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見上げた岩壁の堅牢さに、馬車の窓から身を乗り出した少年は思わず感嘆の息を漏らした。
噂に名高いヴァルグリム砦は、何者をも寄せ付けない高く険しい壁を聳え立たせている。
「見てみろよ、ゴルドー、堀が城壁の内側にある」
「……これは外壁ですね。ヴァルグリム砦は二重の城壁が有名ですから」
「ほーん、あっちが内壁か」
ガタガタと不安定に揺れる馬車の中、窓から器用に身を乗り出した少年は、見慣れない景色に夢中になった。何せ、生まれてこの方王都アルビアナから出たことなどない。目新しい光景に、少年は夢中になった。王都を出てからずっと、牧歌的な牧草地が広がり、それが生い茂る森林に変わりるのを、目を皿のようにして眺めていた。鬱蒼とした森を抜けた先、堅固な岩砦がそびえ立つのを見た時には、思わず歓喜の声を上げた程だ。
山野と城塞を隔てる外壁は、見渡す限り左右に広がっている。城塔に連なる跳ね橋を渡った先、深い空堀に夢中になっていると、ガタリ、馬車が大きく揺れた。
「――ッ!!」
「っ聖女様!!」
体勢を崩し窓から投げ出されそうになった少年は、同乗していた護衛騎士のゴルドーに押さえられる。見れば、跳ね橋を下りた先の段差で馬車が揺れたらしい。
「っぶね……油断してたわ」
急なことで慌てた御者が馬車を止める。幾台もの馬車が連なる真ん中が止まり、行列は停滞を見せた。
王都からノルデュール領までの行程は一週間程。第三聖女の輿入れとなれば相応の支度が相応しいかに思われたが、存外にその行軍は質素なものであった。少年の乗る馬車と、挟むようにして荷を詰めた馬車が二台、その前後は騎馬が守りを固めている。
元より少年の身元が頼りないこともあるが、それ以上に治安の問題が大きい。王都から離れる程に無法者に襲われる確率は増える。こちらが武装しているいないに関わらず、捨て身で一攫千金を狙いに来る、後先のない者はいるものだ。
極力少ない荷馬車で、華美なものは避けるように、というのが護衛に当たるノルデュール領騎士団の要請だった。
「……何をしている」
低いが通る声が耳朶を打つ。ゴルドーに支えられ、馬車の内に戻った少年に、窓の外から不機嫌そうな声音が寄越された。
「べーつに、ちょっとバランス崩しただけ」
窓から覗き込む漆黒の瞳に、へらへらと笑いながら答える。不機嫌そうに眇められた瞳が、少年を睨み付けた。
「……迂闊な。聖女が怪我をしてどうする。……気を付けろ」
「へいへーい、ご心配ありがとうございますよ、ダ・ン・ナ・サ・マ」
敢えて色を滲ませた声音で呼ぶ。流石に少年の挑発には軽率に乗らず、男は無言で馬を翻した。
ガタガタと、再び動き出した馬車に大人しく座り、少年は窓の外に目を遣る。揺れる馬車の隣、王都を出てから併走している巨躯の黒馬は、周囲を警戒しながら少年の方を一瞥もしようとはしなかった。
「……よろしいのですか」
少年の向かいに控えたゴルドーが、遠慮がちに問うて来る。狭い馬車の座席に縮こまった大男の窺うような視線を、少年は一笑に付した。
「よろしいって、何がだよ」
「……旦那様と、お話されなくてよろしいのですか」
ゴルドーの口から出た旦那様という単語に、少年はこの上ない渋面を作った。確かに先刻その呼び方をしたのは自分であるが、嫌味の込められていない他者からのその言葉は、胸に苦く響く。
「べっつに、親交を深める理由もないだろ。どうせ、政略結婚みたいなもんなんだし」
窓の外、煤黒の甲冑を少年は眺めた。先日婚姻の契りを交わした男である。だが、両者の間に夫婦としての関係性は皆無だ。
王都で行われた婚姻の儀から少年の夫となったノルデュール領主は、殊更に少年に冷めた態度を取った。
濡れ羽色の髪を鬱陶しげに掻き上げ、黒馬に跨がる男とは、王都から此の方、碌に話をしていない。元々、王命による強制的な婚姻だ。互いに不本意なのは承知の上、だからといって関係性を悪いままで過ごしたい訳ではない。
少なくとも、少年はそう思っていた。しかし孤高の獣は、少年の存在を認めるつもりはないようだった。
隣の騎馬に指示を飛ばす夫たる男が、ふと、顔を上げる。深淵を湛えた瞳が、少年を見た。冷たい漆黒は直ぐに反らされる。まるで嫌悪を隠さない様相に、作り笑いを装う暇もない。
――少年とて、結婚を望んでいた訳ではないのに。
嫌悪される要因は分かっている。けれど、今更どうしようもない。
頬杖を突き眺める窓の外、揺れる視界に映る砦がどこまでも頑なに続いている。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
婚姻の儀は神殿で行われた。
女神ユミエールの名の下、少年とカヴェーリン伯爵は虚ろな愛を誓い合う。
宣誓の署名をする段に至って、少年は大いに困った。硝子の板の上に置かれた高級な洋紙、宣誓の言葉の下に、隣に立つ男はするすると名を綴る。
――レオニード・カヴェーリン。少年の夫となる人物の名だ。
神前においては流石に煤黒の甲冑を脱ぎ、黒の燕尾服に身を包んでいる。精悍な顔は顰められ、とてもではないが晴れの日にする表情ではない。
殊の外に丁寧な字で名を綴った男は、少年に羽根ペンを渡して来る。ペン先をインクに浸し、紙面を前に、少年は手を止めた。
書くべき名を、少年は持ち合わせていない。
動きを止めた少年を、大司教が不審そうに見て来る。傍らの獣からの視線は、刺すようだ。
へらりと笑みを貼り付けて、少年は辿々しい手付きで、『第三聖女』と綴った。
蚯蚓がのたくったような字に、大司教が戸惑いを見せる。仕方がないではないか。少年は、己を表す言葉を、他に知らない。
ふ、と傍らから吐息が漏れた。失笑に近いそれに、空気がひりつく。
「……成る程、聖女様の御名は辺境伯如きには告げられない、という訳か」
冷え冷えとした声音に、胸の奥に凝りが沈殿していく。手足の先が冷たくなるのを、少年は感じていた。
弁明をするべきだとは分かっていた。ここで生じた不和は二人の関係性にとって致命的であることも。
反論は喉に貼り付く。言葉を飲み込み、少年は、へらりとした作り笑いで返す。
漆黒の獣の、失望を宿した瞳に、笑みは凍り付いた。けれど、仕方がないではないか。
