9 / 41
2-4.
しおりを挟む「騎士団って…確かに私は剣の授業も弓の授業も学年上位だったわよ?足もそこそこ速いし、」
「それに怪力な上に爆破の魔法が使える。騎士団にスカウトするには十分すぎる程の材料が揃っていると思うんだが?」
怪力って、まさか前世で縄を引きちぎったことを言っているの?あれは前世の話であって今はあんなに怪力かどうかなんて知らないでしょ?
その時、品のいい白髪に白髭の執事が応接室に入ってきた。
「レオハルト様、使い魔より伝達が届きました。」
「ああ、ありがとう。」
執事から手紙を受け取るレオ様。その所作一つ一つが綺麗で、前世で不良をやっていたとはとても思えない。
ゾイは王族でありながら、その行動や口調は前世とあまり変わらなかった。変わったのは見た目だけ。
でもリオことレオ様は、前世の記憶がありながらも侯爵子息らしい道をきちんと歩んできたのだろう。
執事が部屋を出ていくと、レオ様が気まずそうに言った。
「···王族が正式にゾイ・エルヴァンとシシル・メレデリックの婚約を破棄することを決定したそうだ。配下から連絡があった。」
「····え?」
あんなゾイの一存で、正式に破棄破棄が決定されたというの?
王族である第3王子のゾイ、そして侯爵令嬢である私が婚約した理由は、父の貿易商の仕事が王族の外交を円滑に進めるため、そして水属性の魔力を持つゾイと火属性の魔力を持つ私から、特異魔力のある子供を産むためだ。
水と火という相反する元素魔法から、特異魔法を持つ子供が誕生する可能性が高いのだ。
特異魔法には色々種類はあるが、回復魔法を使うミレーヌがいる以上、もう私は不要なのかもしれない。
一瞬、目の前のティーカップがぼやけて見えたが、私は気を強く持った。
「…そう。ゾイも言っていたけれど、前世からずっと一緒にいたからさすがに私も飽きてきたのよね。」
「…強すぎだろ、あんた。」
強いわけ、ない。飽きたなんて簡単な言葉で済ませられるわけがない。
だって前世から今日まで一緒にいるのが当たり前で、これからも、もしかしたら後世も一緒になれたかもしれないって馬鹿みたいに思っていたのに…
まだ温かい紅茶を勢いで一気飲みする。そしてレオハルトを見据えた。
「お父様とお母様が何ていうかは分からないけれど、私でよければ騎士団に入団させていただくわ。」
「本当か?!」
「ええ。私の就職先はもうそこしかないだろうしね。」
きっと生まれた頃から決められていた婚約を破棄されただなんて知れ渡れば、メレデリック家の世間体も悪くなる。いや学園を爆破してしまったのだから世間体も糞もないだろうけれど。それなら騎士団に入団すれば家の名誉もある程度は保てるかもしれない。
そういえば弟のアンドリューは大丈夫だろうか?彼は今2年生で、メレデリック家の貴重な跡継ぎだ。
「そうと決まれば、来週から早速騎士団で魔力の訓練をしてもらう。」
「え?訓練…?」
「ああ、あんたの爆破を完璧なものにするための訓練だ。」
レオハルトによれば、騎士団の朝は早いらしい。特に新人は。
5時起床、掃除、畑仕事
7時~朝食、
9時~訓練開始
12時~昼食
16時~洗濯
18時~夕食
20時~走り込み
22時就寝
それを聞いた私は、ソファから床に膝をつき項垂れた。
修道院と変わらないじゃない!!!!
それでも週2日の休みとお金が貰えるだけマシなのかもしれないけれど…。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さくら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる