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6-2.
しおりを挟む屋台が沢山並んでいるゾーンに入って来た。
「レオ!!買い食いしましょ、買い食い!!」
「…は?昼飯は食べてきたはずだろ。それのアイリーンのクッキーも。」
「それとこれとは別腹よっ!」
香味油で揚げるフィッシュフライの香りが漂ってくる。
すぐにその屋台の前まで行くと、気の良さそうなおじさんがフィッシュフライを、油切のついたタッパに並べていく。
ちょうどいいきつね色で、きっとどんなにお腹がいっぱいでもこれはよだれが出てしまう。
「おじさん!フィッシュフライ2つ下さい!」
「いや、待て待て。そんなでかいフライ2つも食べるのか?!」
「…違うわよ。1つはレオの分よ。」
「…ああ、そういうことか。」
手の平サイズの大きなそれをおじさんから貰うと、湯気が目の前で美味しそうに揺れる。
「私、こうやって食べ歩きするのが夢だったの。」
「"夢だったの"って、前世でも散々りんご飴だのイカ焼きだの食べてただろ。」
「…え?な、何で知ってるの?!」
「…い、いや。たまたまその、昔、あんたが祭りにいるのを見かけたことがあるってだけで。」
口ごもるのをさらに誤魔化すように、大きな口を開けてぱくりと食べるレオ。
さっき"昼飯は食べてきた"って言っていたのが嘘のように美味しそうに食べている。
それを見て、私も同じ様に大きな口を開けてぱくりと食べた。
こんな風に、自分がいいと思ったものを一緒に食べることができるって、本当に幸せなことなんだと思う。
前世では皆の輪から外されて、1人でパンをかじっていることもあった。彼らは一緒にお弁当食べながら会合していることもあったのに、何で私だけって勝手に孤独を感じていたのが懐かしい。
私には今、力になってくれて、一緒にご飯を食べてくれる仲間がいる。
何気なくレオの食べる姿を見ていると、目が合って、「なんだよ?足りないのか?」と意地悪そうに聞いてきた。
でも私はそのレオの食べる姿がなんだか可愛くて、その意地悪に笑顔で返した。
それから宿舎で使う日用品を買い揃えて、人通りの少ない夕方になった頃だった。
「あ~楽しかった~。」
「そうだな。俺も久々に羽目を外したよ。」
「…そっか、レオ、団長だもんね。きっとこんな風にのんびりできる機会なんて早々ないわよね?」
「まあ、そうだな。」
ということは、レオの貴重な休みを私の買い物に付き合わせてしまったと、そういうことだろうか?
きっとレオは気遣って私を誘ってくれたのだろう。申し訳ないことをしちゃった。
「…ごめんね、大事な休みの日を使わせちゃって。」
「…違う。大事な休みだからこそ、あんたを誘った。」
昼と夜の境目のような、混ざった色合いの空から、甲高い鳥のような鳴き声が聞こえてきた。
「え?なに?」
「…いや、なんでも…、」
レオが私から視線を反らした、その時だった。
後ろからバタバタと騒がしい足音が聞こえてきたのは。
レオの足取りが速くなり、荷物を両手で抱えていた私は少し遅れをとった。
すると騒がしかった足音が止まり、気付けば私は周りを囲まれていた。
「シシル・メレデリック、王家の命により、学園を爆破した罪で連行する。」
「へ??」
「一緒に来てもらおう。」
近衛騎士たちが私の腕を掴む。突然のことで、私はすぐに理解できなかった。
「おい!待て!!いきなり何だ?!」
レオが近衛騎士の腕を掴み説明を乞う。
「ここにいるシシル・メレデリックは先日の卒業パーティーにて会場を爆破した罪に問われている。」
「爆破した件は全て不慮の事故で片がついたはずだ!シシルも自分の能力を知らなかったんだ!!」
「しかし会場内の生徒の話によれば、彼女は故意にゾイ・エルヴァン王子に魔法を向けたのだとか。その威力が例え灯のような火であったとしても、彼女が王子を傷付けようとした行為に偽りはないのでは?」
「いやすでに王家からの承認は得ている!騎士団への入団も許可されている!!」
レオは今から使い魔に、「王家の承認文書と許可証を持って来させる!」と食い下がる。
私の知らないところで、レオが私の爆破事件を処理していてくれていたなんて知らなかった!
「その承認文書と許可証は無効となった。今ここに出ている令状が証拠だ。」
近衛騎士の1人が丸めた用紙を広げ、レオに見せる。レオの表情は次第に険しくなり、きっと無効の事実が書かれているのだろう。
それにしても何で彼らは私がここにいるとわかったのか。
訓練開始と同時にレオの屋敷に向かったのだから、私がレオと一緒にいるとは誰も知らないはずだし、王都の入り口にいたポルト先生も私だと気付かなかったし。
私が考えている間にも、レオは必死に騎士たちを納得させようと躍起になっていた。
灰色の影が辺りをくるくると回っていることに気づき、夕空を見上げると、一匹の使い魔のような鳥が頭上を飛んでいる。さっき鳴いていた鳥だ。
レオの屋敷の使い魔かとも思ったけれど、使い魔よりも小さい。
不思議に思って空を見ていると、近衛騎士に再び腕を掴まれ、抱えていた荷物を落としてしまった。
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