名前がないなどと、知られる訳にはいかない。
己が生まれて来ることを望まれなかった存在などと――愛されたことがないなどと、口が裂けても言える筈がなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
北方の守護の要であるヴァルグリム砦は、二重の壁に守られた堅牢な城塞都市である。隣国との境となる北の山脈は、その険しさ故に人類未踏の処女峰が連なっている。それ故、深い山々は魔獣の蠢く魔境と化していた。
跋扈する魔獣の中で、生存競争に敗北したものたちは人里へと下りて来る。魔獣の中では弱者であっても、人間にとっては大いなる驚異だ。それらの獣を排除し、領民を守るのが、代々ノルデュール領を治める者の役目だった。
馬車を降りた少年は、目の前の光景に、王都で教え込まれた知識を思い出していた。
ヴァルグリム砦の中核となる城塞、居城ともなっているその城門前の広場に、馬車は止まった。
広場は人で溢れていた。倒れた戦士の呻き声が、嘆きが、悲嘆が充満している。十数名程の黒い鎧に身を包んだ騎士は、王都に赴かず砦を守る為に残った騎士団の者たちだろうか。
包帯を巻かれた騎士たちの、塞ぎきれないでいる皮膚の熱傷に、少年は小さく息を飲む。竜が出たと、女王は言っていたのではなかったか。
少年の隣、息せき切って黒馬から降りた煤黒の甲冑に、地面に座り込んだ騎士たちがぱらぱらと顔を上げた。
「……っレオ様!」
「団長!!」
口々に呼ばれるレオニードの元に、騎士の一人が近寄って来る。白い髭を蓄えた老練の騎士だ。隣に立つ少年には一瞥もくれず、主の前で膝を突いた。
「ご帰還お待ち申し上げておりました、レオ様。長きに渡る遠征、並びに王太子殿下の護衛の任、お疲れ様にございました」
「御託は良い、状況を報告しろ」
「はっ、レオ様が王都へ出立後、幾度が魔獣の襲撃はありましたが、こちらの手勢でも対処出来る範囲ではございました。……ですが……」
「……竜か」
苦り切った主の表情に、老練の騎士は重々しく頷く。見れば黒い鎧は炎に焼かれたのか端々が溶けかけ、その内側も皮膚が幾箇所か爛れている。無視されたままの少年は、広場を見回した。皆、一様に負傷している。命に関わる程の重傷者はいないようだが、呻きながら伏している者も多い。
隣に立つ便宜上の夫は、こちらを一顧だにしない。頑なな主の様子を汲んでか、老練の騎士を初めとして、怪我を負っている騎士たちの視線も何処か余所余所しい。
――莫迦じゃないだろうか。
段々と少年は腹が立って来た。無視をされることに対してではない。軽んじられるのには慣れている。だが、夫たる人物の態度は余りにも浅はかだった。
負傷した人間がいる。未だ戦わなければならない人間がいる。それを癒す為、この婚姻は成されたのではないか。その為に、少年は北の地へ寄越されたのではないのか。
名を告げられなかったことがそれ程に癇に障ったのか。プライドの高いお貴族様の考えは少年には分からない。
プライドがなんだ。誇りがなんだ。そんなものを抱えて生きられるのは、人生に余裕のある人間だけだ。
少年には何もない。だからこそ、誇りを盾に大事なことを見誤っている人間を見ると、腹が立って仕方がなかった。
「昨夜未明、赤竜が山脈を降りたとの知らせが入りまして、一部隊を率いて偵察に向かいましたが」
「お前の隊か、セルゲイ」
「はっ、元より偵察ですので迎撃はしないつもりでしたが……思ったより人里近い所まで降りてきていた為、斥候と交戦状態になってしまい、」
「……それでこの様か」
「面目次第もございません」
深々と頭を垂れるセルゲイと呼ばれた老練の騎士は、次いで赤竜が山脈に去ったことを報告した。
顔を上げたセルゲイが、漸く、ちらとこちらを見た。彫りの深い顔は苦しげに歪められ、主譲りでもなかろうが眉間に深く刻まれた皺がこの度の被害の苦渋を示している。頭皮よりも濃い茶の髭の下で何か言いたげに口を開き、しかし直ぐに閉ざされた。逡巡は主に阿るものだろうか。つくづく度し難い。
「赤竜は」
「現在は山頂近くで羽を休めているようです」
「だが、また何時降りて来るとも限らない……か、」
「ほんで、何で竜はこの砦攻めて来てんだ?」
唐突に口を挟んだ少年に、ぎょっとしたようにセルゲイが目を開く。傍らの煤黒の甲冑が、不機嫌そうに少年に向き合った。漸く無視は止めたのか。少しばかり小気味良く、溜飲を下げながら少年は口の端を上げた。
「……そんなものは知らない」
「あっそ、原因が分かんねぇなら止めようがねぇなあ。……じゃ、倒すのか?」
少年の疑問に、負傷兵から一斉に失笑が漏れた。傍らの漆黒は渋面を深め、応じたのは苦笑した老練の騎士だった。
「第三聖女様とお見受けしますが、聖女様は竜についてご存じないようですな? あれは、人の手で討伐出来るようなものではないのですよ」
明らかに聖女としての無知を嘲笑う言い方だったが、少年は一切気にせず、金の髪をさらりと揺らして小首を傾げる。
「何それ、じゃあこの先も襲って来る赤竜と戦い続ける訳? 倒せもしないしいつ終わるかも分からない戦いを、永遠に?」
迎撃し続けるだけの戦いをこの辺境の地で続けるのはジリ貧だ。いつか限界が来る。否、もう来ているのかも知れない。
嘲笑は瞬時に怒気へと変わった。セルゲイの近く、座り込んでいた若者が勢い込んで立ち上がった。
「っふざけんなよ、何も知らない、お気楽な聖女の癖に!」
「マルク、」
諌めるセルゲイの声音は酷くおざなりだ。怒りも露わに、マルクと呼ばれた若い騎士は、少年に詰め寄って来る。短く刈られた茶髪の下、頭皮から右の頬にかけて酷い熱傷が走っている。右足も負傷しているのか立ち辛そうにしながらも、怒りで痛みを忘れているのか語気荒く少年を糾弾した。
「何が、聖女だ! ……王都でぬくぬく、男を食い漁ってただけの淫売聖女の癖に……っ! 俺たちは、ヴァルグリム砦の者たちは、決して第三聖女に阿ったりなどしない!!」
明らかに自分に酔っている。高らかに宣言するマルクを、しかし咎める者はなかった。負傷兵たちは、ある者は同様に怒りを表明し、ある者は気まずそうに面を伏せ、ある者はことの顛末を傍観している。セルゲイも隣の煤黒の甲冑も、ことを収める気はないらしい。主と共に王都へ赴いていた騎士団の者たちも、何事かと馬を降りて見守っている。ゴルドーは元より少年の身の護衛が任務だ。その心根までを守る道理はない。
