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3-2.
しおりを挟む「姉さんっ!!!」
「アンドリュー!!」
弟のアンドリューが屋敷の中から駆けて来て、私に抱きついた。
「姉さん心配したんだよ?!!」
「ごめんね、アンドリュー。」
アンドリューは私と同じくらいの背丈で、いつも私を気にかけてくれる可愛い弟だ。もちろん血は繋がっている。
実はこのアンドリュー・メレデリックは攻略対象で、年下好きには欠かせない、可愛い小悪魔キャラだ。ミレーヌの前では可愛く嫉妬する姿を見せる一方で、他の攻略対象には生意気な口を聞いて対抗するのだ。
私はアンドリューのフワフワの黒髪を撫でた。
それからレオハルトは丁寧に、昨日の爆破の事実と私の"騎士団への仮入団"を両親とアンドリューに説明してくれた。
爆破は故意に起こしたものではなく偶然に起こったもの、そしてゾイに一方的に婚約破棄を言い渡され、私だけに非があるのではないということも、きちんと説明してくれた。
「…そういえば、私の曽祖父が、"火"と"雷"2つの魔力を持っていたと聞いたことがあります。爆破ができたという事実は分かりませんが。」
お父様が教えてくれた。
とりあえずしばらくは、私の魔力には危険が伴うため、騎士団で保護してもらうということで話がついた。
私も、もし家族や屋敷の皆に爆破の能力で爆破してしまっては怖いからと、早々に騎士団に保護してもらいたいと頼み込んだ。
いきなり騎士として入団するなんて言ったら、きっと2人は反対するだろう。
それでもアンドリューは反対のようで、何度もレオハルトに喰ってかかっていた。
「姉を保護するなんて言っておきながら、姉の能力を利用する気ではないのですか?!」
と。
その通りなので、どうレオハルトは言い返すのか見物だと思っていると、
「いえ、決して危険な目には合わせません。万が一2つの魔力があると周知されれば、狙われる可能性も高いですから。」
意外な答えで、ある意味感心した。よくそんな口からでまかせがスラスラ出てくるなと。
荷物をまとめ、両親と屋敷の執事や侍女、使用人たちとの涙ぐましい挨拶を済ませた。
「姉さん、僕毎日手紙書くから!」
「ありがとうアンドリュー。元気でね。」
馬車に乗り込み、実家を後にした。
馬車内ではレオハルトが大きく溜め息をつき、酷く安心した顔をしている。
「シシル、あのアンドリューという弟は何だ?なぜあそこまでシスコンなんだ?」
「…え?シスコン??」
アンドリューが?あれってシスコンなの?まあ小さい頃からずっとべったりだったけれど。
そういえばゲーム内のアンドリューは、家族に見下されて育ってきたという設定だった。
風の魔法を操るアンドリューは、姉のシシル同様、そよ風程度しか吹かせることができない。婚約者がいるシシルはいいとしても、跡継ぎであるアンドリューがそれではメレデリック家が恥をかくからだ。
そのため居場所のないアンドリューに、学園で出会ったミレーヌが優しく接するのだ。最初は回復魔法を操るミレーヌに引け目を感じ、冷たくあしらっていたアンドリューも、次第に彼女に心を開いていき、魔力も徐々に上がっていく。
でも私は前世で一人っ子だったから、アンドリューが可愛くて可愛くて溺愛してきた。それを見てか、両親も魔法の訓練をさせながらもアンドリューを愛してきた。
因みに彼の魔力は、15歳の入学を機に開花し、今では突風を操れるまでになった。
魔力と心は繋がっているのだ。
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