捨てられ爆薬令嬢は敵総長の溺愛を受ける

由汰のらん

文字の大きさ
30 / 41

6-2.

しおりを挟む


 屋台が沢山並んでいるゾーンに入って来た。



「レオ!!買い食いしましょ、買い食い!!」

「…は?昼飯は食べてきたはずだろ。それのアイリーンのクッキーも。」

「それとこれとは別腹よっ!」


 香味油で揚げるフィッシュフライの香りが漂ってくる。


 すぐにその屋台の前まで行くと、気の良さそうなおじさんがフィッシュフライを、油切のついたタッパに並べていく。

 ちょうどいいきつね色で、きっとどんなにお腹がいっぱいでもこれはよだれが出てしまう。


「おじさん!フィッシュフライ2つ下さい!」

「いや、待て待て。そんなでかいフライ2つも食べるのか?!」

「…違うわよ。1つはレオの分よ。」

「…ああ、そういうことか。」


 手の平サイズの大きなそれをおじさんから貰うと、湯気が目の前で美味しそうに揺れる。


「私、こうやって食べ歩きするのが夢だったの。」

「"夢だったの"って、前世でも散々りんご飴だのイカ焼きだの食べてただろ。」

「…え?な、何で知ってるの?!」

「…い、いや。たまたまその、昔、あんたが祭りにいるのを見かけたことがあるってだけで。」


 口ごもるのをさらに誤魔化すように、大きな口を開けてぱくりと食べるレオ。

 さっき"昼飯は食べてきた"って言っていたのが嘘のように美味しそうに食べている。

 それを見て、私も同じ様に大きな口を開けてぱくりと食べた。

 こんな風に、自分がいいと思ったものを一緒に食べることができるって、本当に幸せなことなんだと思う。


 前世では皆の輪から外されて、1人でパンをかじっていることもあった。彼らは一緒にお弁当食べながら会合していることもあったのに、何で私だけって勝手に孤独を感じていたのが懐かしい。


 私には今、力になってくれて、一緒にご飯を食べてくれる仲間がいる。


 何気なくレオの食べる姿を見ていると、目が合って、「なんだよ?足りないのか?」と意地悪そうに聞いてきた。

 でも私はそのレオの食べる姿がなんだか可愛くて、その意地悪に笑顔で返した。



 それから宿舎で使う日用品を買い揃えて、人通りの少ない夕方になった頃だった。


「あ~楽しかった~。」

「そうだな。俺も久々に羽目を外したよ。」

「…そっか、レオ、団長だもんね。きっとこんな風にのんびりできる機会なんて早々ないわよね?」

「まあ、そうだな。」


 ということは、レオの貴重な休みを私の買い物に付き合わせてしまったと、そういうことだろうか?

 きっとレオは気遣って私を誘ってくれたのだろう。申し訳ないことをしちゃった。


「…ごめんね、大事な休みの日を使わせちゃって。」

「…違う。大事な休みだからこそ、あんたを誘った。」

 
 昼と夜の境目のような、混ざった色合いの空から、甲高い鳥のような鳴き声が聞こえてきた。


「え?なに?」

「…いや、なんでも…、」


 レオが私から視線を反らした、その時だった。


 後ろからバタバタと騒がしい足音が聞こえてきたのは。



 レオの足取りが速くなり、荷物を両手で抱えていた私は少し遅れをとった。


 すると騒がしかった足音が止まり、気付けば私は周りを囲まれていた。


「シシル・メレデリック、王家の命により、学園を爆破した罪で連行する。」

「へ??」

「一緒に来てもらおう。」


 近衛騎士たちが私の腕を掴む。突然のことで、私はすぐに理解できなかった。


「おい!待て!!いきなり何だ?!」


 レオが近衛騎士の腕を掴み説明を乞う。


「ここにいるシシル・メレデリックは先日の卒業パーティーにて会場を爆破した罪に問われている。」

「爆破した件は全て不慮の事故で片がついたはずだ!シシルも自分の能力を知らなかったんだ!!」

「しかし会場内の生徒の話によれば、彼女は故意にゾイ・エルヴァン王子に魔法を向けたのだとか。その威力が例え灯のような火であったとしても、彼女が王子を傷付けようとした行為に偽りはないのでは?」

「いやすでに王家からの承認は得ている!騎士団への入団も許可されている!!」


 レオは今から使い魔に、「王家の承認文書と許可証を持って来させる!」と食い下がる。

 私の知らないところで、レオが私の爆破事件を処理していてくれていたなんて知らなかった!