余りの孤立無援な状況に、少年はいっそ笑い出したくなった。
(何て莫迦な奴ら)
心の底から、そう思う。王命で定められた時から、この婚姻の主旨は明確に決められている。――竜の被害がなくなるまで、聖女を使い果たしてでも、王国を守護せよ。
この新たなノルデュール領主はそれを分かって婚姻に応じた筈だろうに。それをちんけなプライド如きで不意にするつもりなのか。莫迦だ。心の底から。
少年はへらりと笑った。
目の前で憤怒を浮かべたマルクが、瞬間戸惑い身を引きかけたのを、少年は見逃さない。
ぐいとその手首を引く。少しだけ身長の高い、その唇を、有無を言わさず己のもので塞いだ。
「……っ何を……?!」
驚きの声は傍らの夫たる人物から上げられた。唇を奪われたマルクは驚きからか凍り付いたように動けないでいる。その隙に、繋いだ口腔から魔力を注ぎ込んだ。
きらきら、きらきら、金の光が舞い上がるのに、衆目が息を飲むのが分かる。最早少年には見慣れた光景なので、大した感慨もなくマルクの口に魔力を注ぎ込んだ。痛みが減っていくのが体感出来たか、マルクは固まったまま動かない。
顔の火傷が、足の負傷が、次第に治って行く。奇跡の御業に皆が呆気に取られること暫し、少年は漸く唇を離した。
「……っな、なな……何だ、お前……は、破廉恥な?!」
呆然としたまま尻餅を突いたマルクは、漸く我に返ったのか、口元を押さえ戦慄いた。顔が露骨に赤い。
「キス如きで反応してんじゃねーよ……童貞か?」
「っう、うるせぇ! そんな訳ないだろ!!」
そんな訳なんだろうな、とその餓鬼じみた反論に少年は得心した。だからどう、ということでもない。
口元を拭いながら、少年は挑発するようにマルクを見下ろす。
「ま、少しは男前になったんじゃないか。傷があるよりはモテるだろ」
自身の頬をとんとんと指で示してみれば、マルクは赤い顔のまま自らの右頬をばっと押さえる。既に痛みはないようで、頭皮から頬にかけての皮膚の爛れが存在しないことを、手のひらで直に感じたのだろう。些か悔しげに、口を噤む姿は滑稽だった。
溜飲を下げた少年の肩を、ぐいと掴む者がある。険しい漆黒の瞳が、少年を睨め付けていた。
「……勝手なことをするな」
「勝手? 聖女としての仕事しただけだろ」
「望んでもいない者を癒すのは、押し付けと言う」
ははっ、と乾いた笑いが口から漏れた。
「じゃ、何で俺と結婚なんてしたんだよ? 魔獣と戦うから、それで負傷者が出るから、聖女が必要だったんじゃないのかよ?」
結婚という言葉に、あからさまに目の前の夫は狼狽した。何だ、少年は拍子抜けする。あんなにも硬質で冷淡に見えた男も、この降って沸いたような婚姻に動揺していたらしい。冷徹に、唯々諾々と、女王の命を遂行するのだろう。そんな少年の予想は良くも悪くも裏切られた。
鉄面皮の剥がれた男に、少年はにんまりと笑って見せた。意表を突かれている男にすり寄り、背伸びして耳元に口を寄せる。濡れ羽色の髪の隙間から、冷たい鋼と薄ら汗の臭いがした。
「まあ、見てろって。俺の絶技、見逃すなよ?」
手始めに、少年は結婚の言葉に怯んでいるセルゲイの頬を両手で挟むと、跪いているその口にぶちゅりと口付けをした。ざりざりと髭が刺さる。流石歴戦の猛者といった風体に相応しく、怪我も大したことがないのか、本の一分足らずの祝福で、傷は癒えたようだった。
顔を上げ、ぽかんとしている負傷兵どもの元へと足を向ける。
正に、ちぎっては投げちぎっては投げといった体で、少年は負傷した騎士たちに口付けを落としていった。
本来この程度の怪我を癒すのに接吻をする必要性はない。命に関わる重傷者はいないので、患部に手を触れられればそれで事足りる。奇跡は既に少年の思うがままだった。それでも口付けに拘ったのは、単に当てつけに過ぎない。
騎士たちは抵抗しなかった。傷が癒えると分かっていて、拒否出来る者はいないだろう。嫌そうに顔を歪めながらも、口付けを受け入れざるを得ない騎士たちの姿に、少年は胸がすく思いがした。
一通り治療という名の接吻を終え、くらくらと眩暈を起こしながら周囲を見渡す。傷を負っている者は誰もいない。皆、この不埒な聖女をどうにかしたいが、治癒して貰った手前何も言えない、といった体で、遠巻きに少年を見ていた。
満足感と倦怠感に包まれながら、ゴルドー、小さく呟く。察しの良い護衛は命じるまでもなく、傾ぐ少年の身を受け止めた。
きらきら、祝福の残滓の向こう、漆黒の獣は呆気に取られて少年を見ている。ざまあみろ、意識を手放す瞬間に呟いた言葉が、届いたかどうかは知れない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……やべー、めっちゃ寝てた……今何時」
「第三聖女様は一両日寝ておいででした」
寝起きの問いかけに即座に返答がある。ベッドに横になった少年は、大きく伸びをしながら辺りを見た。
見慣れない部屋だった。少年の寝かされている寝台は細身には余りある程大きく、子供なら三人程が並んで寝られそうだ。天蓋から垂れ下がったカーテンは空けられ、ベッドの傍らに当然のように控えるゴルドーの姿があった。
「……腰痛ぇし腹減ったし喉乾いた」
「直ぐに軽食の用意を」
有能な護衛兵は少年が零すと直ぐさま身を翻す。ドアの外、ゴルドーが使用人に声を掛けるのを聞きながら、少年はシーツの上で身を起こした。
ヴァルグリム砦の城門前で、大立ち回りを繰り広げたことは覚えている。溢れる怪我人どもを癒して、癒して、癒して。呆気に取られる兵士どもにざまあみろと思いながら、力を使い果たしてぶっ倒れたのはもう丸一日も前のことになるらしい。
「あー、……頭痛っえ……」
体の節々が痛むし、頭痛はするし、長旅の後風呂にも入らず寝こけていたのだから、体中が気持ち悪い。
シーツの上で不快さに顔を歪める少年の耳に、控えめなノックの音が響く。ゴルドーに伴われ、硬い表情の女が入って来た。
「……お食事をお持ちしました」
声音は余所余所しく、あからさまに少年の方を見ようとはしない。歓迎されることはないと思っていたが、露骨な態度に少年は鼻を鳴らした。
