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4-1.粗大ごみは確か月1だったな
しおりを挟む駄目だ、
寝ている間に女をゴミ捨て場に捨ててこうと思っていたのに。
藍はずっとリビングにいるしな!しかもあちこちの角度から山元織羽を見ててきもいしな!床に寝そべって下からのアングルを確認とか最悪だな!
そんなにこの女に入れ込んでるのか?!
藍の機嫌を損ねないよう、上手くしれっと山元織羽を捨てて、「ああ、彼女、ゲームの世界に帰ったみたいだよ。」って言えば完璧だったのに。
テーブルに座って彼女を数分見つめた後、深いため息をつくとか、もう藍が別の人間にしか見えない。とても魔王とは思えないな。
それにしてもまずいことになった。藍はこの女をうちに置く気満々だし。
じゃあ日中はどうするんだ?うちにずっと置いといても買い物とか行くだろうし、結局藍の女と分かれば、人質に取られてチームが壊滅させられるかもしれない。かと言って学校に連れて行っても同じパターンだ。
しかもこんなフニャチンの藍を皆に見せれば、チームの皆は愛想尽かすかもしれない。皆強くて容赦ない威厳ある藍に惚れて集まった仲間なのに、これまで築きあげてきたものが全て水の泡だ!
結局藍はソファから彼女を移動させず、ソファに寝かせたまま、夜を迎えてしまった。
僕は今自室でどうしたもんかと考えてる最中だ。
藍はあれから約5時間半、ソファで眠る彼女をじーっと穴が開くほど見つめた後、ようやく自室へと入って行った。
というか何も手を出さないのが理解不能。抱くなら抱くでさっさと抱いて、いつものように捨てればいいだけのこと。逆に虫唾が走るっ。
さてどうするべきか。今彼女を捨てにいっても絶対藍に気付かれるし、そんなことをしたら僕も藍に殺されかねない。
僕たちのチームには昔、皆の世話を焼いてくれる1人の女が出入りしていた。
まだ僕と藍が1年生の時だ。
当時のトップが、たまたま敵に絡まれていたところを助けた女を連れて来て、そのまま入り浸るようになった。僕たちと同い年の女で、小さくて明るい、素直な女だった。
後でわかったことだが、当時のトップと彼女はできていたらしい。たまたま翼が2人の現場を見て、相当なショックを受けていた。翼が彼女のことを好きだったというのも、その時わかったことだ。
でも結局狙われ続けた彼女は、最終的に精神を病んで壊れて、チームも壊れかけた。
でもチームを元通りに治めたのは他でもない、藍だ。
トップも藍にその座を譲り、引退した。藍なら絶対に女に入れ込むような人間じゃないと判断したから、トップは藍にチームを任せたのに。
それなのに、こんなの、前のトップとまた同じことを繰り返すだけだ。いや、2次元の女ってところがアホさを際立たせている!
その夜、何かいい方法がないかと悩んだ末、僕はあることを思いついた。
そっか、いっそのこと、早いうちにこの女を敵に襲わせればいいのでは?
この女をさっさと駄目にすれば、藍は二度と女にうつつを抜かすことはなくなるだろうし、女も痛い目をみれば、うちに近付くこともなくなるだろう。
敵チームが彼女に惚れ込んで手籠めにでもしてくれれば、きっと藍はキレて敵を潰しに行く。もしかして、敵を潰すにもいい機会なのでは??
まだ彼女が"仲間"という沼に浸かっていない以上、今のうちに敵に差し出せば、僕と藍だけで片をつけられるかもしれない。
いらないものは簡単に捨てるよりも、上手く活用した方がいい。藍と彼女の関係が深くならないうちに襲わせた方が、傷も深くならずに済む。
次の日、朝起きると、すでに山元織羽は起きていて、なぜか朝食の準備をしていた。藍はまだ寝てるらしい。
「···何してるの。」
「あっ!おはようございます遥斗さん!昨日は突然眠ってしまってすみません。」
「ふーん、料理は出来るんだ。」
「簡単なものしかできませんが。」
とか言いつつ、テーブルには食パンを使ったエッグベネディクトが並べられている。
「で、2人分しかないみたいだけど、これは誰と誰のなの?」
「あ、もちろん、藍さんと遥斗さんのです!」
「君のはないの?」
「私は大丈夫です。」
「まあうちの食材なんだから、君のはなくて当然だよね。」
「···そう、ですね。」
僕の毒にも笑顔で返す彼女。
ここでこのテーブルをちゃぶ台のようにひっくり返して朝食をめちゃくちゃにすれば、さすがに泣くだろうか?
とはいえ久々に手作りのものを見ると、やたら美味しそうに見えるのは何でだ。僕はあまり朝食を食べることはないけど、なんとなく食べてみたくなった。
「ええと、遥斗さんは何を飲みますか?」
「コーヒー。」
「ブラックで良かったですか?」
「ん。」
玄関から新聞を取ってきて、ドル相場の値動きを確かめる。今日はまた一気に円が跳ね上がるかもな、なんて思いながら読んでいると、コーヒー豆の香ばしい香りが鼻をついた。
「あの、ここにはお2人だけで住まわれているんですか?」
「まあね。」
「その、ご両親は」
「そこまで介入してこないで?」
「あ、す、すみません。。」
僕が話題をシャトアウトすると、彼女は何も言わず僕の前にコーヒーを置いて、フライパンを洗い始めた。沈黙が続く。
そうこうしていると、僕よりも低血圧の男が起きてきた。
「···お"い、誰の許可でそんなことをしてる?」
彼女の後ろ姿を見た藍が、開口一番、機嫌の悪い声でそう聞いた。
もう昨日の記憶が消去されたのか、寝ぼけまなこのせいか、うちに知らない女がいると判断した様子の藍。
「あ、藍さん、···あの、勝手なことをしてすみません。。」
さすがに藍のドス黒い声にひるんだのか、洗っていたフライパンをガタっとシンクに響かせた彼女。
「藍、忘れたの?昨日彼女を助けたのは藍でしょ?」
「は??俺は何でお前が勝手に織羽と新婚ごっこしてんのかって聞いてんだよ!」
はあ何それ?!こっちが「は??」だわ!この気まずい空気のどこに新婚要素を感じるの?!!
「新聞読む旦那、ご飯作る新妻、俺のポジションどこだよ?!残飯むさぼるポチか?あ"?!」
「······」
無視だ無視。
「あ、それ藍さんのご飯です。よろしければ召し上がって下さい!」
でもテーブルのエッグベネディクトを見た藍は瞬時に機嫌が直ったようで、部屋からスマホを持ってきてエッグベネディクトを写真に収めていた。
応援ありがとうございます!
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花雨様
ひええ!!あ、ありがとうございます(泣)
基本的にギャグが多くて申し訳ありません。頑張ります!!