「その承認文書と許可証は無効となった。今ここに出ている令状が証拠だ。」


 近衛騎士の1人が丸めた用紙を広げ、レオに見せる。レオの表情は次第に険しくなり、きっと無効の事実が書かれているのだろう。


 それにしても何で彼らは私がここにいるとわかったのか。

 訓練開始と同時にレオの屋敷に向かったのだから、私がレオと一緒にいるとは誰も知らないはずだし、王都の入り口にいたポルト先生も私だと気付かなかったし。

 私が考えている間にも、レオは必死に騎士たちを納得させようと躍起になっていた。


 灰色の影が辺りをくるくると回っていることに気づき、夕空を見上げると、一匹の使い魔のような鳥が頭上を飛んでいる。さっき鳴いていた鳥だ。


 レオの屋敷の使い魔かとも思ったけれど、使い魔よりも小さい。


 不思議に思って空を見ていると、近衛騎士に再び腕を掴まれ、抱えていた荷物を落としてしまった。





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

2度死んだ王子は今度こそ生き残りたい

緑緑緑
ファンタジー
王太子ロイは、かつて二度の革命によって祖国を崩壊させてしまった過去を持つ。命を落とすたび、彼はある時点へと巻き戻される。そして今、三度目の人生が静かに幕を開けようとしていた。 ――自分は民を理解しているつもりだった。 だが実際には、その表面しか見えていなかったのだ。 その痛烈な自覚から、物語は動き始める。 革命を回避するために必要なのは、制度でも権力でもない。「人を知る」ことこそが鍵だと、ロイは気付く。 彼はエコール学園での生活を通じ、身分も立場も異なる様々な人間と深く関わっていく。 そこで出会う一人ひとりの想いと現実が、やがて国の未来を大きく左右していくことになるとは、この時のロイはまだ知らない。

どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」 「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」  私は思わずそう言った。  だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。  ***  私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。  お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。  だから父からも煙たがられているのは自覚があった。  しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。  「必ず仕返ししてやろう」って。  そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

悪役令嬢の私が姫に転生した件  ――それはいいのですが、なぜ魔王城に幽閉から始まるのですか?

しばたろう
ファンタジー
アウレリア王国の未来を憂い、改革を進めようとした結果、 「聖女いじめ」の汚名を着せられ断罪された悪役令嬢アレイシア。 絶望の末に命を落とした彼女は、気がつくと百年後の世界で、 同国の王女エリシアとして生まれ変わっていた。 だが平穏はなく、彼女は魔王に攫われ、魔王城に囚われの身となる。 毎日続く求婚と恐怖――しかし前世の記憶を取り戻したエリシアは、 魔王の語る「経済による世界支配」という理知的な思想に耳を傾ける。 武力ではなく、政治と経済で世界を変えようとする魔王。 その冷静で非情な正論に、かつて同じ理想を抱いた彼女は―― 魔王の妻になるという、思いもよらぬ選択を下す。 これは、断罪された悪役令嬢が、 今度こそ世界の在り方そのものに手を伸ばす物語。

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する

タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。 社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。 孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。 そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。 追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。

ゴミ鑑定だと追放された元研究者、神眼と植物知識で異世界最高の商会を立ち上げます

黒崎隼人
ファンタジー
元植物学の研究者、相川慧(あいかわ けい)が転生して得たのは【素材鑑定】スキル。――しかし、その効果は素材の名前しか分からず「ゴミ鑑定」と蔑まれる日々。所属ギルド「紅蓮の牙」では、ギルドマスターの息子・ダリオに無能と罵られ、ついには濡れ衣を着せられて追放されてしまう。 だが、それは全ての始まりだった! 誰にも理解されなかったゴミスキルは、慧の知識と経験によって【神眼鑑定】へと進化! それは、素材に隠された真の効果や、奇跡の組み合わせ(レシピ)すら見抜く超チートスキルだったのだ! 捨てられていたガラクタ素材から伝説級ポーションを錬金し、瞬く間に大金持ちに! 慕ってくれる仲間と大商会を立ち上げ、追放された男が、今、圧倒的な知識と生産力で成り上がる! 一方、慧を追い出した元ギルドは、偽物の薬草のせいで自滅の道をたどり……? 無能と蔑まれた生産職の、痛快無比なざまぁ&成り上がりファンタジー、ここに開幕!

処理中です...