使用人かと思ったが、女の身に付けている衣服は上等そうだ。白いブラウスの上から、ふんだんに刺繍の施された頭から被る長いスカートを履いている。北方特有の黒髪は長く、右側で緩く三つ編みにされている。窓から差し込む光に、透けた瞳は黒よりは栗色に近く見えた。
食器を載せたトレーを持って室内に入った女は、無言でベッド脇のサイドテーブルに器を置いていく。
芋がごろっと入ったスープと、硬そうなパン。質素と言えば言葉が良いが、見方を変えればお前にはこれで充分だと言われているようにも見える。お前のような、淫売の聖女には、と。
力を使い果たして気絶する前に若い騎士――マルクと呼ばれていたか――に告げられたように、この砦でも結局少年はこうした扱いを受けるのだ。げんなりする。だが、取り立ててショックを受ける程のことではない。
女が配膳し終わるや否や、少年はひょいと硬い黒パンを手に取り、千切った欠片をスープに浸した。ぎょっとしたような女に見せびらかすように、ひたひたのパンを口に入れる。多少浸けた所で乾ききったパンは美味くも柔らかくもならない。だが、食える。それで充分だ。
「べっつに白パン用意しろとか、具を増やせとか言わねーけどさあ……流石に味薄すぎやしねーか? 塩足んねーよ」
ぞんざいな口調で話し、マナーもへったくれもない手付きで器を掴み直接口を付ける少年に、女は益々驚愕したように栗色の目を見開いた。
全く、どいつもこいつも聖女というものを神聖視しやがって。思いベッドに腰掛けたまま女の顔を見上げた少年は、ふとその顔色に気付き、渋面を一層深く顰めた。
女の顔色は悪かった。少しだけ呼気が荒く、立っているのも億劫そうだ。おまけに衣服はゆったりしていて、緩く手のひらで腹をさすっている。
そんなこと、気付きたくなかったのに。
女は気分が悪そうに胸元に手を当てる。少年は深い溜め息を吐いた。
「あのさあ……あんましあんたには嬉しくない提案だと思うけど」
少年が話しかけると、女は青い顔でこちらを見た。
「少し、手に触れても大丈夫そ?」
びくりと女が身を退いた。それはそうだろう。質問の仕方を誤った自身に、胸中舌打ちをする。誰だってそうだろう、淫売と噂の聖女などに触れられては汚れる――殊に女の立場ならそう思うに決まっている。
「聖女様……こちらの方は、何処か怪我でもされているのでしょうか」
助け船は横合いから寄越された。ベッドの傍らに控えたゴルドーが、無表情のまま問いかける。朴訥な護衛兵の助力に内心感謝しつつ、少年は眉根を下げて女を見上げた。
「悪い、勝手な推測かも知れないけど、……あんた、妊娠してる?」
女の目が見開かれる。ぎゅっと襟元を掴む心許なげな姿に、少年は首の後ろを撫でた。
「あー……辛そうだったから、ちょっとくらいなら悪阻軽く出来るかなって思ったけど……余計なお世話だったな」
誰だって汚れた聖女などに触れられたくないだろう。それが無垢な赤子を宿した女なら、尚更。
柄にもないことをした。後悔してまた硬いパンを齧る少年の前で、女が漸く口を開いた。
「……どうして、」
「ん?」
「どうして、分かったの? まだヴィクトルにもレオニードにも言ってないのに」
レオニードの名を聞き、少年は片眉を跳ね上げた。望まぬ婚姻をしたばかりの、少年の伴侶の名だ。
ヴィクトルの方は知らないが、身形と育ちの良さそうな女性の様子から推察できる。
「そんなの、分かんねーのは朴念仁のあんたの旦那と義弟だけだろ」
少年が肩を竦めると、女は漸く、表情を緩めた。
イリヤと名乗った女は、少年の予想通り、レオニードの兄、ヴィクトルの伴侶だった。
「本当にごめんなさい……私、貴方のこと誤解して、凄く失礼な態度を取ったと思う」
黒い三つ編みが揺れる。イリヤの背中に手を当てた少年は、小さく鼻を鳴らした。
「べっつに、いつものことだから気にしてねーよ」
「でも、食事も……あんな嫌がらせみたいな……」
「あー、あれやっぱ嫌がらせか。別に食えるから、いいけど」
ベッドに横掛けになり、少年に背を向けていたイリヤがくるりと振り返った。頬の血色が随分と良くなっている。軽い貧血と、悪阻か。ベッドの上で胡座を掻いた少年の手を、体調の良くなったイリヤはぎゅっと握った。
「良くない、本当に良くないわ。私、ずっと悪阻も酷くて、でも誰にも相談出来なくて……だから、感謝してるの、すっごく」
真摯な栗色の瞳に見つめられ、少年は言葉に詰まった。罵られ、軽蔑され、疎んじられることには慣れている。だが、感謝されたり、好意を向けられたりするのには、全くの不慣れだった。
「……言わないのかよ、そのヴィクトルとやらに」
妊娠のまだ初期の初期であるからと、イリヤは伴侶に告げていないらしい。そんなものさくっと言えば良いのに、思う少年の前で、イリヤが苦笑した。
「ヴィクトルはね、生まれつき心臓が弱いの。二十歳まで生きられないってお医者様に言われて、今まで生きてきたから……」
大事そうにイリヤは腹を撫でる。少年には全く理解出来ない。明日をも知れない人間を愛する気持ちも、その子を宿す気持ちも、赤子を愛しく思う気持ちすらも。
「ほーん、じゃ尚更言った方がいいじゃん。残り少ない人生、心残りがない方がいいだろ? 子供の成長見たさに寿命も延びるかもしれないぜ?」
完全に無責任で無神経な発言だ。けれどイリヤは怒ることなく、瞳を揺らした。
「っふふ、面白い。皆ね、あの人の話になると、どうしても気を遣って話するから……こんなにはっきり言われたの初めて」
「怒ってくれてもいいけど?」
「いいえ、……いいえ、」
少年はイリヤの背から手を離した。小さな体が震えている。
「ねえ、聖女様……どうか……出来るなら、どうか、あの人の病を治しては頂けませんか?」
少年に向き合う薄い唇が戦慄いた。真っ直ぐに、切実に、見つめる瞳を直視出来ず、少年は俯いた。長い金の前髪が顔を覆う。
聖女の“ギフト”は万能ではない。怪我は癒せても根源的な病までは治すことが出来ない。何が聖女だ、何が奇跡だ。この手が癒すことが出来ることなどほんの一握りでしかない。
「…………悪い」
口から絞り出される言葉が虚しくシーツに落ちる。イリヤの口から小さく吐息が零れた。落胆か、失望か。いいの、分かってる、と薄ら涙を浮かべる母になる人を真っ直ぐ見ることが出来ず、きつく握りしめられた指先を只、見下ろしていた。
