじゃないッピ!」
だからそういうことじゃない。ていうか“大丈夫”の根拠を言ってくれ。
ルーダに促されて塔の中に入ると、そこにはまた別世界が広がっていた。
床は透き通るガラスのような材質で、踏むとポンポンと可愛らしい音が鳴る。壁には空に浮かぶ映像や文字が流れ、天井は吹き抜けで、最上部には星空のような球体がゆっくりと回っていた。
「天井のは、ソラリウムの天球儀ッピ。星の動きが映ってるッピよ!」
ルーダの言葉に見上げると、確かに星々がゆっくり動いているのがわかる。夜ではないのに、そこだけ静かな宇宙のようだった。
俺は思った。
「……やべぇ、ちょっとワクワクしてきたぽよ」
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