殺人合法、警察限定

麻桜

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招集

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警察官 一ノ瀬優希は、その日もいつものように報告書と向き合っていた。
警察官になって5年。昇給も昇進も縁がなく、
「何も変わらない毎日」を淡々とこなす、いわゆる“無能警官”だ。

「お前、まだ報告書やってんのかよ。おせーなぁ」

声をかけてきたのは同期の 高山孝介。
仕事の質が高く、上司からの信頼も厚い将来有望株。
一ノ瀬とは真逆のタイプの男だ。

「一ノ瀬は警察になって5年経ってんのに、ほんと何も変わらねぇよな」

高山は呆れ顔で言う。
警察学校の同期でありながら、一ノ瀬がギリギリの成績で卒業したのに対し、
高山はトップクラスの成績だった。
すでに“差”はついていた。

「僕はのほほんと警察やって、ダラダラ安定した給料もらえればいいよ。
 孝介は早く昇進して警視庁でも行ってください」

こんな会話は日常茶飯事だ。

「さて、報告書も終わったし、家帰ってダラダラするかぁ」

一ノ瀬が伸びをしたとき――
突然、ひとりの男が署内に現れた。

「すいません。私、栃木県警の者ですが、今日から3日間こちらに配属されます」

高山と一ノ瀬は、唐突すぎる言葉に思わず固まった。

「いや……どちらさん?」
高山が尋ねると、男は無表情のまま警察手帳を見せた。

確かに栃木県警の手帳だった。

「では、おふたりは帰っていただいて大丈夫です」

さらに意味不明な発言。
さすがに高山も苛立ちを隠せない。

「いや、なんでそうなるんだよ。意味わかんねぇだろ」

そのとき、息を切らせた 山本部長 が駆け込んできた。

「はぁ……はぁ……一ノ瀬、高山……。ちょっと来てくれ……」

「どうしたんですか、部長」

「警視庁の指示で招集がかかった。
 これから国立競技場に向かうぞ」

謎の栃木県警の男。
急すぎる警視庁からの招集。
そして向かう先は国立競技場。

非日常の連続に、二人の感情は逆にフラットになっていった。

「はぁ~……まぁ警視庁が言うなら仕方ないですね、行きましょうか」

一ノ瀬、高山、山本の3人はパトカーに乗り国立競技場へ向かった。

国立競技場への道中

車内で一ノ瀬がぼそっと言う。

「なーんで国立競技場なんですか?家帰ってダラダラしたいんですけど」

山本は困惑しながら答える。

「俺にも分からん。ただ、東京都の警察全員が国立競技場に向かってるらしい」

「全員って……何人いると思ってるんですか」
高山は呆れながらつぶやいた。

「じゃあさっきの栃木県警の人は何なんですか?」
高山がさらに聞くと、

「それもわからん。とにかく“来い”としか言われてない」

山本の様子を見る限り、彼自身も“意味不明の渦中”にいた。


国立競技場

到着すると、入口で別の警察官から指示される。

「フィールドに入れ」

だが、周囲は異様な静けさに包まれていた。
4万5千人が集まっているとは到底思えない静けさ。

そしてフィールドに入った瞬間――
三人は言葉を失った。

そこには、ざっと4万人の警察官が
音ひとつ立てずに整列していた。

一ノ瀬は思わず声を漏らす。

「……どういう状況?」

近くの警察官が振り返り、

「お前らが最後だ。早く並べ」

とだけ告げた。

三人は、一番端の列の最後尾に並ぶ。

そして、国立競技場の巨大スクリーンが、
ゆっくりと光り始めた――。
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