噂に名高いヴァルグリム砦は、何者をも寄せ付けない高く険しい壁を聳え立たせている。
「見てみろよ、ゴルドー、堀が城壁の内側にある」
「……これは外壁ですね。ヴァルグリム砦は二重の城壁が有名ですから」
「ほーん、あっちが内壁か」
ガタガタと不安定に揺れる馬車の中、窓から器用に身を乗り出した少年は、見慣れない景色に夢中になった。何せ、生まれてこの方王都アルビアナから出たことなどない。目新しい光景に、少年は夢中になった。王都を出てからずっと、牧歌的な牧草地が広がり、それが生い茂る森林に変わりるのを、目を皿のようにして眺めていた。鬱蒼とした森を抜けた先、堅固な岩砦がそびえ立つのを見た時には、思わず歓喜の声を上げた程だ。
山野と城塞を隔てる外壁は、見渡す限り左右に広がっている。城塔に連なる跳ね橋を渡った先、深い空堀に夢中になっていると、ガタリ、馬車が大きく揺れた。
「――ッ!!」
「っ聖女様!!」
体勢を崩し窓から投げ出されそうになった少年は、同乗していた護衛騎士のゴルドーに押さえられる。見れば、跳ね橋を下りた先の段差で馬車が揺れたらしい。
「っぶね……油断してたわ」
急なことで慌てた御者が馬車を止める。幾台もの馬車が連なる真ん中が止まり、行列は停滞を見せた。
王都からノルデュール領までの行程は一週間程。第三聖女の輿入れとなれば相応の支度が相応しいかに思われたが、存外にその行軍は質素なものであった。少年の乗る馬車と、挟むようにして荷を詰めた馬車が二台、その前後は騎馬が守りを固めている。
元より少年の身元が頼りないこともあるが、それ以上に治安の問題が大きい。王都から離れる程に無法者に襲われる確率は増える。こちらが武装しているいないに関わらず、捨て身で一攫千金を狙いに来る、後先のない者はいるものだ。
極力少ない荷馬車で、華美なものは避けるように、というのが護衛に当たるノルデュール領騎士団の要請だった。
「……何をしている」
低いが通る声が耳朶を打つ。ゴルドーに支えられ、馬車の内に戻った少年に、窓の外から不機嫌そうな声音が寄越された。
「べーつに、ちょっとバランス崩しただけ」
窓から覗き込む漆黒の瞳に、へらへらと笑いながら答える。不機嫌そうに眇められた瞳が、少年を睨み付けた。
「……迂闊な。聖女が怪我をしてどうする。……気を付けろ」
「へいへーい、ご心配ありがとうございますよ、ダ・ン・ナ・サ・マ」
敢えて色を滲ませた声音で呼ぶ。流石に少年の挑発には軽率に乗らず、男は無言で馬を翻した。
ガタガタと、再び動き出した馬車に大人しく座り、少年は窓の外に目を遣る。揺れる馬車の隣、王都を出てから併走している巨躯の黒馬は、周囲を警戒しながら少年の方を一瞥もしようとはしなかった。
「……よろしいのですか」
少年の向かいに控えたゴルドーが、遠慮がちに問うて来る。狭い馬車の座席に縮こまった大男の窺うような視線を、少年は一笑に付した。
「よろしいって、何がだよ」
「……旦那様と、お話されなくてよろしいのですか」
ゴルドーの口から出た旦那様という単語に、少年はこの上ない渋面を作った。確かに先刻その呼び方をしたのは自分であるが、嫌味の込められていない他者からのその言葉は、胸に苦く響く。
「べっつに、親交を深める理由もないだろ。どうせ、政略結婚みたいなもんなんだし」
窓の外、煤黒の甲冑を少年は眺めた。先日婚姻の契りを交わした男である。だが、両者の間に夫婦としての関係性は皆無だ。
王都で行われた婚姻の儀から少年の夫となったノルデュール領主は、殊更に少年に冷めた態度を取った。
濡れ羽色の髪を鬱陶しげに掻き上げ、黒馬に跨がる男とは、王都から此の方、碌に話をしていない。元々、王命による強制的な婚姻だ。互いに不本意なのは承知の上、だからといって関係性を悪いままで過ごしたい訳ではない。
少なくとも、少年はそう思っていた。しかし孤高の獣は、少年の存在を認めるつもりはないようだった。
隣の騎馬に指示を飛ばす夫たる男が、ふと、顔を上げる。深淵を湛えた瞳が、少年を見た。冷たい漆黒は直ぐに反らされる。まるで嫌悪を隠さない様相に、作り笑いを装う暇もない。
――少年とて、結婚を望んでいた訳ではないのに。
嫌悪される要因は分かっている。けれど、今更どうしようもない。
頬杖を突き眺める窓の外、揺れる視界に映る砦がどこまでも頑なに続いている。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
婚姻の儀は神殿で行われた。
女神ユミエールの名の下、少年とカヴェーリン伯爵は虚ろな愛を誓い合う。
宣誓の署名をする段に至って、少年は大いに困った。硝子の板の上に置かれた高級な洋紙、宣誓の言葉の下に、隣に立つ男はするすると名を綴る。
――レオニード・カヴェーリン。少年の夫となる人物の名だ。
神前においては流石に煤黒の甲冑を脱ぎ、黒の燕尾服に身を包んでいる。精悍な顔は顰められ、とてもではないが晴れの日にする表情ではない。
殊の外に丁寧な字で名を綴った男は、少年に羽根ペンを渡して来る。ペン先をインクに浸し、紙面を前に、少年は手を止めた。
書くべき名を、少年は持ち合わせていない。
動きを止めた少年を、大司教が不審そうに見て来る。傍らの獣からの視線は、刺すようだ。
へらりと笑みを貼り付けて、少年は辿々しい手付きで、『第三聖女』と綴った。
蚯蚓がのたくったような字に、大司教が戸惑いを見せる。仕方がないではないか。少年は、己を表す言葉を、他に知らない。
ふ、と傍らから吐息が漏れた。失笑に近いそれに、空気がひりつく。
「……成る程、聖女様の御名は辺境伯如きには告げられない、という訳か」
冷え冷えとした声音に、胸の奥に凝りが沈殿していく。手足の先が冷たくなるのを、少年は感じていた。
弁明をするべきだとは分かっていた。ここで生じた不和は二人の関係性にとって致命的であることも。
反論は喉に貼り付く。言葉を飲み込み、少年は、へらりとした作り笑いで返す。
漆黒の獣の、失望を宿した瞳に、笑みは凍り付いた。けれど、仕方がないではないか。
名前がないなどと、知られる訳にはいかない。
己が生まれて来ることを望まれなかった存在などと――愛されたことがないなどと、口が裂けても言える筈がなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
北方の守護の要であるヴァルグリム砦は、二重の壁に守られた堅牢な城塞都市である。隣国との境となる北の山脈は、その険しさ故に人類未踏の処女峰が連なっている。それ故、深い山々は魔獣の蠢く魔境と化していた。
跋扈する魔獣の中で、生存競争に敗北したものたちは人里へと下りて来る。魔獣の中では弱者であっても、人間にとっては大いなる驚異だ。それらの獣を排除し、領民を守るのが、代々ノルデュール領を治める者の役目だった。
馬車を降りた少年は、目の前の光景に、王都で教え込まれた知識を思い出していた。
ヴァルグリム砦の中核となる城塞、居城ともなっているその城門前の広場に、馬車は止まった。
広場は人で溢れていた。倒れた戦士の呻き声が、嘆きが、悲嘆が充満している。十数名程の黒い鎧に身を包んだ騎士は、王都に赴かず砦を守る為に残った騎士団の者たちだろうか。
包帯を巻かれた騎士たちの、塞ぎきれないでいる皮膚の熱傷に、少年は小さく息を飲む。竜が出たと、女王は言っていたのではなかったか。
少年の隣、息せき切って黒馬から降りた煤黒の甲冑に、地面に座り込んだ騎士たちがぱらぱらと顔を上げた。
「……っレオ様!」
「団長!!」
口々に呼ばれるレオニードの元に、騎士の一人が近寄って来る。白い髭を蓄えた老練の騎士だ。隣に立つ少年には一瞥もくれず、主の前で膝を突いた。
「ご帰還お待ち申し上げておりました、レオ様。長きに渡る遠征、並びに王太子殿下の護衛の任、お疲れ様にございました」
「御託は良い、状況を報告しろ」
「はっ、レオ様が王都へ出立後、幾度が魔獣の襲撃はありましたが、こちらの手勢でも対処出来る範囲ではございました。……ですが……」
「……竜か」
苦り切った主の表情に、老練の騎士は重々しく頷く。見れば黒い鎧は炎に焼かれたのか端々が溶けかけ、その内側も皮膚が幾箇所か爛れている。無視されたままの少年は、広場を見回した。皆、一様に負傷している。命に関わる程の重傷者はいないようだが、呻きながら伏している者も多い。
隣に立つ便宜上の夫は、こちらを一顧だにしない。頑なな主の様子を汲んでか、老練の騎士を初めとして、怪我を負っている騎士たちの視線も何処か余所余所しい。
――莫迦じゃないだろうか。
段々と少年は腹が立って来た。無視をされることに対してではない。軽んじられるのには慣れている。だが、夫たる人物の態度は余りにも浅はかだった。
負傷した人間がいる。未だ戦わなければならない人間がいる。それを癒す為、この婚姻は成されたのではないか。その為に、少年は北の地へ寄越されたのではないのか。
名を告げられなかったことがそれ程に癇に障ったのか。プライドの高いお貴族様の考えは少年には分からない。
プライドがなんだ。誇りがなんだ。そんなものを抱えて生きられるのは、人生に余裕のある人間だけだ。
少年には何もない。だからこそ、誇りを盾に大事なことを見誤っている人間を見ると、腹が立って仕方がなかった。
「昨夜未明、赤竜が山脈を降りたとの知らせが入りまして、一部隊を率いて偵察に向かいましたが」
「お前の隊か、セルゲイ」
「はっ、元より偵察ですので迎撃はしないつもりでしたが……思ったより人里近い所まで降りてきていた為、斥候と交戦状態になってしまい、」
「……それでこの様か」
「面目次第もございません」
深々と頭を垂れるセルゲイと呼ばれた老練の騎士は、次いで赤竜が山脈に去ったことを報告した。
顔を上げたセルゲイが、漸く、ちらとこちらを見た。彫りの深い顔は苦しげに歪められ、主譲りでもなかろうが眉間に深く刻まれた皺がこの度の被害の苦渋を示している。頭皮よりも濃い茶の髭の下で何か言いたげに口を開き、しかし直ぐに閉ざされた。逡巡は主に阿るものだろうか。つくづく度し難い。
「赤竜は」
「現在は山頂近くで羽を休めているようです」
「だが、また何時降りて来るとも限らない……か、」
「ほんで、何で竜はこの砦攻めて来てんだ?」
唐突に口を挟んだ少年に、ぎょっとしたようにセルゲイが目を開く。傍らの煤黒の甲冑が、不機嫌そうに少年に向き合った。漸く無視は止めたのか。少しばかり小気味良く、溜飲を下げながら少年は口の端を上げた。
「……そんなものは知らない」
「あっそ、原因が分かんねぇなら止めようがねぇなあ。……じゃ、倒すのか?」
少年の疑問に、負傷兵から一斉に失笑が漏れた。傍らの漆黒は渋面を深め、応じたのは苦笑した老練の騎士だった。
「第三聖女様とお見受けしますが、聖女様は竜についてご存じないようですな? あれは、人の手で討伐出来るようなものではないのですよ」
明らかに聖女としての無知を嘲笑う言い方だったが、少年は一切気にせず、金の髪をさらりと揺らして小首を傾げる。
「何それ、じゃあこの先も襲って来る赤竜と戦い続ける訳? 倒せもしないしいつ終わるかも分からない戦いを、永遠に?」
迎撃し続けるだけの戦いをこの辺境の地で続けるのはジリ貧だ。いつか限界が来る。否、もう来ているのかも知れない。
嘲笑は瞬時に怒気へと変わった。セルゲイの近く、座り込んでいた若者が勢い込んで立ち上がった。
「っふざけんなよ、何も知らない、お気楽な聖女の癖に!」
「マルク、」
諌めるセルゲイの声音は酷くおざなりだ。怒りも露わに、マルクと呼ばれた若い騎士は、少年に詰め寄って来る。短く刈られた茶髪の下、頭皮から右の頬にかけて酷い熱傷が走っている。右足も負傷しているのか立ち辛そうにしながらも、怒りで痛みを忘れているのか語気荒く少年を糾弾した。
「何が、聖女だ! ……王都でぬくぬく、男を食い漁ってただけの淫売聖女の癖に……っ! 俺たちは、ヴァルグリム砦の者たちは、決して第三聖女に阿ったりなどしない!!」
明らかに自分に酔っている。高らかに宣言するマルクを、しかし咎める者はなかった。負傷兵たちは、ある者は同様に怒りを表明し、ある者は気まずそうに面を伏せ、ある者はことの顛末を傍観している。セルゲイも隣の煤黒の甲冑も、ことを収める気はないらしい。主と共に王都へ赴いていた騎士団の者たちも、何事かと馬を降りて見守っている。ゴルドーは元より少年の身の護衛が任務だ。その心根までを守る道理はない。
余りの孤立無援な状況に、少年はいっそ笑い出したくなった。
(何て莫迦な奴ら)
心の底から、そう思う。王命で定められた時から、この婚姻の主旨は明確に決められている。――竜の被害がなくなるまで、聖女を使い果たしてでも、王国を守護せよ。
この新たなノルデュール領主はそれを分かって婚姻に応じた筈だろうに。それをちんけなプライド如きで不意にするつもりなのか。莫迦だ。心の底から。
少年はへらりと笑った。
目の前で憤怒を浮かべたマルクが、瞬間戸惑い身を引きかけたのを、少年は見逃さない。
ぐいとその手首を引く。少しだけ身長の高い、その唇を、有無を言わさず己のもので塞いだ。
「……っ何を……?!」
驚きの声は傍らの夫たる人物から上げられた。唇を奪われたマルクは驚きからか凍り付いたように動けないでいる。その隙に、繋いだ口腔から魔力を注ぎ込んだ。
きらきら、きらきら、金の光が舞い上がるのに、衆目が息を飲むのが分かる。最早少年には見慣れた光景なので、大した感慨もなくマルクの口に魔力を注ぎ込んだ。痛みが減っていくのが体感出来たか、マルクは固まったまま動かない。
顔の火傷が、足の負傷が、次第に治って行く。奇跡の御業に皆が呆気に取られること暫し、少年は漸く唇を離した。
「……っな、なな……何だ、お前……は、破廉恥な?!」
呆然としたまま尻餅を突いたマルクは、漸く我に返ったのか、口元を押さえ戦慄いた。顔が露骨に赤い。
「キス如きで反応してんじゃねーよ……童貞か?」
「っう、うるせぇ! そんな訳ないだろ!!」
そんな訳なんだろうな、とその餓鬼じみた反論に少年は得心した。だからどう、ということでもない。
口元を拭いながら、少年は挑発するようにマルクを見下ろす。
「ま、少しは男前になったんじゃないか。傷があるよりはモテるだろ」
自身の頬をとんとんと指で示してみれば、マルクは赤い顔のまま自らの右頬をばっと押さえる。既に痛みはないようで、頭皮から頬にかけての皮膚の爛れが存在しないことを、手のひらで直に感じたのだろう。些か悔しげに、口を噤む姿は滑稽だった。
溜飲を下げた少年の肩を、ぐいと掴む者がある。険しい漆黒の瞳が、少年を睨め付けていた。
「……勝手なことをするな」
「勝手? 聖女としての仕事しただけだろ」
「望んでもいない者を癒すのは、押し付けと言う」
ははっ、と乾いた笑いが口から漏れた。
「じゃ、何で俺と結婚なんてしたんだよ? 魔獣と戦うから、それで負傷者が出るから、聖女が必要だったんじゃないのかよ?」
結婚という言葉に、あからさまに目の前の夫は狼狽した。何だ、少年は拍子抜けする。あんなにも硬質で冷淡に見えた男も、この降って沸いたような婚姻に動揺していたらしい。冷徹に、唯々諾々と、女王の命を遂行するのだろう。そんな少年の予想は良くも悪くも裏切られた。
鉄面皮の剥がれた男に、少年はにんまりと笑って見せた。意表を突かれている男にすり寄り、背伸びして耳元に口を寄せる。濡れ羽色の髪の隙間から、冷たい鋼と薄ら汗の臭いがした。
「まあ、見てろって。俺の絶技、見逃すなよ?」
手始めに、少年は結婚の言葉に怯んでいるセルゲイの頬を両手で挟むと、跪いているその口にぶちゅりと口付けをした。ざりざりと髭が刺さる。流石歴戦の猛者といった風体に相応しく、怪我も大したことがないのか、本の一分足らずの祝福で、傷は癒えたようだった。
顔を上げ、ぽかんとしている負傷兵どもの元へと足を向ける。
正に、ちぎっては投げちぎっては投げといった体で、少年は負傷した騎士たちに口付けを落としていった。
本来この程度の怪我を癒すのに接吻をする必要性はない。命に関わる重傷者はいないので、患部に手を触れられればそれで事足りる。奇跡は既に少年の思うがままだった。それでも口付けに拘ったのは、単に当てつけに過ぎない。
騎士たちは抵抗しなかった。傷が癒えると分かっていて、拒否出来る者はいないだろう。嫌そうに顔を歪めながらも、口付けを受け入れざるを得ない騎士たちの姿に、少年は胸がすく思いがした。
一通り治療という名の接吻を終え、くらくらと眩暈を起こしながら周囲を見渡す。傷を負っている者は誰もいない。皆、この不埒な聖女をどうにかしたいが、治癒して貰った手前何も言えない、といった体で、遠巻きに少年を見ていた。
満足感と倦怠感に包まれながら、ゴルドー、小さく呟く。察しの良い護衛は命じるまでもなく、傾ぐ少年の身を受け止めた。
きらきら、祝福の残滓の向こう、漆黒の獣は呆気に取られて少年を見ている。ざまあみろ、意識を手放す瞬間に呟いた言葉が、届いたかどうかは知れない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……やべー、めっちゃ寝てた……今何時」
「第三聖女様は一両日寝ておいででした」
寝起きの問いかけに即座に返答がある。ベッドに横になった少年は、大きく伸びをしながら辺りを見た。
見慣れない部屋だった。少年の寝かされている寝台は細身には余りある程大きく、子供なら三人程が並んで寝られそうだ。天蓋から垂れ下がったカーテンは空けられ、ベッドの傍らに当然のように控えるゴルドーの姿があった。
「……腰痛ぇし腹減ったし喉乾いた」
「直ぐに軽食の用意を」
有能な護衛兵は少年が零すと直ぐさま身を翻す。ドアの外、ゴルドーが使用人に声を掛けるのを聞きながら、少年はシーツの上で身を起こした。
ヴァルグリム砦の城門前で、大立ち回りを繰り広げたことは覚えている。溢れる怪我人どもを癒して、癒して、癒して。呆気に取られる兵士どもにざまあみろと思いながら、力を使い果たしてぶっ倒れたのはもう丸一日も前のことになるらしい。
「あー、……頭痛っえ……」
体の節々が痛むし、頭痛はするし、長旅の後風呂にも入らず寝こけていたのだから、体中が気持ち悪い。
シーツの上で不快さに顔を歪める少年の耳に、控えめなノックの音が響く。ゴルドーに伴われ、硬い表情の女が入って来た。
「……お食事をお持ちしました」
声音は余所余所しく、あからさまに少年の方を見ようとはしない。歓迎されることはないと思っていたが、露骨な態度に少年は鼻を鳴らした。
使用人かと思ったが、女の身に付けている衣服は上等そうだ。白いブラウスの上から、ふんだんに刺繍の施された頭から被る長いスカートを履いている。北方特有の黒髪は長く、右側で緩く三つ編みにされている。窓から差し込む光に、透けた瞳は黒よりは栗色に近く見えた。
食器を載せたトレーを持って室内に入った女は、無言でベッド脇のサイドテーブルに器を置いていく。
芋がごろっと入ったスープと、硬そうなパン。質素と言えば言葉が良いが、見方を変えればお前にはこれで充分だと言われているようにも見える。お前のような、淫売の聖女には、と。
力を使い果たして気絶する前に若い騎士――マルクと呼ばれていたか――に告げられたように、この砦でも結局少年はこうした扱いを受けるのだ。げんなりする。だが、取り立ててショックを受ける程のことではない。
女が配膳し終わるや否や、少年はひょいと硬い黒パンを手に取り、千切った欠片をスープに浸した。ぎょっとしたような女に見せびらかすように、ひたひたのパンを口に入れる。多少浸けた所で乾ききったパンは美味くも柔らかくもならない。だが、食える。それで充分だ。
「べっつに白パン用意しろとか、具を増やせとか言わねーけどさあ……流石に味薄すぎやしねーか? 塩足んねーよ」
ぞんざいな口調で話し、マナーもへったくれもない手付きで器を掴み直接口を付ける少年に、女は益々驚愕したように栗色の目を見開いた。
全く、どいつもこいつも聖女というものを神聖視しやがって。思いベッドに腰掛けたまま女の顔を見上げた少年は、ふとその顔色に気付き、渋面を一層深く顰めた。
女の顔色は悪かった。少しだけ呼気が荒く、立っているのも億劫そうだ。おまけに衣服はゆったりしていて、緩く手のひらで腹をさすっている。
そんなこと、気付きたくなかったのに。
女は気分が悪そうに胸元に手を当てる。少年は深い溜め息を吐いた。
「あのさあ……あんましあんたには嬉しくない提案だと思うけど」
少年が話しかけると、女は青い顔でこちらを見た。
「少し、手に触れても大丈夫そ?」
びくりと女が身を退いた。それはそうだろう。質問の仕方を誤った自身に、胸中舌打ちをする。誰だってそうだろう、淫売と噂の聖女などに触れられては汚れる――殊に女の立場ならそう思うに決まっている。
「聖女様……こちらの方は、何処か怪我でもされているのでしょうか」
助け船は横合いから寄越された。ベッドの傍らに控えたゴルドーが、無表情のまま問いかける。朴訥な護衛兵の助力に内心感謝しつつ、少年は眉根を下げて女を見上げた。
「悪い、勝手な推測かも知れないけど、……あんた、妊娠してる?」
女の目が見開かれる。ぎゅっと襟元を掴む心許なげな姿に、少年は首の後ろを撫でた。
「あー……辛そうだったから、ちょっとくらいなら悪阻軽く出来るかなって思ったけど……余計なお世話だったな」
誰だって汚れた聖女などに触れられたくないだろう。それが無垢な赤子を宿した女なら、尚更。
柄にもないことをした。後悔してまた硬いパンを齧る少年の前で、女が漸く口を開いた。
「……どうして、」
「ん?」
「どうして、分かったの? まだヴィクトルにもレオニードにも言ってないのに」
レオニードの名を聞き、少年は片眉を跳ね上げた。望まぬ婚姻をしたばかりの、少年の伴侶の名だ。
ヴィクトルの方は知らないが、身形と育ちの良さそうな女性の様子から推察できる。
「そんなの、分かんねーのは朴念仁のあんたの旦那と義弟だけだろ」
少年が肩を竦めると、女は漸く、表情を緩めた。
イリヤと名乗った女は、少年の予想通り、レオニードの兄、ヴィクトルの伴侶だった。
「本当にごめんなさい……私、貴方のこと誤解して、凄く失礼な態度を取ったと思う」
黒い三つ編みが揺れる。イリヤの背中に手を当てた少年は、小さく鼻を鳴らした。
「べっつに、いつものことだから気にしてねーよ」
「でも、食事も……あんな嫌がらせみたいな……」
「あー、あれやっぱ嫌がらせか。別に食えるから、いいけど」
ベッドに横掛けになり、少年に背を向けていたイリヤがくるりと振り返った。頬の血色が随分と良くなっている。軽い貧血と、悪阻か。ベッドの上で胡座を掻いた少年の手を、体調の良くなったイリヤはぎゅっと握った。
「良くない、本当に良くないわ。私、ずっと悪阻も酷くて、でも誰にも相談出来なくて……だから、感謝してるの、すっごく」
真摯な栗色の瞳に見つめられ、少年は言葉に詰まった。罵られ、軽蔑され、疎んじられることには慣れている。だが、感謝されたり、好意を向けられたりするのには、全くの不慣れだった。
「……言わないのかよ、そのヴィクトルとやらに」
妊娠のまだ初期の初期であるからと、イリヤは伴侶に告げていないらしい。そんなものさくっと言えば良いのに、思う少年の前で、イリヤが苦笑した。
「ヴィクトルはね、生まれつき心臓が弱いの。二十歳まで生きられないってお医者様に言われて、今まで生きてきたから……」
大事そうにイリヤは腹を撫でる。少年には全く理解出来ない。明日をも知れない人間を愛する気持ちも、その子を宿す気持ちも、赤子を愛しく思う気持ちすらも。
「ほーん、じゃ尚更言った方がいいじゃん。残り少ない人生、心残りがない方がいいだろ? 子供の成長見たさに寿命も延びるかもしれないぜ?」
完全に無責任で無神経な発言だ。けれどイリヤは怒ることなく、瞳を揺らした。
「っふふ、面白い。皆ね、あの人の話になると、どうしても気を遣って話するから……こんなにはっきり言われたの初めて」
「怒ってくれてもいいけど?」
「いいえ、……いいえ、」
少年はイリヤの背から手を離した。小さな体が震えている。
「ねえ、聖女様……どうか……出来るなら、どうか、あの人の病を治しては頂けませんか?」
少年に向き合う薄い唇が戦慄いた。真っ直ぐに、切実に、見つめる瞳を直視出来ず、少年は俯いた。長い金の前髪が顔を覆う。
聖女の“ギフト”は万能ではない。怪我は癒せても根源的な病までは治すことが出来ない。何が聖女だ、何が奇跡だ。この手が癒すことが出来ることなどほんの一握りでしかない。
「…………悪い」
口から絞り出される言葉が虚しくシーツに落ちる。イリヤの口から小さく吐息が零れた。落胆か、失望か。いいの、分かってる、と薄ら涙を浮かべる母になる人を真っ直ぐ見ることが出来ず、きつく握りしめられた指先を只、見下ろしていた。
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